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2015年07月13日

聴診|循環器ナースのためのフィジカルアセスメント講座

『循環器ナーシング』2014年4月号<まずはここから!循環器ナースのためのフィジカルアセスメント講座>より抜粋。
聴診について解説します。

Point

  • まずⅠ音とⅡ音を聴診し,次いで過剰心音や心雑音の有無を聴取!心周期と発生する心音,心雑音の関係について考えながら聴診するとより理解しやすくなる!
  • 頸動脈の聴診では,血管雑音の有無を確認する! 雑音が聴取されれば,大動脈弁狭窄症や大動脈炎症候群の存在,あるいは動脈硬化などによる血管狭窄が考えられる!
  • 血圧を知ることで,循環動態の把握,循環器系の身体変化の早期発見や経過の観察が可能となる!
  • 循環器疾患の患者では,呼吸音に異常を示すことがあり,呼吸音の観察も重要となる!

西山久美江
(東海大学医学部付属八王子病院  ICU/CCU)

はじめに

聴診は医師のみならず,看護師においても大切な技術であり,しっかりと修得したいものです。

聴診を通して,患者の心臓の動きや機能,現在の循環動態を把握することができ,身体の重要な情報を得ることができます。

聴診の際には,患者の心–血管系の症状や他の検査結果と照らし合わせると,その所見が正常なのか異常を示しているのか,よりわかりやすく効果的です。また音の発生メカニズムを理解することで,聴診時に聴診器を通して聴取される音の理解をより深めていくことができると思います。

本コラムでは,循環器系の聴診からわかることについて概説します。

〈目次〉

心音

心臓は拍動ごとに音を発生しており,心音の発生には弁の開放,心臓壁・血管壁の伸展が関与しています。心音を聴取することで,心臓の動きや弁の状態,心筋の状態などを把握することができます。

聴診の際は,心音の聴診部位を正確に理解しておくことが大切となります(図1図2)。

図1心音の聴診部位

心音の聴診部位

正常心音

正常心音では,I音とⅡ音が聴取されます。比較的高調な音で,膜型聴診器で聴取します(図1)。

図2正常な心音(文献1より引用)

正常な心音

Ⅰ音

僧帽弁および三尖弁の閉鎖音です。心尖部で大きく聴取されます。

Ⅱ音

大動脈弁および肺動脈弁の閉鎖音で,大動脈弁の閉鎖音はⅡA,肺動脈弁の閉鎖音はⅡPで示されます。心基部で大きく聴取されます。

 

過剰心音

正常では聴こえないⅢ音やⅣ音は過剰心音です。心室壁の伸展性の障害により,流入する血液量が増加して,血液が心室壁にぶつかって発生します。
心尖部で最もよく聴取され,より低音のためベル型聴診器で聴取されやすい特徴があります。

Ⅲ音

心室の拡張期に心房から心室へ血液が流入する際に発生する音です。

30歳以下の人や妊婦では正常でも聴取しますが,壮年以上で呼気あるいは立位で消失しないものは異常です。

僧帽弁逆流,動脈管開存,心室中隔欠損,左心不全,三尖弁逆流,肺動脈弁逆流,心房中隔欠損などで認めます。

Ⅳ音

右室あるいは左室負荷,または心室壁の伸展性が低下した状態で心房の収縮に一致して生じ,その強さは負荷の程度とよく比例します。

乳幼児では正常でも聴取しますが,成人で聴取する場合は異常です。

高血圧,左心不全,大動脈狭窄,肥大型心筋症,虚血性心疾患,肺高血圧,肺動脈狭窄などで認めます。

心雑音

心雑音は,正常では聴取されない心音と心音の間に聞こえる音です。弁の狭窄や閉鎖不全,シャントや流出路狭窄が原因となって血流に異常を生じた際に発生します。

心周期により収縮期雑音,拡張期雑音,連続性雑音と往復性雑音に分類されます。

雑音の聴こえるタイミング(収縮期なのか,拡張期なのか? 収縮期ならそのタイミングは収縮早期・中期・後期のどれか?拡張期ならそのタイミングは早期・中期・後期のどれか?)とどこで一番際立って聴取されるかによって,どの弁に障害があるかを推定できます(表1)。

表1心雑音の種類(文献1より引用改変)

心雑音の種類


心雑音の強度の分類には,Levine分類が簡便でよく用いられています(表2)。

表2Levine分類(文献2より引用改変)

Levine分類

血管音(頸動脈)

頸動脈の聴診では,血管雑音の有無を確認します。

正常では心音と同じI音,Ⅱ音のみが規則正しく聴取できます。

大動脈弁狭窄では,収縮期雑音が左右の頸動脈へ放散し,大動脈炎症候群では,大動脈弓部より分岐する種々の血管に狭窄を生じるときに血管雑音を聴取することができます。また動脈硬化などで頸動脈が血管狭窄を起こしている場合には,頸動脈波に混じって低調の血管雑音が聴取されます。

聴診の際は,最も狭窄の起こりやすい内頸動脈と外頸動脈の分岐部である頸動脈洞周辺(下顎角直下2cmの部位)を聴診し,さらにその下方も聴診します(図3MEMO1)。

図3頸動脈の聴診

頸動脈の聴診

MEMO1 聴診時のコツ

呼吸音と重なって血管音がわかりにくい場合は,患者にしばらくの間呼吸を止めてもらうことで聴取しやすくなります。聴診器のベル面,膜面のどちらを用いても聴取可能です。

血圧

血圧を知ることで,循環動態の把握,循環器系の身体変化の早期発見や経過の観察が可能となります。

血圧は心臓から拍出される血液による血管への圧力の大きさを反映しており,心拍出量と末梢血管抵抗との積(血圧=心拍出量〔一回拍出量×心拍数〕×末梢血管抵抗)で表されます。

そして,血行動態要因や自律神経系,ホルモンの活性,腎臓による体液量調節などのさまざまな因子により規定されています。測定する時間帯や環境の変化,疼痛や感情の変化などにも影響を受けることや,一拍ごとに異なることを考慮して,治療の方向性を決定する際には推移などの結果を把握する必要があります(MEMO2)。

また四肢の血圧に差がある場合,動脈瘤解離の可能性も考えておくことが必要です。

MEMO2 血圧の左右差と測定部位

血圧の左右差は,動脈硬化や閉塞性の動脈疾患によって血管内に狭窄が生じ,その部分を流れる血液量が減少して本来の血圧より低くなることで生じます。すなわち,低い値を示す血管に問題があり,高い値を示す血圧が本来の動脈の血圧となります。

また,もともと右鎖骨下動脈に比べ左鎖骨下動脈は多少湾曲して走行しているので,左室が送り出す血液が減少しやすい傾向にあります。そのため血圧測定は原則として右腕で行います。

循環器に関連した副雑音など

循環と呼吸は密接に関連しているので,呼吸音を聴診することは循環器系の重要な所見を把握することにもつながります(表3)。

表3副雑音の種類

副雑音の種類


循環器系に問題がある場合,例えば左心不全に伴う肺うっ血や肺水腫の出現時は,呼吸音に異常(副雑音)を認めます。

副雑音を聴取した場合は,吸気か,呼気か,あるいは両気時に聴取できるのかをとくに注意して聴診します(MEMO3)。

MEMO3 聴診時の体位

聴診時の患者の体位は仰臥位あるいは座位で,患者にとってより楽な姿勢で行います。とくに心不全症状の強い患者では,仰臥位により呼吸困難が増強するので,上半身を拳上した状態で聴診することを心がけます。

おわりに

フィジカルアセスメントは看護師にも必須の能力とされ,正常か異常かの判断や状態変化を早期に発見すること,さらに得られた結果から何が予測できるかアセスメントすることが大切になってきます。
聴診は,ベッドサイドにおける循環器系患者のフィジカルアセスメントに最も大切な技術とされ,また簡便でもあり,積極的に行っていきたい技術です。その一方で,心音などは先輩看護師であっても聴取する機会が少なく,自信のない人も多いのではないでしょうか。

まずは聴診を習慣づけることから始めて,検査結果や他の身体所見を活用しながら聴く力を磨いていきたいものです。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)倉田千弘:診察/心臓の聴診.岡庭 豊:病気がみえる vol.2 循環器 第3版.メディックメディア,p19/pp24-25,2012.
  • (2)山内豊明:フィジカルアセスメントガイドブック―目と手と耳でここまでわかる.医学書院,pp84-95/pp114-127,2013.
  • (3)伊賀六一ほか:心音のアセスメント.HBJ出版局,pp16-18,1993.
  • (4)日野原重明:フィジカルアセスメント ナースに必要な診断の知識と技術 第4版.医学書院,pp30-33/pp61-69/pp89-105,2011.
  • (5)藤崎 郁ほか:フィジカルアセスメント完全ガイド 第2版.学研,pp100-101/pp104-106,2012.
  • (6)安倍紀一郎ほか:関連図で理解する 循環機能学と循環器疾患のしくみ.日総研出版,p204-207,2005.

[Profile]
西山久美江(にしやま くみえ)
東海大学医学部付属八王子病院  ICU/CCU
杏林大学医学部付属病院ICU勤務,北里大学大学院看護学研究科修士課程修了を経て,2009年4月より現職。急性・重症患者看護専門看護師,呼吸療法認定士。

*略歴は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング2014年4月号

循環器ナーシング2014年4月号

P.56~「聴診」

著作権について

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