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2018年12月18日

放っておくと確実に医療現場は崩壊する|「医療危機」は国民全体の問題

宣言を読み上げるデーモン閣下さん
宣言を読み上げるデーモン閣下さん(右)

 

宿直勤務やオンコールがあり、長時間勤務が常態化する医師。

 

勤務医1万人に対する日本医師会のアンケート調査によると、約4割の医師が当直日の平均睡眠時間が4時間以下で、3.6%の医師が自殺や死を日常的に考えているといいます。

 

こうした現実を放っておくと、確実に医療の現場は崩壊する――。

 

17日に開かれた厚生労働省の「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」では、これまでの議論のまとめとし、医療崩壊への危機感を国民全体で共有する「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」が発表されました。

 

 

「いのちをまもり、医療をまもる」5つの方策

同宣言では、医療の恩恵を被るすべての人が考え、行動すべき「国民的プロジェクト」とし、5つの方策が提案されました。

 

「いのちをまもり、医療をまもる」国民プロジェクト5つの方策/1:患者・家族の不安を解消する取り組みを最優先で実施すること/2:医療の現場が危機である現状を国民に広く共有すること/3:緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用すること/4:信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供すること/5:チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立すること/出典:第5回「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」資料2

 

5つの方策は、夜間や休日に受診しがちである患者や家族の不安を解消することや、一般的には知られていない医療現場の危機的状況を広く周知していくことなどが盛り込まれました。

 

また、この5つの方策は、懇談会のメンバーが継続的にかかわり、2019年度以降も進捗状況をチェックしていくと付記されました。

 

 

市民の医療のかかり方の意識改革を促すとともに、医療者も働き方の見直しを

国民の命と医療を守るため、関係者それぞれが取り組むべきアクション例も示されました。

 

それぞれのアクション例1/市民:□患者の様子が普段と違う場合は「信頼できる医療情報サイト」※1を活用し、まずは状態を把握する □夜間・休日に受診を迷ったら#8000や#7119の電話相談を利用する □夜間・休日よりも、できるだけ日中に受診する •日中であれば院内の患者・家族支援窓口(相談窓口)も活用できる • 夜間・休日診療は、自己負担額が高い、診療時間が短い、処方が短期間など、受ける側にもデメリットがある □抗生物質をもらうための受診は控える• 抗生物質はかぜには効かない □上手に「チーム医療」※2のサポートを受ける• 日頃の体調管理は看護師に、薬のことは薬剤師に聞くなど、医師ばかりを頼らない/医師/医療提供者:□あらゆる機会に医療のかかり方を啓発する(待合室、母子健診、小児健診、成人健診、高齢者健診、学校健診、職域健診、公開講座) □電話相談や「医療情報サイト」などの最新情報をチェックして質を保つ □タスクシフト・タスクシェア(業務の移管・共同化)を推進する • 医療の質を上げ、患者の満足を上げることにつなげる □どの医療従事者に相談したらよいかをサポートする患者・家族支援体制※3を整える □管理者は働き方改革に真摯に取り組み、地域医療の継続にも貢献する □医療従事者も患者の安全のため、健康管理に努め、きちんと休暇をとる/※1 現在、様々な情報が多くのサイトに掲載されており、どこに正しい情報があるのかを市民は判断できない。国の認証や支援を受けた「信頼できる医療情報サイト」を早急に作成する必要がある(→5つの方策)。※2 医療機関では、医師、薬剤師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)など、さまざまな専門職の人が働いている。それぞれの高い専門性を活かし、業務分担しつつも連携・補完し合い、患者の状況に応じた的確な医療やケアを提供することを「チーム医療」と呼ぶ。※3 患者・家族の相談や苦情に対して適切に対応するために支援窓口を設け、適切な職員が対応できる体制を整えることを言う。/出典:第5回「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」資料3

 

市民のアクション例としては、小児の医療電話相談「#8000」・救急相談センター「#7119」の活用や、「チーム医療」のサポートを受け、医師ばかりに頼らないことなどが挙げられました。

 

医師や医療提供者のアクション例としては、病院の待ち時間や健診などあらゆる機会を活用し、医療のかかり方を周知することや、タスクシフト・タスクシェアの推進などが挙げられました。

 

また、医療安全のためにも、医療従事者自身も健康管理に努め、きちんと休暇を取得することと明記されました。

 

 

行政は市民が情報にアクセスしやすい体制整備を、企業は働く人が休める環境整備を

それぞれのアクション例2/行政:□ 「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト」を継続・推進し、効果を検証していく □医療危機の現状を国民に広く共有し、理解を得ていく □「信頼できる医療情報サイト」の認証や支援をする □#8000や#7119の体制整備を進め、周知を徹底する □上手な医療のかかり方を直接伝えていく • 保護者が子どもの健康や医療について考えるタイミング(両親学級や乳幼児健診など)での直接講座等の実施を全国の自治体に促す • 「高齢者/高齢者に携わる人たち」に、大人の医療のかかり方が伝わるよう、介護施設や消防機関などへ協力を呼びかける • 学校教育等で若いうちに理解を促す □医療機関の機能分化や集約、連携推進など、医師/医療従事者の長時間労働を改善する施策に取り組む □看護師や薬剤師などコ・メディカルが、能動的に活躍できるための制度・仕組みを整える※1 □働く人が日中受診できる柔軟な働き方を進める •フレックスタイム制や休暇取得などの指標を企業が公表する仕組みを推進する •企業独自の休暇制度を横展開により普及させる □行政提出書類の簡素化/簡略化に取り組む/民間企業:□従業員の健康を守ることを経営の柱とする □柔軟な働き方に関する指標を健康経営に生かす □業務の属人化を止め、仕事を皆でシェアする •それによりテレワークや休暇取得がしやすくなる □体調が悪い時は、休みをとって自宅休養できるようにする □インフルエンザなどの診断書を強制しない □AIを活用した相談アプリの開発を進める □ユーザーフレンドリーな「医療情報サイト」の構築を進める/※1 諸外国においても、医師偏在・過重労働対策の中で、米国等では「フィジシャン・アシスタント」(外科手術の助手や術後管理等を担当)が創設・拡大されてきた。また、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる、医師と看護師の中間職と位置付けられる「ナース・プラクティショナー」という上級の看護師も存在する。また、英国では、プライマリ・ケアの場面で診療所看護師(プラクティス・ナース)により、 予防や状態の安定した慢性疾患患者等に対する診断、検査、処置、処方、リフィル処方への対応等が可能となっている。/出典:第5回「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」資料3

 

行政のアクション例としては、都道府県によって設置状況が異なる#8000や#7119の体制整備や、国民が正しい医療情報にすぐにアクセスできるように「信頼できる医療情報サイト」の認証や支援をしていくことなどが記載されました。

 

また、医師や医療従事者の長時間労働の改善看護師や薬剤師などが能動的に活動できるための制度や仕組みの整備も挙げられました。

 

民間企業のアクション例としては、夜間や休日の受診をせずに済むように、体調が悪い時は休めるようにすることなどが示されました。

 

 

「約1万人の医師が、この瞬間も死を考えているかもしれない」

「(懇談会に参加するまで)ここまで医師の働き方が深刻と思わなかった」と話すデーモン閣下さん

 

懇談会のメンバーが宣言に込めた考えを話す中で、繰り返し指摘されたのが「医療崩壊」に対する危機感の共有の必要性でした。

 

裴英洙さん(ハイズ株式会社)は、3.6%の医師が自殺や死を毎週または毎日考えているとされることに言及。

 

「医師は約30万人いますので、3.6%というと約1万人です。約1万人の医師が、この瞬間も、もしかしたら死を考えているかもしれません」と話し、医療に関係する一人ひとりが自分事と捉え、アクションにつなげていかなければならないと訴えました。

 

また、デーモン閣下さん(アーティスト)は、「医療の危機と現場崩壊は深刻であることが一番伝えたいこと」とし、消費税や外国人労働者の受け入れなどと同じように、今後の国民生活にかかわる問題として取り上げられるべきだと訴えました。

 

 

「これが最後ではない」

座長の渋谷健司さん

「すべての人が関心を持って、行動することが大事」と話す座長の渋谷さん

 

座長の渋谷健司さん(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)は、「(会合としては)最終回です。ただ、これが最後ではありません」と話し、今回の宣言を踏まえて、行政や医療関係者だけでなく、市民や民間企業、すべての人の取り組みが前進していくように、今後も積極的にかかわっていくとしました。

 

また、「現場の医師は本当に苦労している。若い医師が日夜休みなく、泥のように働いている」と話し、我々に何ができるのかを真剣に考えていかなければならないと訴えました。

 

閉会にあたって、新谷正義厚生労働大臣政務官は、「国民皆保険の長所を維持しつつ、質の高い医療を後世に残していくことは、このまま医療現場を放置していては難しいのではないかと考えています」と話し、今回の宣言を受け、速やかに具体的施策に着手していくとしました。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

「いのちをまもり、医療をまもる」国民プロジェクト宣言!(厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」)

勤務医の健康支援に関する検討委員会答申(日本医師会)

第1回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会(厚生労働省)

第2回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会(厚生労働省)

第3回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会(厚生労働省)

第4回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会(厚生労働省)

第5回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会(厚労省)

医師の働き方改革に関する検討会(厚生労働省)

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