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2015年09月04日

カテーテル検査・治療のギモン10

『循環器ナーシング』2014年7月号<ギモン解決!!カテーテル検査・治療Q&A>より抜粋。
カテーテル前後の準備や処置に関する10のギモンに答えます。

Point

  • カテーテル前後の処置(食事・安静度・止血など)は施設によって異なる場合がある! 他施設の情報を集めて,医療スタッフで自施設のマニュアルを作成することが必要!
  • わからないことはたくさんある! 聞きやすい雰囲気づくりが重要!
  • 疑問を持つことは知識の向上,業務改善への糸口となる!

島袋朋子
(湘南鎌倉総合病院 副看護部長,心臓センター管理者)

〈目次〉

はじめに

カテーテル前の食事や検査後の安静時間などといった処置については,必ずこうしなければいけないという正解はなく,施設によって異なることが多いと思います。

しかし,患者が合併症を起こさず,安楽に検査・治療を終えるための工夫の努力には,施設間の違いはありません。なかなか他施設の状況を知る機会は少ないと思いますが,本コラムを参考にして,おさえなければいけないポイントをご確認いただきたいと思います。

 

Q1:カテーテルのときの食事はどうしていますか?

動脈形成術や不整脈の検査・治療のときは,直前の食事は中止しています。

冠動脈造影(coronary angiography;CAG)の患者でも造影剤のアレルギーがある患者には,たとえ予防的な処置を行っていても食事は延食しています。

また,鎮静剤を使用する予定の患者も延食にしています。

カテーテル患者は穿刺部の圧迫のため片手しか使用できない場合があるので,カテ食(図1)を用意しています。

図1カテ食

カテ食

Q2:尿道カテーテルは挿入していますか?

必ず尿道カテーテルを挿入したほうがよい治療は肺静脈隔離術(PVisolation)です。この手技は患者を鎮静させて行い,イリゲーションの場合,カテーテル先端を冷却しながら通電するため水分不可が多くなります。水分出納をみるうえで尿道カテーテルの挿入は必須となります。
他には慢性完全閉塞病変(chronic total occlusion;CTO)などの治療で両鼠径部を穿刺する場合は,治療時間を考えて尿道カテーテルを挿入することがほとんどです。
また穿刺部位が鼠径の場合,女性はカテーテル中・後の排尿を考えると挿入する場合が多く,男性の場合は尿器を挿入しなくてもいいようにコンドームタイプの排尿器具をつけます(図2)。しかしこの場合,臥位で排尿できなければ意味がないので,患者と相談して決めるのが望ましいと思います。

図2コンドームタイプの排尿器具

コンドームタイプの排尿器具

Q3:止血はどのように行っていますか?

橈骨動脈穿刺,上腕動脈穿刺の場合はいろいろな止血デバイスがでていますが,当院ではとめ太くん,TRバンドTMを使用しています。圧迫解除は血圧を測定しながら適宜減圧していきます。

鼠径穿刺の場合はアンジオシールを使用する場合と,用手圧迫で止血を確認後,枕子・絆創膏で固定する場合があります(図3)。

図3両鼠径穿刺の場合の圧迫固定

両鼠径穿刺の場合の圧迫固定

止血デバイスを緩めていくと,たるみが出てきて曲げやすくなります。そのときに出血しやすいので,患者にも十分注意してもらう必要があります。また,圧迫止血することによる末梢の血行障害を起こさないように,末梢の動脈触知やチアノーゼの状態などの観察が必要です。

Q4:検査・治療後の安静はどうしていますか?

上肢からの穿刺の診断カテーテルの検査では,安静度の制限はありません。

経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention;PCI)の場合は,当院では部屋の横にトイレがありますので,トイレ以外はベッド上で3時間休んでいただきます。その後,安静度の制限は解除されます。

鼠径部穿刺の場合,基本的にシースのサイズが5Fr.なら5時間位ですが,止血デバイスによっても異なります。また歩行開始となっても圧迫の枕子や絆創膏は翌朝除去することもあります。

また鼠径の静脈穿刺の場合は,約3時間の安静で歩行開始になります。

Q5:カテーテル検査室でよく使われる薬剤は?

CAGでもPCIでもニトロールヘパリンは必ず使用します。

PCIのときのスローフロー(slow flow)やノーリフロー(no reflow)時にはニコランジル,ニトプロを使用します。

また徐脈や急変時には,アトロピンシリンジやエピネフリンシリンジがあるとすぐに使用できるので,準備していると便利です。

造影剤アレルギーが起きたときにはソル・コーテフ,ポララミン,ザンタックを投与します。

そして血圧低下が起きた場合にはノルアドレナリンを投与します。その他には,ドパミン(DOA)やドブタミン(DOB),抗不整脈薬,ヘパリンの拮抗薬としてプロタミンなどがあります。

冠血流予備量比(fractional flow reserve;FFR)などではアデホスを使用します。

このようにいろいろな場面を想定して薬剤を管理する必要があります。

内服薬としては,緊急時のローディングで飲ませるバイアスピリン,プラビックスも必要です(図4)。

図4カテ室での薬剤保管

カテ室での薬剤保管

Q6:カテーテルの説明はいつ,どのように行いますか?

これは施設の入院日数で違いがあると思いますが,外来で医師から説明があり入院指示が出ます。当院ではCAG,PCIを行う当日の入院が多いので,外来で医師が説明を行った後に,外来看護師がパスを用いて説明します。

外来受診時に家族が不在で説明ができていない場合は,入院当日に病棟で家族に説明しています。

カテーテルの説明は,患者がイメージしやすいように時間の流れに沿って処置の説明をしたほうがわかりやすいと思います。写真やビデオを使って説明する施設もあります。

Q7:穿刺部はどうやって決めているのですか?

当院では,できるだけ橈骨動脈からPCIを行うようにしているため,CAGは上腕動脈穿刺で行います。その際,必ず脈が触知できるかを確認します。また医師は過去のカテーテル所見を確認し,蛇行などによる穿刺困難でアプローチ部位を変更していないか確認します。

CABG後の場合はグラフト造影をするので,通常と違うアプローチ部位になることもあります。

また透析患者の場合はシャントと反対側にします。当院ではシャント増設を繰り返し行う患者も多いので,鼠径部から行うことが多くあります。

CTOで対側造影を行う場合は,両鼠径穿刺や両橈骨動脈穿刺を行うことがあります。

コメディカルスタッフは必ずアプローチ部位の確認が必要です。

Q8:カテーテル時の内服薬は?

造影剤を使用するので,糖尿病の既往のある患者でビグアナイド系糖尿病治療薬を内服している場合は,乳酸アシドーシスを起こす危険性があります。そのため,検査当日前後48時間は休薬します。

初めてのカテーテル検査をする場合は,冠攣縮性狭心症の診断の際にアセチルコリンやエルゴノビンを投与し,冠攣縮薬物試験を行います。そのため,冠攣縮性狭心症の治療薬であるカルシウム拮抗薬,硝酸薬,ニコランジルなどは前日から中止します。

またPCIの場合は,抗血小板薬を内服しているか確認します。内服していない場合はPCIを延期するか,ローディングで内服する必要があります。

造影剤アレルギーの既往がある場合は前日の眠前,当日の朝にプレドニゾロンを内服します。

CAG,PCI当日に入院する場合は,外来での説明が重要になります。

Q9:カテーテル検査の準備は?

カテ台は手台,心電図モニターの電極,SaO2モニター,シート,寒さ予防のためのバスタオルなどの準備をします。

カテセットは,当院では最低限の内容のカテキットなのでシリンジや針,造影剤注入用のライン,カバーなど必要なものを準備します。

緊急時に備えてどの職種も準備ができるようにしておきます(図5)。

図5カテーテル検査の準備

カテーテル検査の準備

Q10:カテーテル室でよく使われる言葉の意味を教えてください

「ワゴった!」

迷走神経反射(ワゴトニー:疼痛や緊張,不安がきっかけで副交感神経優位となること)のことです。徐脈,低血圧に伴うあくび,冷感,吐き気などの症状がみられます。

「引き抜く」

左室造影を行った後に,左室から大動脈へカテーテルを引き抜き圧較差を測定することを指します。大動脈弁狭窄症がある場合に行われます。

スローフロー

PCI施行時に,もとの病変部よりも末梢への血流が突然悪化することを指します。このようなときはニコランジルやニトプロを使用することが多いです。それでも血流が改善しない場合はIABPを挿入することもあります。

アンカー

狭窄部にバルーンカテーテルを通過させることができない症例に対し,狭窄部より冠動脈入口部に近い側枝にバルーンカテーテルを配し,側枝でバルーンを拡張させ強く引っ張ることでガイディングカテーテルのバックアップを強固にし,狭窄部に別のバルーンカテーテルを通過させるテクニックのことです。

レトロ

CTOで側副血行路から逆方向にガイドワイヤーを通して留置するテクニックのことです。「アンテ」は詰まっている血管のほうからのアプローチを指します。

おわりに

循環器科で行われるカテーテル検査・治療は,頸動脈から下肢まで多種にわたります。

食事や内服薬,安静度など治療内容は多岐にわたり,シースサイズや止血デバイスもさまざまあり,看護師を迷わせることがたくさんあります。

他施設の情報を知り,患者により安全で安楽なケアが提供できるよう,本コラムを参考にしていただきたいと思います。

 

 


[文献]

  • (1)濱嵜裕司(編):今さら聞けない心臓カテーテル.メジカルビュー,2013.
  • (2)島袋朋子(編):カテーテル検査・治療の看護ケア.3(6):12-85,Heart,2013.

[Profile]
島袋朋子(しまぶくろ ともこ)
湘南鎌倉総合病院 副看護部長,心臓センター管理者
1980年 昭和大学医学部付属看護専門学校卒業,1997年より現職。INE認定看護師

 


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2014年7月号

循環器ナーシング2014年7月号表紙

P.71~「もっと教えてください! カテーテル検査・治療のギモン10」

著作権について

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