点滴ルートの固定方法【6】|小児の足背に固定する場合

前回は、少し特殊な小児の点滴固定(手背)についての内容でした。

引き続き小児を取り上げ、今回は足背への固定方法について紹介します。

 

どれが正解? 点滴ルートの固定方法

Vol.6 小児の足背に固定する場合

タイトル:末梢静脈カテーテル固定の正解は?|血管内留置カテーテルのガイドラインをわかりやすく解説!

〔執筆〕 白石弓夏 看護師

〔監修〕 中谷佳子

聖マリアンナ医科大学病院

感染制御部 副師長

〔イラスト〕 かげ 看護師

 

 

最低限必要な条件

まず最初に、点滴ルート固定において最低限必要な条件をおさえておきましょう。

 

  • 針とラインがしっかり固定される
  • ラインが閉塞しない
  • 刺入部の観察ができる

 

特にシーネ固定を行う場合には、

・良肢位を保てるように固定する

・強く圧迫固定しすぎないように注意する

・1日1回以上は包帯の巻き直しをするなど、皮膚に異常がないか観察をする

これらの注意も同時に必要になります。

 

続いて、小児の足背に特有な条件をみていきましょう。

 

 

小児の点滴固定については現在も検討中

小児の点滴固定については長年議論がなされています。

 

固定に使うシーネは、子どもの行動制限や皮膚トラブルによる苦痛、拘束感などがあるためです。

近年ではシーネを使わない固定方法も検討され、研究もされています(文献1)。

 

固定バンドなど、シーネを使わない方法を実践できれば良いのですが、そうもいかない現状を鑑みて、シーネを使う場合に推奨される方法を紹介していきます。

 

なお、シーネの交換時期等を含め、病院の方針やマニュアルを確認した上で実践してみてください。

 

 

小児で足背に点滴固定をするケースとは

小児(乳幼児)の点滴固定は、基本的に手背にとるのが一般的です。

[参考:点滴ルートの固定方法|小児の手背に固定する場合

 

しかし、手背に血管が見当たらない場合や、以前の点滴漏れなどが原因で手背の血管を避けたい場合には、足背にとることもあります。

 

ただし、選択する血管が足首に近いので、つかまり立ちやハイハイをする月齢(7~8ヶ月頃)で安静が保てないと、かかとのシーネがずれ、刺入部の固定も、一緒にずれてしまうリスクがあります。

また、皮膚トラブルにもつながる恐れがあります。

 

そのため、生後半年以下の子どもを中心に行われる方法です。

 

 

刺入の場所

小児の足背点滴について、刺入部の場所を表す図表。

 

刺入の場所は、大伏在静脈、小伏在静脈、足背静脈弓の3ヶ所。

どれも外踝・内踝周辺、足背前面の見えやすい血管です。

 

足がむちむちしている乳児でも、踝回りは比較的皮下組織が薄くて血管が出やすいためです。

 

 

固定の手順

(1)刺入部の固定

刺入部の固定には成人と同様に、透明ドレッシング材やガーゼ、テープなどを使用します。


刺入部の固定方法について説明する図表。

 

ループを作るときは、体幹側ではない方で固定しましょう。

両足の内側がぶつかって、固定部位がずれるのを避けるためです。

 

特に踝周囲で固定するときは、骨に接続部やルートが当たりやすいため、ガーゼやクッション材を活用します。

 

 

(2)シーネ選び

子どもの足の太さや長さに合ったシーネをそえます。

シーネは良肢位が保てるように、かかとのところは少し折り曲げておきます。

 

シーネえらびについてポイントをまとめたイラスト。

 

ふくらはぎやかかと、土踏まずの部分のカーブにそってシーネを折り曲げることが重要です。

 

■ポイント

・シーネの長さは、足の指先から、ふくらはぎまで。膝をまげたときに、膝裏にあたらないようにしましょう。

(膝裏の神経や血管が圧迫されるのを防ぐため)

・シーネの太さは、足の太さに合わせましょう。

・シーネをまげるときは、子どもの足のカーブにそってまげましょう。

 

隙間があると、シーネがずれて皮膚トラブルや、針先抜けてしまう原因となるので注意が必要です。

 

 

(3)3点シーネ固定

3点固定について、固定の順番を表すイラスト

 

かかとをしっかりとシーネに合わせ、指の付け根・かかと、ふくらはぎの順でテープ固定します。

 

バタバタと足を動かすことによってかかととシーネの間にずれが起こり、褥瘡のような状態になってしまうことがあります。

そのため、かかとをしっかりと固定することが一番のポイントになります。

 

シーネを固定している包帯の管理

シーネを固定している包帯は1日1回~各勤務で巻き直す、かかとの圧迫をとる、清拭で汗を拭きとるなどの管理が必要です。

数日に1回シーネを交換することもあります(病院によってさまざまです)。

 

踵シーネがずれた場合の対応をまとめたイラスト

お座りができるようになる年齢になると、バタバタと足を動かすうちに、上のイラストのようにシーネと足がずれてしまうことがあります。

 

この状態だと、かかと周囲とシーネが擦れて皮膚トラブルになる可能性があるので注意が必要です。

 

もし、シーネがずれてしまった場合には、(3)の3点固定からやり直します。

 

 

(4)包帯保護

包帯で保護をする際には、シーネ・包帯固定による循環障害や、神経障害の有無を観察できることがポイントです。

 

長期間のシーネ固定は蒸れも生じます。

蒸れを防ぐために、足の指先が出るように包帯で巻いていきます。

 

最後にテープで固定して終わりです。

子どもに喜ばれるので、テープにイラストを描くのもいいですね。

 

包帯保護のポイントをまとめたイラスト

 

 

ロールガーゼの固定

3点固定を行う際に、テープだけで固定すると皮膚トラブルの原因となります。

そこで、ふくらはぎ側と足首は、ガーゼなどを当ててからテープで固定することもあります。

 

ロールガーゼを使った固定の方法をまとめたイラスト

 

シーネと足の接地面は隙間ができるので、その隙間を埋めるようにガーゼを使い、その上からテープで固定をします。

 

 

皮膚トラブルの起きやすいところ

皮膚トラブルが起きやすいところをまとめたイラスト

 

[1]指の隙間

指先はテープで長期間固定されると、指の隙間がふやけたり、汗で赤くなったりすることがあります。

上からテープで固定をする際に、テープの圧をかけすぎないように固定しましょう。

長期間の点滴固定をしている場合は、適宜テープの貼り替えを行い、皮膚を観察します。

 

[2]かかとシーネのずれ

足をバタバタさせると圧がかかる部分でもあり、固定がずれると褥瘡の原因となります。

シーネのかかと部分にクッションをあらかじめ入れておくこともあります。

 

[3]テープ固定部

乳幼児の皮膚は弱いので、テープの材質によっては皮膚トラブルの危険があります。

 

テープをグッと圧をかけて固定すると、皮膚が突っ張るようになってしまうので、力加減には注意です。

 

[4]ルート接続部

ルートの接続部のゴツゴツした部分が皮膚に長時間当たることで褥瘡の原因になります。

ガーゼやクッション材で対応することが多いです。

 


以上のように小児の点滴固定は成人とは違い、特殊な方法です。

小児の経験がない看護師からみると驚きも多いでしょう。

 

しかし、成人でも小児でも「針とラインがしっかり固定される」「ラインが閉塞しない」「刺入部の観察ができる」という最低限のポイントには変わりありません。

 

これらを頭に入れておいてください。

 

■参考文献

1)日本褥瘡学会:医療関連機器圧迫創傷の予防と管理.第10章 小児:点滴固定用シーネ,2016年5月25日発行

 

2)山内紀代美・竹内恵子・神農祐子,他:小児の持続を点滴固定法の改良―シーネを使用しない固定法―,第38回日本看護学会論文集(小児看護),2007: p206-208.
 

3)名合理栄・中新美保子・鶴岡裕美,他:国内文献の概観からみた小児の点滴固定方法に関する検討,第38回日本看護学会論文集(小児看護),2007:p41-43.

 

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【監修者 プロフィール】

中谷 佳子(なかたに・よしこ)

1997年 聖マリアンナ医科大学病院 入職

2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)へ異動

2008年 感染管理認定看護師 取得

2008年~ 感染対策専従看護師

2013年 東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 修了(感染制御学修士)

2019年 聖マリアンナ医科大学病院 へ異動

2019年~ 感染制御部 副師長

2019年9月 特定行為研修修了

※最終更新日 2019/09/20

 

【イラスト:かげ】Twitter

総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。

 

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

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