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2019年01月28日

この役立たず!おまえなんかいない方がましだ!|「指導だったのに」と悔やむ前に心しておくべきこと

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

三和 護=編集委員

 

若い医師から、パワーハラスメントを受けたと訴えられた。自分は指導のつもりだったが、病院は処分を検討している。どうしたらいいのか―― 。悩んだ揚げ句、加害者とされた指導医が駆け込んだのは、ある弁護士事務所だった。

 


 

「この2、3年、パワハラの加害者とされた医師からの相談が目立ってきた」。こう語るのは、弁護士の桑原博道氏(仁邦法律事務所)だ。桑原氏によると、パワハラと訴えられた医師は決まって、「必要な指導をしただけだ」と自分の行為を正当化するという。

 

しかし、「時代は変わって、ある一線を越えると、業務上の指導として適正な範囲の行為とは扱われなくなっている」(桑原氏)のも事実だ。では、厳しい指導とパワハラの境目はどこにあるのか―― 

 

 

「業務上の指導であり適正な範囲の行為である」と言えるか

パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいう。

 

これは上司から部下に対して行われるものに限らず、先輩と後輩、同僚同士などの間で、地位や経験、人数など様々な優位性を背景に行われる行為を含んでいる。

 

こうしたパワハラは現在、確かな法的根拠が存在するわけではない。ただし、パワハラを受けたと都道府県労働局や労働基準監督署などに相談する事例は年々増えており、厚生労働省が事業主にパワハラ防止策を義務付ける法制化を検討している段階にある。

 

そんな中、健全な職場環境を維持するという目的で、就業規則にパワハラに関する規定を設け、労使協定を結ぶなどの対応を取る医療機関は多い。全国に92の病院を展開する日本赤十字社も、国の動きに呼応する形で対策に取り組んできた。

 

1999年2月に「日本赤十字社セクシュアル・ハラスメント防止規程」を定めたのを皮切りに、パワハラ、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントなどについて具体的な防止策を講じてきた。コンプライアンス統括室が中心となって、全職員を対象とした「ハラスメント防止ハンドブック」を作成。

 

「コンプラ塾長のつぶやき」と題するニューズレターも発行しており、2018年後半からはハラスメント相談員を対象とした関連動画を配信するなど、ハラスメント防止の徹底を図っている。

 

例えば、昨年7月に発行されたコンプラ塾長のつぶやき(第10回、図1)は、「STOP! パワハラ」がテーマだった。

 

パワハラをテーマとした「コンプラ塾長のつぶやき」のポスター

図1 パワハラをテーマとした「コンプラ塾長のつぶやき」

 

「あなたは大丈夫?」の下に展開されるイラストは、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「過大な要求」「過小な要求」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」というパワハラに該当すると判断される行為の6類型を示したものだ。より詳しい具体例を示したのが表1となる。

 

 

表1 職場におけるパワーハラスメントの行為類型 (日本赤十字社『ハラスメント防止ハンドブック』から)

職場におけるパワーハラスメントの行為類型を説明する表

 

ここで示した行為に当たると判断された場合、「業務上の指導であり、適正な範囲の行為である」とは扱われなくなる。その結果、パワハラと認定され、加害行為者は謝罪を求められるだけでなく、職員就業規則の定めにより懲戒処分を受けることになる。

 

 

人格を傷つけるのはNG

もっとも、病院の対応に不安を抱いて桑原氏のもとに相談に来たパワハラの嫌疑をかけられた医師の話を聞く限り、「パワハラからは程遠いケースが少なくない」という。

 

比較的小規模な医療施設の場合、組織内の相談体制が十分に整っていないことが多い。就業規則や服務規律の規定にパワハラに関する項目がない上、パワハラかどうかを判断するための委員会などの場も設けられていないため、被害を受けたと主張する側の言い分がそのまま通り、パワハラとは言えないのに加害者の烙印を押されてしまう―― 。そんな実態が浮かんでくる。

 

一方、パワハラと疑われても仕方ないと考えられる相談例では、「人格を傷つける言動が含まれている例が目立つ」と桑原氏は言う。いわゆる「精神的な攻撃」だ。

 

前述のコンプラ塾長のつぶやき第10回では、具体例として「この役立たずが!お前なんかいない方がましだ!給料泥棒め!」と怒鳴る上司の様子が例示されている。その上で、以下のような「パワハラにならない指導の仕方」も提示している。

 

叱る前に一呼吸おく」(難しい場合は改めて指導する場を設けましょう)

叱責の目的意識を持つ」(怒ることが目的になっていませんか?)

相手の気持ちを尊重する

 

⇒「感情的に『怒る』のと『叱る』のとは違います。叱責をする際は、『問題を解決し、成果達成へ前向きに進むため』というポジティブな目的が不可欠です」(コンプラ塾長)

 

「指導だったのに」と悔やむことがないように、日頃から、パワハラにならない指導を心掛けたいものだ。

 

知識不足がハラスメントを生む


「ハラスメントが起きることは、職場にとってマイナス要素でしかない。ささいな問題でも、小さな芽のうちに摘み取るべき」。京都第一赤十字病院で産業医として、ハラスメント対策に取り組んでいる甲山望氏の言葉だ。

 

同病院では、同じく産業医の小森友貴氏と2人体制で、職員の健康相談、メンタルヘルスや過重労働への対応、さらに復職支援などに取り組んでいる。月に5~20件ほどの相談を受けているが、中には様々なハラスメント的要素を含む相談も含まれるという。

 

京都第一赤十字病院の甲山望氏(左)と小森友貴氏の写真

 

「ハラスメント対策は、予防が最も重要」(甲山氏)になるため、ハラスメントの知識普及のための研修会や職員教育を強化し、相談窓口の迅速な対応に努めている。

 

2017年には全職員向け、新人向け、管理職向けの研修会を開催した。それ以降も年1回の全職員研修、新人職員向け研修を継続している。

 

相談対応の迅速化では、副院長をトップとするハラスメント対策委員会のコアメンバーによる協議の場を設置。個々の相談員が対応した事例について、事実関係の確認や事情聴取を行っている。相談者の承諾を得て、確認聴取を行い、必要に応じて職場や上司に対して介入を行う。

 

この介入でも解決しない事例は、ハラスメント対策委員会での協議に移し、ハラスメントに該当するか否かの判断やさらなる当事者への介入を実施している。

 

最近の実績を見ると、相談員を利用した事例は2015年に1件、2017年に7件あり、ハラスメント認定協議に至った事例は計3件となっている。ハラスメントと認定された事案に対しては、院長や幹部職員からの注意・指導のほか、異動などの措置が取られている。

 

だが、認定されないケースでも、当該職員の異動という対応をとらざるを得ないことが多いという。

 

「ハラスメントの認定は難しく、対応に多大な時間を費やされる。その上、いったん壊れた人間関係を修復するのは困難で、真の解決には至らない」。こう語る甲山氏は、「ハラスメントを起こさせない職場づくりには、正しい知識が必要不可欠」と訴えている。

 

■参考情報

・パワハラ対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」(厚生労働省)

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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