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2015年08月18日

最も危険な頻脈性不整脈「心室細動」

『循環器ナーシング』2014年5月号<この波形を見逃すな!循環器病棟の危険な不整脈>より抜粋。
心室細動心電図について解説するとともに、心室細動が生じやすい疾患や状況について紹介します。

 

Point

  • 心室細動の心電図は,ゆっくりみている暇はなく,瞬間的な判断が要求される! だからこそ,日頃から見慣れておいて,対処方法を確認しておく必要がある!
  • 心室細動時の対処方法は,決まっている! 正しく心室細動を判断し,BLSとACLSを実践しよう!
  • 心室細動の心電図を読むことよりも,心室細動の発症前の心電図を読み解くことが重要! 正しい知識を会得して,心室細動を予防しよう!

村田広茂
(日本医科大学 循環器内科,日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科 助教)

はじめに

初学者にとって,心室細動(ventricular fibrillation;VF)は最も怖い疾患の1つです。それは,心室細動が死に直結する病態であることのみならず,心室細動の原因や対処方法に関する十分な知識と準備ができていないことに起因すると考えられます。


心室細動の対処方法において大切なことは,3つです。

まず第一に,心室細動を発生させないことが大切です。当然のことのようですが,予防することは,心室細動をよく理解していないとできません。

第二に,心室細動を見逃さないことです。モニター心電図を読むこと以上に,心室細動が生じやすい疾患や状況を理解しておく必要があります。

そして最後に,心室細動の治療つまり心肺蘇生術の技術を養うことです。これは実践あるのみですが,BLSやACLSを経験されたことがある方はご存じの通り,対処方法はある程度決まっています。この能力は,医師であれ,看護師であれ,医療従事者であればその職種に関係なく,日頃の鍛錬によってのみ磨かれるものです。

以上の対処方法を知ることで,心室細動のモニター心電図が怖くなくなるでしょう。

〈目次〉

ケーススタディ

症例1:心筋梗塞を発症し入院中の68歳の男性

図1症例1の心電図

この症例は,3日前に心筋梗塞を発症し入院中の68歳の男性です。

ウイルス性下痢症を併発したため点滴を継続していますが,全身状態は改善し,心臓リハビリテーションを施行する目的でICUから一般病棟に転室してきました。しかしその夜,この患者は,ラウンドで回ってきた看護師に心肺停止状態で発見されました。

そのときのモニター心電図が図1Aです。即座に心室細動と判断した看護師と当直医の適切な対処により,この患者は無事に蘇生され事なきを得ましたが,いつもうまくいくとは限りません。心室細動を予防するために,ぜひモニター心電図を活用しましょう。

まず,少し時間を遡り,急変前のモニター心電図を図1Bに示します。洞調律中のQT間隔は0.46秒とやや延長しており,心室期外収縮(★)の散発と,時に連発が認められます。また,よくみると,T波が陰性(R波と逆に下向き)になっていることがわかります。

そこで,12誘導心電図図1C)を記録すると,下壁(Ⅱ,Ⅲ,aVF)誘導と胸部誘導の広範な陰性T波(↓)を認めました。

これは心筋梗塞の一般的な心電図の経過ですが,心臓はまだ電気的に不安定な状況,つまり不整脈が出やすい状況であることを意味します。また,この患者は,ICU管理中から下痢症を発症し点滴が続けられていましたが,心室細動発症時の血清カリウム値が3.0mEq/Lと低値を示していたこともわかりました。このような電解質異常も不整脈を起こす誘因になることが知られています。

以上より,この患者は,心臓の状態が心筋梗塞直後の不整脈を起こしやすい病態にあり,低カリウム血症という誘因が追加されることで,図1Bに示したとおり,心室期外収縮が頻回に出現するようになり,その結果,R on T現象から心室細動(1A)に至ったと考えられます。

心臓が不安定な状態であることを知り,心室期外収縮が多くなった時点で採血,血液ガス分析を検討し,カリウム値を補正するなど適切な対処をすることで,この心室細動は予防できたかもしれません。

症例2:ブルガダ(Brugada)症候群の35歳の男性

図2症例2の心電図

症例2の心電図

症例2は,大学病院でブルガダ症候群と診断されている35歳の男性です。

2日前からの発熱と全身倦怠感で救急外来を受診し,インフルエンザ肺炎と診断され緊急入院となりました。入院後,抗ウイルス薬が開始され安静臥床にて経過観察となりました。しかし,その夜,うめき声を聞いた看護師が心肺停止状態の患者をみつけることになります。


発作時のモニター心電図は,図2Aに示す心室細動でした。入院時のモニター心電図を振り返ってみると図2Bの通り,ブルガダ症候群に特徴的なCoved型ST上昇(↓)を示していたことがわかりました。このブルガダ症候群に特徴的なST上昇は,発熱によって顕在化することが知られており,その際に致死的不整脈発生のリスクが高まることがわかっています。

ただし,このST上昇は,胸部誘導のV1V2誘導でのみ特徴的であり,モニター心電図の電極のつけ方(図3A,図3B)にも注意を払わなくてはなりません。つまり,通常のⅡ誘導では,ST上昇は識別できませんが,NASA誘導にすることでV1,V2誘導に近似した波形を記録することができます。

以上のことを知っていれば,モニター心電図を適切な誘導で記録し,心室細動の予知予防(発熱のコントロール,イソプロテレノロールなどカテコラミン投与)を検討することができます。

図3NASA誘導・Ⅱ誘導

NASA誘導・Ⅱ誘導

このように,心室細動を起こしやすい病態や誘因を事前に把握しておくことは,モニター心電図の適応を知ることにもつながり,何をみて,何に注意しなければならないのか,そしてその際の正しい対処方法を知るうえでとても重要です。

モニター心電図の要点

不規則な波形

心室細動のモニター心電図波形(図4)をみてみましょう。

図4さまざまな心室細動の例

さまざまな心室細動の例

 

心電図波形といっても見慣れたP波やQRS波はなく,決まった形がない,振幅が常時変化する不規則な形を示していることがわかると思います。このように不規則であることが心室細動の特徴です。

このような特徴があることから,不規則な波の代表であるノイズとの識別が問題となるように思いますが,これを解決する最もよい方法は,波形だけで判断しないということです。患者の状態をチェックすることが一番の鑑別方法になるということは,いうまでもありません(MEMO1)。

MEMO1 本当にノイズ!?

みなさん,病棟での仕事に慣れてくると,心電図モニターのアラームが鳴っても「どうせ,体動でノイズを拾っているのだろう」と放置するようになるようです。しかし,それは大変危険です。前述した通り,波形だけでノイズと識別することは困難なことが多いため,一刻を争う病態である心室細動を見逃すことにもなりかねません。常に,患者の状況をチェックするような体制を整えましょう。また,簡単にノイズが出ないように,心電図電極の貼り方を工夫することも大切です。

さまざまな形

心室細動の不規則な形にもさまざまあり,図4Aのように完全にノイズのようなものや,図4Bのように一時的に幅広いQRS波形様にみえるもの,図4Cのようにジグザグ波形にみえるものなどがあります。


図4Bや図4Cは,多形性心室頻拍からの移行時によくみられ,心室細動(VF)のなかでもとくに「coarse VF」と呼ばれます。coarseは「粗い」という意味ですが,心室細動の振幅が大きく変化するときに使われる用語です。

一方,反対に「fine VF」という用語もあります。これは,まさにfineな(細かい),振幅の変化の少ない波形を示す図4Dのような心室細動を指します。


図4Eのようにcoarse VFからfine VFへ移行することがありますが,これは心臓の起電力の減少,つまり長く続いた心筋虚血による心筋細胞の消耗の表れと考えられます。除細動の成功率が低下することを意味しますので危険な兆候です。

また,このfine VFは,モニター心電図の設定によっては心静止と見誤られることがあります。ACLSの際,心静止の心電図を記録したときに必ず心電図振幅を上げて確認するよう指導があるのはそのためです。

心室細動と判断して除細動をするべきか,心静止と判断して心臓マッサージを続けるべきかの重要な判断材料となります。

心室細動の原因疾患と誘因~心室細動を起こしやすい患者を知る〜

心室細動の原因疾患と誘因に関して,ここでは代表的なもののみ示します。

「5つのT」と「5つのH」

アメリカ心臓協会(AHA)の『心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010』では,治療可能な原因として,5Hと5Tを頭に浮かべるように指導しています。


5つのHは,Hypovolemia(循環血液量減少,つまり出血),Hypoxia(低酸素),Hydrogen ion(水素イオン,つまりアシドーシス),Hypo/hyperkalemia(血清カリウム値異常),Hypothermia(低体温)を表し,5つのTは,Tension pneumothorax(気胸),Tamponade, cardiac (心タンポナーデ),Toxins(毒物),Thrombosis, pulmonary(肺血栓塞栓症),Thrombosis, coronary(心筋梗塞)を表します。

ガイドラインすべてを熟読するのは困難かもしれませんが,短くまとめられたハイライト版(1)がアメリカ心臓協会・救急心血管治療(ECC)のホームページで手に入るので,目を通しておくとよいでしょう。

基礎心疾患の有無

心筋梗塞や特発性心筋症などの基礎心疾患をもつ患者,つまり心機能(EF)が低下している患者に心室細動が発症しやすいことは理解しやすいでしょう。

しかし一方,明らかな基礎心疾患を伴わない(少なくともEFは正常な)患者に発症する心室細動があるということも覚えておかなければなりません。これには,ブルガダ症候群を含む特発性心室細動や先天性QT延長症候群など,比較的若年者で発生する遺伝子レベルの異常が含まれます。

さらに,その他全身状態の悪化によっても心室細動は発症することが知られており,この場合にも基礎疾患は何であれ,心室細動を起こしやすくする誘因を知っておくことが重要になります。

おわりに

本コラムでは,心室細動のモニター心電図の概要を説明しました。

大切なことは,心室細動を発症させないこと,見逃さないこと,そして落ち着いて対処することです。

心室細動に関する知識を十分に会得しておけば,心室細動のモニター心電図をみたときに慌てずに対処することができるようになるものです。スポーツと同じで自信を持って行動することが大切ですので,ぜひBLSやACLSのプロバイダーコースを受けておくことをお勧めします。

 

 


[文献]


[Profile]
村田広茂(むらた ひろしげ)
日本医科大学 循環器内科,日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科 助教
2005年3月 日本医科大学卒業,日本医科大学循環器内科へ入局。2009年 同大学院卒業。2010年7月 同大学付属病院集中治療室助教を経て,2014年4月より現職。日本循環器学会認定循環器専門医,日本不整脈学会認定不整脈専門医。主な著書に『不整脈診療レジデントマニュアル(分担執筆)』(医学書院),『ガイドライン外来診療2013(分担執筆)』(日経メディカル開発)などがある。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング2014年5月号

循環器ナーシング2014年5月号の表紙

P.30~「最も危険な頻脈性不整脈:心室細動」

著作権について

この連載

  • 不整脈とその理解 [11/13up]

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