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2018年11月15日

おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~【4-2】

前回の話

看護実習中の花が初めて受け持ったのは、慢性骨髄性白血病の主婦・川田さん。
落ち着いているように見えた川田さんでしたが、ある夕方、病院を抜け出して事故に遭ってしまい…

花が看護学生時代のお話。初めて受け持つ患者の川田さんが、昨夜病院を抜け出し家に帰ろうとして、交通事故に遭って亡くなったと聞いた花…。

 

 

昨日まで接していた患者の川田さんが亡くなったと聞き、『私のせいだ…』と自分を責める花。先生は、「まだ担当して2日だし、あなたは関係ない」と声をかけてくれました。しかし、川田さんの件は病院でも大事件で、後にわかったことは、その日娘さんが高熱を出して淋しくてメールをしてきたのだそうです。

 

慢性骨髄性白血病の川田さんが、高熱が出ている娘さんの看病なんてしたら、感染して命の危険があり、それは3年も病気した川田さんならわかっているはずだった。花は、『だけど母としていてもたってもいられなかった…。昨日泣いているのも見てたのに、何もできず、それどころかこんな悲運に遭わせてしまった…。』と川田さんを思えば思うほど、辛く自分をせめてしまいます。

 

花は一度、仕事をやめようとまで思いつめましたが、先生や同級生など、周りに支えられてその後の実習を続けました。しかし、患者さんとのやりとりを意識するあまり、から回りしたりと明らかに劣等生になっているように感じていきます。

 

同僚に相談しても、「大丈夫」と言われるばかり。花の心のもやもやはれません。次回の実習先は訪問看護だと知り、指導ナースが怖いらしいと少し不安になりますが、病院から外に出れると思うとすこしホッとできるかも、と思いました。実習の日、指導ナースの馬渕さんは噂どおり少し厳しそうな方で、患者さんの説明スピードも早くついていけませんでした。

 

説明を終えるとすぐ、訪問先へ向かう馬渕さんを慌てて追いながら、『訪問も病棟と変わらずバタバタしてる…。』と驚きました。訪問先へ向かうと馬渕さんは患者さんの様子を確認し、痰を取り始めました。痰の量が多く、「夜とりましたか?」と患者さんの奥さんに質問すると、「私も起きられないから、できないのよ。」と答えました。

 

花と同僚は、『2時間おきの吸引指導や説明、感染の観察をしなくちゃ…』と振り返っていると、馬渕さんは「夜の吸引はできる限りでいいですよ。」と答えました。勉強したことと違う指導に戸惑う花たちは、帰りの車で思い切って「夜の吸引はしないと、詰まって亡くなってしまわないんですか?」と質問しました。馬渕さんは、さらりと「するわねぇ。」と言いました。唖然とする学生たちをよそに、「でも毎晩84歳のおばあちゃんに課すのは酷でしょ?先に倒れる可能性もある。それでも病院に入らず、それをしないのはなんでかわかる?」続けて、質問を返しました。

 

花は、「おうちにいたいから…」と答えました。馬渕さんは「そう、もっというと、おうちで死にたいからよ。」と前を向きながら言いました。その言葉を聞き、花は川田さんが涙を流していた、あの日を思い出しました。馬渕さんは、「最後まで闘いたい人は病院に、穏やかに死を受け入れたい人の多くは、自宅介護を望むわね…。」と言いました。

 

「あの方は夫婦2人でずっとあの家で暮らしてきたから、最後もあの家の壁の傷やシミ、外からの光や自然に囲まれて亡くなっていきたい話してくれたの。」と説明してくれました。「でもとっさの時、家だと不安じゃないんですか?」と心配する同僚に、馬渕さんは「」在宅の方が穏やかで苦痛も少ないって論文も出てるし、やりつくして看取った時の、家族の晴ればれした顔を見ると、そればかりじゃないって思うのよ。」と話してくれました。

 

「患者さんが亡くなったときの御家族は、涙も少ないのよ。悲しいんだけど、ホッとしたような、やりとげたような…。」と言う指導ナースの顔が、話をするうちにゆるんでいった気がしました。次の患者さんの家についたとき、花は、さっきから家族の姿がないことに気が付きました。

 

家族が1度も顔を出さないことに驚く花と同僚。馬渕さんは、車に戻りながら「あのお宅は、看る気はないけど、施設に入れられないから自宅で看てるのよ。だから手足が硬く縮んだまま…。でも私たちは精一杯やっていると受け止めて、できることは何かと常に考えている…。」と言いました。

 

「そうやっていくうちに家族が変わることもあるのよ。」そう言いながら、次の訪問先へ向かいました。その日訪問したお宅は、他にも色々で、汚い家だけど、患者さんの周りだけ清潔な家があったり、元社長さんのお宅であったりしました。

 

実習中、一生懸命喋ってくれる人間好きな元社長さんや、母親の介護のために休職した息子さんとも接しました。

 

「様々なお宅があるけど、偏見の目で見ずに、目の前のその人を見るようにしてる。」と馬渕さんは帰り際話してくれました。実習を終え、質疑応答の時間、同僚は「私は訪問看護はやることが多岐に渡ってあり、自分で判断しなくてはならないことも多く、技術と知識が求められるなと感じました。」と答えていました。花はというと…

 

【3】に続く
2018/11/16 6:00公開予定

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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コメント一覧(2)

2匿名2018年11月15日 13時49分

泣いた

1肉球2018年11月15日 10時59分

この作者さんの漫画を読むと、訪問看護師って素敵って思う。
看護の最前線って急性期じゃなくて、訪問看護だわ。

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