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2019年01月14日

亀田がゾフルーザの採用を見合わせた理由|亀田総合病院感染症科部長の細川直登氏に聞く

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

聞き手:小板橋 律子=日経メディカル

 

亀田総合病院(千葉県鴨川市)は、新規インフルエンザ薬のバロキサビル(商品名ゾフルーザ)について、今シーズンの採用を見送った。同院は院内処方であるため、今シーズンに同院を受診した患者には外来・入院ともにバロキサビルは処方されない。採用見送りに至った経緯を同院感染症科部長の細川直登氏に聞いた(文中敬称略)。

 

亀田総合病院感染症科部長の細川直登氏の写真

 


 

――なぜ、今シーズンの採用を見送ったのですか。

 

細川 実臨床での使用実績が不十分、というのがその理由です。大きな期待とともに迎えられた新薬でも、実臨床で使用する中で予想されなかった副作用が生じ、市場から撤退する薬は多々あります。我々は研究機関ではありませんので、実臨床において有効性だけでなく安全性がきちんと評価された薬剤を使用するのが賢明と考えています。

 

バロキサビルについてのエビデンスとしては、2018年9月にNEJM誌に掲載されたCAPSTONE-1 試験の結果と(N Engl J Med. 2018;379:913-23.)、2018年10月の米国感染症学会で発表されたCAPSTONE-2試験の結果しか公のものはありません。

 

前者は、元来健康で基礎疾患がない12~64歳の患者を対象に主に安全性を評価したもので、オセルタミビルに非劣性であることが示されています。CAPSTONE-2試験は、65歳以上の高齢者や、肺や心臓、腎臓などに基礎疾患を有する患者を対象としたもので、有効性でオセルタミビルに非劣性であることが示されました。

 

これまでに示されているのは、オセルタミビルと比較して、安全性・有効性ともに非劣性であることだけなのです。

 

一方、気になるのは耐性化です。バロキサビル投与後にアミノ酸変異のあるウイルスが小児患者の23%、成人では10%程度で検出されたと報告されています。ということは、この薬は、もしかしたら今使ってはいけない薬かもしれないとすら思うのです。

 

バロキサビルは、インフルエンザウイルスに対する作用点が既存のノイラミニダーゼ阻害薬(NA阻害薬)とは異なり、抗ウイルス作用が強い可能性があります。ですから、インフルエンザによる死亡率を減らす可能性を持つ新薬といえるでしょう。

 

そのような薬剤を外来で多用し、それがウイルスの耐性化につながってしまったら、死亡率を減らす新薬となる芽を潰してしまいかねません。

 

死亡リスクの高い重症例に対するバロキサビルのエビデンスが出てくることで、この薬の立ち位置は決まってくると思います。我々としては、そのようなデータが出てきてからの採用でも決して遅くないと判断しました。亀田以外でも、バロキサビルの採用を見合わせている医療機関が複数あると聞いています。

 

実際、日本感染症学会インフルエンザ委員会は、まだ、バロキサビルの位置付けを定めていません。その理由として、エビデンスが不十分ということが影響しているように思います。

 

――有効性・安全性でオセルタミビルに非劣性であるにもかかわらず、薬の値段が高いというのも問題視されていますね。

 

細川 1回投与とはいえ、バロキサビル40mgの薬価は4789円で、オセルタミビル(タミフル)5日分の薬価2720円の1.76倍です。オセルタミビルのジェネリックはさらに安く1360円ですので、バロキサビルはその3.52倍となります。

 

毎年、1000万人規模のインフルエンザ患者が受診しますが、1000万人をバロキサビルで治療すると、オセルタミビルのジェネリックで治療した場合に比べて342億9000万円のコスト増となります。

 

有効性・安全性で同じであれば安い方がいいわけで、亀田ではインフルエンザの治療薬の第一選択薬はオセルタミビルとしています。ただし実は、私自身はオセルタミビルを処方することはほとんどありません。基礎疾患がない患者であれば葛根湯を処方するのみです。

 

オセルタミビルは、2017年にWHOによる「保健システムに最低限必要な薬のリスト(model lists of essential medicines)」から外されました。その判断の根拠の1つとなったのが、2009年のBMJ誌に掲載された論文といわれています(BMJ.2009;339:b3172.)。

 

この論文は、ランダム化比較試験のメタアナリシスで、オセルタミビルやラナミビルというNA阻害薬は、インフルエンザによる症状を0.5~1.5日短縮するのみ。その一方で、副作用としての嘔吐が高頻度(number needed to harm=20)に生じると結論付けています。

 

――今回の不採用はどのような流れで決まったのでしょうか。

 

細川 院内の薬事委員会が採用薬を決めていますが、抗微生物薬に関しては、感染症科や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が評価の依頼を受けます。今回、感染症科もASTも新規採用の必要はないと返答しました。それに対して、呼吸器内科など他の科からの不満もなく、そのまま決まりました。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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