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2015年08月27日

カテーテル後の観察項目とその対応は?

『循環器ナーシング』2014年7月号<ギモン解決!!カテーテル検査・治療Q&A>より抜粋。
カテーテル後の看護ケアのポイントについて解説します。

Point

  • 穿刺部からの出血・血腫などのトラブルを予防,もしくは最小限に抑えるには,安静の保持と患者への理解が必要である!
  • カテーテル後の胸痛はステント内の急性閉塞のサインであるため,胸部症状やST変化には注意する!
  • カテーテル中に使用する造影剤は腎機能悪化の誘因となるため,十分な補液を必要とする!
  • 迷走神経反射の要因は過度な緊張と痛み,生理的ストレスであり,要因を取り除くことで予防可能である!

小林由実

(総合新川橋病院 循環器病棟 副主任)

はじめに

カテーテル後は軽いものから命にかかわる重篤な合併症まで,さまざまなイベントが予測され,それらに対する早期発見や予防・対応は看護師の役割の1つです。

早期発見や予防・対応を行うには,原因をしっかりと理解していることが大切です。

カテーテル後の穿刺部からの再出血を例に考えてみましょう。

心血管系疾患を抱えた患者の多くは,冠危険因子である高血圧糖尿病,高脂血症,喫煙などが背景にあります。冠危険因子は動脈硬化を進行させ,狭心症急性心筋梗塞などの虚血性心疾患へ移行していきます。

しかし,動脈硬化は冠動脈だけではなく,全身の血管にも広がっています。動脈硬化が進行している患者の場合,血管は硬く,伸縮性がないため,カテーテル後の止血に時間がかかる場合が多々あります。出血の要因は動脈硬化だけではありませんが,出血の要因を念頭に置いてカテーテル後の観察や看護ケアを行うことで,異常の早期発見につながっていくといえます。

また,要因を事前に排除できれば,異常を防ぐことも可能です。


本コラムでは,カテーテル後に起こりうるさまざまなイベントの要因を明らかにし,早期発見のポイントについて述べていきます。

〈目次〉

 

 

カテーテル検査・治療の観察と対応

カテーテル後に起こりうるイベントと症状,観察項目について表1にまとめます。

表1カテーテル後に起こりうるイベント

カテーテル後に起こりうるイベント

穿刺部のトラブル

カテーテル検査・治療後は,穿刺部からの出血や血腫,穿刺部の痛みの有無など,異常がないか観察を行います。

出血・血腫の要因

カテーテルの穿刺部位は上腕・橈骨・大腿動脈です。

上肢からのアプローチの場合,歩行制限はありませんが,大腿動脈の場合は十分な止血の確認がとれるまで,数時間は床上安静になります。とくに大腿動脈の場合,下肢の安静が保持できないと出血の原因になり,血腫や後腹膜血腫の危険性を高めます。

後腹膜血腫などの体内出血は圧迫止血が困難であり,緊急性も高く,血圧低下や顔面蒼白などのショック症状が顕著に現れます。その場合は,輸血の準備や外科的な止血を考慮しなければなりません(MEMO1)。

多量な出血や,広範囲にわたる血腫などは患者の不安を助長させるだけでなく,床上安静の時間が延長され,さらに苦痛を与える結果になります。そのため,看護師は安静の必要性を患者や家族に十分説明をし,協力を得ておくことが重要です。また,安静保持によって制限される生活を支援していくことが大切です。

 

圧迫固定解除時の注意点

圧迫固定解除時は再出血の可能性があることを考え,ゆっくりと圧迫解除を行います。圧迫解除前には血圧を測定し,血圧が高い場合は再出血の危険性が高くなるので十分注意が必要です。

再出血の際は再度圧迫止血が必要となるため,固定方法についてもしっかり習得しておくとよいでしょう(図1)。

図1大腿動脈の圧迫固定方法

大腿動脈の圧迫固定方法

また,止血はされていても皮下出血や血腫があれば,しっかりとマーキングをし,圧迫解除後も定期的に広がりはないか確認をしていきましょう。

カテーテル後の痛み

カテーテル後は十分な圧迫による止血が必要ですが,それによって,痛みという苦痛が伴う場合があります。患者からも「痛いので弱めてください」という訴えが聞かれる場合があります。

その場合は,言われたとおりにすぐ減圧するのではなく,本当に減圧してよいのか評価する必要があります。

MEMO1 後腹膜血腫の観察ポイント

後腹膜血腫は体表面に現れづらく,見ただけではわかりません。圧迫止血部位だけの観察ではなく,腹部の観察も行います。腹部の張り感を触診し,カテーテル前と比べて変化はないか,腹部の痛みはないかなどを確認するようにしましょう。

カテーテル終了直後は,カテーテル中に使用しているヘパリンの効果が持続していることが考えられ,出血しやすくなっています。そのため,カテーテル直後は末梢の過度なうっ血や冷感がなければ減圧はせず,鎮痛薬を使用するなど別の方法を考慮します。うっ血が強い場合はゆっくりと減圧し,出血の有無を確認します。万が一,出血してきたら減圧した分を足し,鎮痛薬を使用して痛みの軽減を図ります。

看護師は患者に,「ここまではできて,ここまではできない」という具体的な説明を行い,その理由もしっかりと話しておくことが大切です。そうすることで,患者の痛みに対する不安や苛立ちは少しでも解消されます。

患者によって痛みの感じ方は違ってきますが,患者のなかには痛みを我慢してしまう人もいます。看護師側は患者の表情を見つつ,痛みはないか,我慢していないか確認するようにしましょう(MEMO2)。

MEMO2 上肢の腫脹の観察

動脈硬化が強く血管蛇行があると,カテーテルによる血管損傷のリスクも高まります。上肢のアプローチの場合,前腕・上腕の腫脹や痛みなどないか確認し,腫脹がある場合は,弾性包帯で圧迫します。腫脹・圧迫により痺れが強いときは,枕で挙上するなど楽な体位を工夫しましょう。

ステント血栓症

ステント留置後,体内はステントを異物と判断し血管の修復作業が始まります。カテーテル治療後,胸痛発作に加え,冷や汗や吐き気などの症状がある場合は,ステント内の急性閉塞が疑われるため,すぐに医師に報告する必要があります。

胸痛発作と心電図ST変化

医師が到着するまでに,看護師は次の流れを予測し冷静に対応することが大切です。

(1)バイタルサインの測定と12誘導心電図をとり,どの誘導でST変化があるか,前回の心電図との比較も行います(MEMO3)。

(2)ST変化がある場合は,硝酸薬ニトログリセリン(商品名:ニトロペン)を舌下投与し,3~5分後に再度12誘導心電図をとります。

(3)それでもST変化の回復や症状の改善がみられない場合は,すぐに血管造影を行うため,カテーテル室への連絡と搬送準備を行います(図2)。

図2胸痛発作時の対応

胸痛発作時の対応

 

患者・家族への精神的ケア

「胸痛」と聞くと看護師側も慌ただしくなり,患者・家族に不安を与えてしまいます。焦らず迅速な対応をするためにも,看護師は先のことを予測し,医師から指示が出る前に準備をしておくことが重要です。

MEMO3 治療した部位を把握しST変化を見比べる

例えば,左前下行枝への治療を行った場合は,心筋の支配領域は前壁のため,胸部誘導のST変化がないかをみます。また,胸部症状もカテーテル中の症状と類似していることが予想されます。

患者には事前に,カテーテル中に感じた胸部症状と同じ症状があったらすぐに知らせるよう説明をしておくとよいでしょう。

治療後は患者や家族にとって,治療が終わってホッとした時間でもあります。そのときの胸痛の再発は,不安を増強させるに違いありません。処置だけに集中するのではなく,「今,痛みをとりますね」「心配いりませんよ」など患者や家族へのかけを忘れず,精神的ケアも同時に行っていきましょう。

造影剤アレルギー・造影剤腎症

造影剤アレルギー

造影剤アレルギーは造影剤使用後すぐに症状が出現する場合と,しばらくたってから出現する場合があります。遅延性のものでは,皮膚発疹や紅潮などがあり,カテーテル後も出現の有無を観察する必要があります。

とくに,アレルギー体質の患者や以前に造影剤によるアレルギーがあった患者,また,気管支喘息疾患を抱えている患者などは発生頻度が高いため,患者の体質やアレルギー既往を把握しておくことも大切です。

造影剤腎症

造影剤は腎毒性があり,腎機能悪化の誘因になります。

造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン(Cr)値が前値より0.5mg/dL以上,または25%以上増加した場合を「造影剤腎症」といいます。

事前に検査前のCr値を確認し,腎機能が悪い場合は腎血流量を一定に保つために前日から点滴を行います。

カテーテル中の造影剤使用量が多い場合(造影剤使用量は体重〔kg〕×50mL,上限使用量:300mL)は尿量・回数の低下やむくみ,体重などの変化がないか観察します(MEMO4)。

十分な補液管理

カテーテル検査・治療時は必ず造影剤を使用します。造影剤によるリスクに対して,看護師が行えることは十分な補液管理です。脱水は造影剤による合併を助長させるため,十分な補液はとても重要となります。

患者にも水分補給の重要性を説明し,患者とともに合併症の予防につなげていきましょう(MEMO5)。

MEMO4 セルフモニタリング

糖尿病既往のある患者は,既往歴のない患者に比べて,実際の値より腎機能は悪いとされています。入院期間が短い場合は,退院後に心不全徴候を呈する場合もありますので,入院中だけではなく,退院後も尿の回数や体重の変化に注意するよう指導を行いましょう。

MEMO5 補液管理の注意点

点滴を実施するとき,心機能の指標である左室駆出率(EF)も把握して行いましょう。心機能が悪い場合,点滴の負荷で心不全に落ちる可能性があります。点滴の速度管理も非常に大切です。

迷走神経反射

迷走神経反射とは,強い緊張や痛みなどが持続することで,迷走神経を介して脳幹血管運動中枢を刺激し,血管拡張による血圧低下や,心拍の低下をきたす反応です。重篤な場合は心肺停止になることがあり,注意が必要です。

どんなときが要注意か

カテーテル検査・治療に対し,緊張しない患者は,まずいないでしょう。迷走神経反射は強い緊張や痛みが持続し,それらの緊張が和らいだ瞬間に訪れます。カテーテルが終了し,カテ室から病室に戻るまでに,生あくびや吐き気などといった症状が出現する場合があるので要注意です。

また,排泄を我慢するという生理的ストレスも原因となるので,トイレを我慢していないか確認しましょう。

予防と対処方法

予防の1つは要因を取り除くことにあります。患者の緊張や不安が最小限になるように,看護師は配慮しなければなりません。検査や治療のオリエンテーションはもちろんですが,何気ない世間話も患者をリラックスさせるために必要です。

また補液も予防の1つです。十分な補液によって血管内脱水を改善しておくことで,急激な血管拡張による血圧低下を抑えることができます。

迷走神経反射は,急激な血圧低下や心拍の低下が起こるため,患者は突然,生あくびをしたり,ボーっとしたりします。看護師はちょっとしたサインを見逃さないことが大切です。

出現時の対処法は医師の指示のもと,硫酸アトロピン0.5mgの静脈内投与を行うことが第一選択です。

しかし,看護師は第一発見者である頻度が高いため,このような症状がみられたら,医師からの指示を待つだけではなく,点滴がつながっていれば,まずは速度を速め補液による負荷を行うなど,対処方法を日頃からしっかりと学習しておくことが重要です。

末梢循環不全・神経障害

カテーテル検査・治療を受ける患者の多くは動脈硬化が強いため,血管損傷のリスクが高まります。血管損傷で発生した血栓が末梢に飛ぶと,動脈は閉塞する場合があります。

そのため,カテーテル後の観察として,穿刺部より末梢側の動脈触知(橈骨動脈・足背動脈)を確認することが重要です。また動脈触診に加え,チアノーゼや冷感の確認も忘れずに行いましょう。
また,末梢の痺れや感覚鈍麻など神経症状も確認します。正中神経は正中動脈と並走しているので,上腕穿刺の場合,カテーテル後神経症状がないか観察していきましょう。

おわりに

インターベンション治療の進歩とともに,カテーテル検査・治療は日帰りもしくは1泊など,短期間で行うことが可能となってきています。カテーテル検査・治療の特徴として,低侵襲で行える利点がありますが,必ずしも合併症の頻度や程度が低いというわけではありません。

私たち看護師は限られた時間で,最善の医療を提供していかなければならない現状にあります。カテーテル後の経過をただ追うだけではなく,検査・治療中の内容や患者の特徴・背景を把握し,どのようなリスクが潜んでいるのかを考えながら観察することが大切です。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)中川義久(監修):3STEPでわかる!動ける!伸びる!心臓カテーテル看護の新人成長おたすけブック.HEART nursing(2010年春季増刊).メディカ出版,pp137-141,2012.
  • (2)日本インターベンションラジオロジー学会・日本心血管インターベンション治療学会合同認定インターベンションエキスパートナース講習会テキスト.pp46-48,2012.

[Profile]
小林由実(こばやし ゆみ)
総合新川橋病院 循環器病棟 副主任
2001年 看護師免許取得,湘南鎌倉総合病院入職。2003年 総合新川橋病院入職。2009年 同施設にて心臓血管センター設立,2010年 循環器病棟へ配属となり病棟兼カテ室の指導・教育を担当,2013年 インターベンションエキスパートナース取得,現在は副主任として現場指導を行っている。

 


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング2014年7月号

P.57~「検査・治療後はどんなことに気をつければいいのですか?」

著作権について

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