国試、合否のボーダーラインは?【過去10年データ】
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2019年02月04日
【日経メディカルAナーシング Pick up!】
浸透圧性下剤は、慢性便秘症での使用が推奨されている薬剤の1つ。昨冬、従来薬とは作用機序の異なる新しい浸透圧性下剤としてポリエチレングリコール製剤が発売された。
慢性便秘症の治療薬として、米国では50%近いシェアを誇る同薬について、その特徴や臨床上の位置づけを紹介する。
2018年11月、慢性便秘症に適応を持つポリエチレングリコール製剤(PEG製剤、商品名モビコール)が発売された。同薬は、腸管内の水分量を増やし、便を軟化して排便を促す「浸透圧性下剤」に分類される。
同じく浸透圧性下剤に分類される薬剤には、塩類下剤の酸化マグネシウム(マグミット他)、糖類下剤のラクツロース(モニラック他)、浸潤性下剤のジオクチルソジウムスルホサクシネートがある(図1)。ここに今回、高分子化合物のPEGが加わった。
図1 慢性便秘症の治療に使用される浸透圧性下剤(『慢性便秘症診療ガイドライン2017』の分類を基に編集部作成) |
PEGは日本では新薬として登場したが、米国では従来から使われてきた薬剤だ。
兵庫医科大学内科学消化管科主任教授の三輪洋人氏は、「日本では酸化マグネシウムを使う例が多いが、米国では酸化マグネシウムの製剤がなく、PEGが半分近いシェアを占めている」と言う。
写真1 モビコールの製品画像(提供:EAファーマ) |
米国で大きなシェアを獲得した理由は、古くから使っている医師が多いことに加えて、浸透圧が等張のため腸壁から水をあまり奪わない、腸管からほとんど吸収されない、電解質異常を起こしにくいなど、その安全性の高さが評価されているものと考えられる。
ちなみにPEGは、その安全性の高さから、有効成分がモビコールとほぼ同じモビプレップ(一般名ナトリウム・カリウム・アスコルビン酸配合剤散)が、下部消化管内視鏡検査の前処置に経口腸管洗浄薬として使用されている。
モビコールの副作用は、国内臨床試験で、192例中33例(17.2%)に認められた。主な副作用は下痢7例、腹痛7例(いずれも3.6%)だった。
他の浸透圧性下剤と同じく、効果は用量依存的に増強されるため、投与量の調節で下痢を回避することがポイントになる。
重大な副作用として添付文書には、ショックとアナフィラキシーが示されている。これはモビプレップでアナフィラキシーの報告があるためで、頻度は不明だが注意する必要はありそうだ。
三輪氏は、「日本では、まず安価で使い慣れた酸化マグネシウムを使うことが多いだろう。それでコントロールができていれば治療薬を変更する必要はない。ただし、腎機能が低下している患者では酸化マグネシウムを内服していると高マグネシウム血症を起こすことがある。こうした患者ではPEGへの切り替えを検討してもよいだろう」と話す。
実際、酸化マグネシウム製剤には、重篤な転帰をたどったケースを含む高マグネシウム血症の報告があり、高齢者や長期投与時には定期的に血清マグネシウム濃度を測定する必要がある。
また、同薬は粉末を水に溶解して経口摂取する薬剤なので、「小児や経管栄養の患者には処方しやすいかもしれない」と三輪氏は紹介する。
実際、横浜市で在宅医療を行う山手台クリニック院長の石井洋介氏は、「腎機能が低下していて酸化マグネシウムを処方しづらい患者には、モビコールが第一選択になるだろう」と話す。
最近、訪問を始めた高齢者施設では、それまで刺激性下剤を中心に処方されており、利用者から日中・夜間問わず漏便や腹痛の訴えがあったという。
「これを浸透圧性下剤に切り替えて量を調節することで、ほとんどの利用者がトイレで排泄できるようになった」と、石井氏は浸透圧性下剤のメリットを語る。
浸透圧性下剤ではこれまで、安価で処方しやすい酸化マグネシウムを第一選択とし、腎機能に懸念がある患者に対してはルビプロストン(商品名アミティーザ)を処方してきた。
ただし、ルビプロストンは剤形が大きいカプセルのため、高齢者にとっては飲み込みにくく、胃ろうや経管栄養の患者にも使いにくいのが欠点だった。
こうしたケースでは従来、便秘には保険適応がないがラクツロースを使用していたが、「慢性便秘症に保険適応のあるモビコールが使用できるようになるのは歓迎だ」と石井氏は言う。
2013年に日本小児栄養消化器肝臓学会などが作成した『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』の作成委員長を務めた友政剛氏(パルこどもクリニック[群馬県伊勢崎市]院長)は、「欧米で代表的に使用されている浸透圧性下剤であり、日本でも使用してみたいという声は学会員の中でも大きかった。液体に溶解して経口摂取するため、錠剤や散剤を飲みたがらない子どもも内服しやすいのではないかと期待されている」と言う。
小児の場合、便秘の原因は様々だが、腸の動きが悪くなって便秘を来すケースよりも、便が固くて排泄できない、または痛みによって排泄を拒否して便秘になるケースが圧倒的に多い。
そのため、便を軟化する浸透圧性下剤は、機序的にも安全面からも有効と期待されている。まずは、刺激性下剤のような習慣化の心配がない浸透圧性下剤を、適切な量で使用したい。
友政氏は、「浸透圧性下剤を処方しても便が硬くて出せない状態が続く場合は、投与量が少ないことがほとんど。効きすぎれば下痢を来すため気を付けなければならないが、しっかりと便を軟化させ、出しやすくしてあげなければ便が大腸に塊となって残り、下剤の効果が低下する。最終的には漏便を来すなど悲惨な事態に陥ることが少なくない」と強調する。
したがって、適切な量の下剤を確実に飲ませることは、小児の便秘治療において最も重要なポイントだ。
友政氏は、下剤を処方した後は、便が出ているかどうかだけでなく、適切な硬さの便が十分な量排泄されているかどうかを確認するため、時には排便日記だけでなく、1日分のオムツを持参させる場合もあるという。
「小児に適応がある便秘治療薬は少ない。また、浸透圧性下剤は飲みにくいことが問題で、選択肢が増えたことはありがたい」と友政氏。
小児の便秘にも使われる酸化マグネシウムは、小児への適応がない。一方、モビコールは2歳以上7歳未満の幼児、7歳以上12歳未満の小児、成人及び12歳以上の小児と3段階の用量が示されており、2歳から投与できる。
また、成人同様、腎機能が低下している児では高マグネシウム血症を起こす可能性があるため、酸化マグネシウムが使用しにくく、PEGのいい適応になると考えられる。
ただし友政氏は、「今後は、2歳未満にもモビコールの適応が広がることを期待したい」と話す。
これは、1~2歳頃から排便時の痛みや浣腸への恐怖による排便拒否が始まるため、便秘がある患児には1歳頃から治療を始めたいからだ。そうすることで、固い便への恐怖を経験することなく、その後の治療の受け入れも良くなる。
友政氏は、「粉末感の強い酸化マグネシウムを嫌がる児は少なくなく、スプーンに錠剤を置いてジュースなどで溶かして飲ませるよう指導している。それでも飲みたがらない児には、粉末を液体に溶解して飲むポリエチレングリコールを試す価値が十分にある」と言うが、その肝心の飲みやすさについて、「モビコールも塩味があって水に溶いただけでは美味しくはないため、水ではなくジュースに溶くなど工夫が必要だ」と話す。
モビコールは、市販のジュースやお茶などに溶解して浸透圧を確認した資料が公開されており、パンフレットにも「リンゴジュースなどに溶いても可能」と記載している。
友政氏も、「お茶に溶いた液は美味しくないが、オレンジジュースやリンゴジュース、スポーツドリンクは美味しい」と話す。
ただし使用時は、1包当たり約60mLの飲料に溶解することになるため、2包使用する場合は120mL程度のジュースの量になる。毎日飲むことになるので、「子どもが飽きてしまう懸念はある」と友政氏は言う。
なお、下剤は人によって効果量が大きく異なるため、処方量の調節は必須だ。
同じ浸透圧性下剤の酸化マグネシウムは、例えば錠剤のマグミットなら200mg、250mg、330mg、500mgと展開されており、それらを組み合わせることで調節がしやすい。散剤で調節すれば、さらに細かな調節が可能だ。
これに対し、モビコールは1包ごとの処方になる。友政氏は、「1包では足りないからもう1包追加、というおおざっぱな調節ではちょうどよい量に調節できないことがあるのではないかと危惧している。1包の次は3分の1包追加、といった微調整を行いたい場合、モビコールは薬価も高いため1包の中身を出して3分の2は捨ててください、という指導には抵抗感がある」と話す。
薬価は酸化マグネシウムのマグミット錠250mgが5.6円なのに対し、モビコールは1包当たり83.9円だ。「薬価の高さや用量の調節のしやすさについて、今後の改善に期待している」と友政氏は話した。
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