いつまで続く看護師不足…「対策、考えてくれてますか?」

看護師は、いつも人手不足。

現場は常に余裕がなく、「人が足りない…!」と訴える看護師の声は至るところに響いています。

 

医療・介護のニーズはこれからますます増え、求められる質も高まるばかりですが…、看護師不足の現状や対策について、肝心の国はどう考えているのでしょうか?

 

 

「2025年に必要な看護職員の数」の計算が進んでいる

「2025年に必要な看護職員数」は、厚生労働省が2019年夏にも推計値を示す見通し

 

実は現在、「2025年に必要な看護職員の数」を出すための計算が全国で行われています。

 

厚生労働省は数年おきに「看護職員の需要と供給の推計値」を示しています。この需要推計に基づいて看護学校の入学者数や、看護師の勤務環境の改善策などが決まっていくので、現場の看護師にとっても影響の大きいデータです。

 

その最新データとなる「2025年時点の需給推計」をはじき出す作業が、いま、都道府県単位で行われているところなのです。

 

機械的に試算したごく粗い推計は既に出ています。これに都道府県ごとの地域事情を加味したり、対象外だった精神病床などを加えたりして、2019年8月にも最終的な全国推計値として公表される予定です。

 

厚労省による「ごく粗い試算」。精神病床・無床クリニック・行政機関などで働く看護職員数が含まれていないほか、地域事情や今後の働き方改革の影響も反映されていない(関連記事=2025年に必要な看護師、病院は97万人 訪問看護師の需要は2.5倍に

 

そして、この作業と併せて議論されているのが「需要に見合う看護師の数をいかに確保するか」。需要に対する、いわば供給の対策です。

 

 

看護師確保の国の議論、どんなことが話されている?

国の検討会では、「新規養成」「定着促進」「復職支援」の3つの視点から、看護師の確保対策が話し合われています。

 

具体的な課題として挙がっているのは、次のような点です。

 

 

1.夜勤従事者の確保

 

「夜勤ができる看護師」の確保は、多くの病院が頭を悩ませている重要課題。

子育て中は夜勤が免除される働き方が浸透し、出産しても働きやすい勤務環境になってきた半面、夜勤要員の不足というジレンマが生じています。

 

国の検討会でも、この点が指摘されていて、

 

夜勤時間・回数を適切にする視点だけでなく、夜勤者の処遇改善が必要ではないか

 

といった意見が出ています。

 

 

2.ハラスメント対策

 

看護職員が経験するパワハラ・暴力・セクハラ被害の深刻さは、日本看護協会をはじめとする各団体の実態調査でも明らかです。離職の一因になっていることは、現場の看護師なら誰もが思い当たるところ。

 

看護職員は自己犠牲しがちで、そういうものだろうと受け止めてしまっているようなことも聞く。ハラスメント対策はぜひ重点的にやっていただきたい」

 

訪問看護という密室の中で、かなり暴言・暴力の問題が起きている。一度被害に遭ってしまうと、訪問看護師として働くことを躊躇する方もいるのでは」

 

など、検討会委員からも「対策にもっと本腰を入れる必要がある」と指摘されています。

 

 

3.看護補助者の活用

 

看護師の働き方に影響の大きい「看護補助者(看護助手)の不足」もテコ入れが必要な課題として、検討会では認識されています。

 

病院の看護補助者が集まらず、看護師がその部分を代替している。いわゆる逆タスク・シフトみたいなことさえ起きている

 

「働き方改革などでタスク・シェアリング、タスク・シフトを考えなければいけない中で、現場は非常に大変な思いをしている」

 

診療報酬の引き上げなど、経営上の支援が必要だとする検討会委員の発言には、強い危機感がにじみます。介護現場の処遇改善が進むことで、さらに看護補助者が病院から去る可能性も指摘されています。

 

2025年に必要な看護職員の数と確保策が話し合われている厚生労働省の検討会(看護職員需給分科会、2019年2月25日)

 

このほか、検討会では以下のような論点と意見が出ています。

 

4.キャリアパス教育

 

「看護学校では『まず急性期』と言われ、(急性期病院に就職後)何年か経ったら退職。この傾向を変えてほしい」

 

「訪問看護や介護分野の人材育成も、看護基礎教育の中に取り入れる必要がある」

 

 

5.訪問看護や介護サービス分野の人材確保

 

「病院からの離職や定年退職後、訪問看護に人材が流れるような現任教育が必要」

 

「訪問看護師を倍増するために、病院から訪看ステーションへの出向制度や新人看護師の採用を進めていくべき」

 

 

6.偏在対策

 

「ほかの地域だったら看護師がいるのに、この地域では確保できないとか、訪問看護を受けたくても、ここでは数が足りないとか、非常に地域差のある問題」

 

「医療過疎地では(看護師を)募集しようにも応募者がいない。医師需給で行っているような偏在データの把握や地域枠などの考え方はできないか」


 

7.ナースセンターの機能強化

 

「離職時に届け出るナースセンターへの登録が努力義務にとどまっているため、登録者数が圧倒的に少ない(2019年3月現在、9万2474人)」

 

「ハローワークと連携して、復職支援だけでなく転職支援でも、ナースセンターの機能を強化していくことが必要」

 

 

医師不足だけじゃない「看護師不足」にも焦点を

厚労省による「2025年に必要な看護職員の数」は2019年夏にも全国推計を集約、9月には看護職員の確保対策とともに報告書がまとまる予定です。

 

厚労省によると、全国の看護職員の就業者数は約166万人(2016年現在)。

 

毎年およそ3万人ペースで増えているものの、在院日数の短縮化や看護業務の高度化・煩雑化などが影響して、現場の人手不足感はいっこうに改善されていません。

 

国のある推計では「約200万人が必要」との試算が出ており、「このままでは、2025年に約3万~13万人の看護職員が足りなくなる」という指摘もあります。

※社会保障・税一体改革の試算(2013年)

 

医師不足に比べて注目されにくい看護師不足ですが、2025年以降に向けた国の検討は既に始まっています。現場の声が国に届き、広く社会の関心を高める上でも、今後の動きは要チェックです。

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

看護職員の需給推計について(案)(厚生労働省)

病院・有床診療所・訪問看護・介護保険サービス の看護職員数の推計値について(ごく粗い試算)(厚生労働省)

第5~8回看護職員需給分科会 看護職員の確保策について(厚生労働省)

2017年看護職員実態調査日本看護協会

2017年看護職員の労働実態調査(日本医療労働組合連合会)

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