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2018年07月30日

パーキンソン病ガイドラインが7年ぶりに改訂|パーキンソニズムの定義変更、早期からL-ドパを

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

本吉葵=日経メディカル

 

今年5月、日本神経学会の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」が7年ぶりに改訂された。

 

診断では、パーキンソニズムの定義を変更。薬物療法に関しては、より早期からドパミン補充療法を行うことの重要性を強調した。運動合併症のリスクが高い場合の選択肢にはMAO-B阻害薬を加えた。

 


 

今回の大きな改訂点の1つはパーキンソニズムの定義を変えたことだ。これまでのガイドラインではパーキンソニズムの定義を、典型的な左右差のある安静時振戦、筋強剛、運動緩慢、姿勢保持反射障害の「4大症候」うち2つ以上が存在することとしていた。

 

これに対し改訂ガイドラインでは、運動緩慢が見られることを必須の条件とし、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか、あるいは両方が見られるものをパーキンソニズムと定義。

 

姿勢保持反射障害を定義から外した点が大きな特徴だ。姿勢保持反射障害が進行期になってから出現し、早期に出現する場合は他疾患の可能性が高いことが分かってきたためだ。

 

姿勢反射保持障害は診断基準から除外

ガイドライン作成委員会の副委員長を務めた仙台西多賀病院(宮城県仙台市)院長の武田篤氏は「筋強剛や振戦は見られる疾患も見られない疾患もあり、動作緩慢はパーキンソニズムを来す疾患に最も普遍的に共通して見られる症候だ」と説明する。

 

改訂ガイドラインでは2015年に約20年ぶりに改訂された、国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDS)の診断基準に準拠した。

 

具体的には、図1のように、パーキンソニズムが存在し、(1)絶対的除外基準に抵触しない、(2)少なくとも2つの支持的基準に合致する、(3)相対的除外基準に抵触しない──場合に、パーキンソン病と診断することとしている。

パーキンソン病の診断基準

図1 パーキンソン病の診断基準
(出典:パーキンソン病診療ガイドライン2018、図2も)1)絶対的除外基準、2)支持的基準、3)相対的除外基準の各項目は取材を基に編集部で主なものを抜粋。

 

近年、補助診断法もパーキンソン病の診断に用いられる。特に画像診断などの補助診断で新しい手法が導入されており、診断基準にも反映された。

 

その1つがMIBG心筋シンチグラフィーによる診断だ。MIBG(3-indobenzylguanidine)とは交感神経遮断薬であるグアニジンのアナログであり、交感神経終末でノルアドレナリンと同様の生理動態を持つ物質。パーキンソン病では心臓のMIBG集積が低下することが分かってきた。

 

MIBG心筋シンチグラフィーは、パーキンソン病以外の疾患と鑑別する際の特異度が80%以上と高いことが報告されており(Treglia G et al. Clin Auton Res. 2012;22:43-55.)、MIBG集積低下はMDSの診断基準で「支持的基準」の1つに位置付けられている。

 

嗅覚検査などの補助診断法も盛り込む

DAT(ドパミントランスポーター)シンチグラフィーで正常画像が認められることが「絶対的除外基準」と位置付けられた。

 

DATシンチグラフィーは、線条体にあるドパミン神経細胞終末のシナプス前機能を評価することができる。パーキンソン病ではDATの集積低下が認められる。

 

画像診断以外の補助診断法の1つとして盛り込まれたのが、嗅覚検査だ。嗅覚低下はパーキンソン病患者の90%に認められ、他のパーキソニズムと鑑別する上での感度は高い。

 

武田氏は「パーキンソン病患者によく見られる安静時振戦が出現する割合が、50~70%であることを考えると、嗅覚症状は頻度が高く特異性が高い。パーキンソン病の主要な運動症状にも頻度としては劣らない」と補助診断としての有用性を強調する。

 

パーキンソン病患者によく見られる安静時振戦が出現する割合が50~70%であることを考えると、嗅覚症状は頻度が高く特異精が高い」と話す仙台西多賀病院の武田篤氏の写真。

 

運動合併症のリスクが高くなければ早期からL-ドパを使用

薬物療法に関しては、パーキンソン病と診断された症例に対して、早い段階からドパミン補充療法を行うことの重要性が強調された。

 

パーキンソン病は、中脳黒質の神経が変性してドパミンの放出が減少して発症すると考えられている。特にドパミンの前駆体であるL-ドパ補充療法は運動症状に対して有効的だ。

 

しかし、L-ドパは長期使用に伴う薬効減弱、薬効時間の短縮(wearing off)やジスキネジアの運動合併症が高頻度で発現してしまう。

 

L-ドパと、L-ドパより効果がマイルドなドパミンアゴニストをどのように使い分けるかがポイントになってくる。

 

2011年のガイドラインでは認知症合併などがなく、転倒リスクなど当面の症状改善を優先させる特別な事情がない患者には、運動合併症のリスクが低いカベルゴリンなどのドパミンアゴニストの使用を推奨していた。

 

これに対し新ガイドラインでは、こうしたケースであっても運動合併症のリスクが高い場合(65歳未満の発症など)でなければ、ドパミンの前駆体であるL-ドパによるドパミン補充療法を開始することを推奨した。

 

その理由についてガイドライン作成委員会の委員長を務めた順天堂大学大学院医学研究科神経学教授の服部信孝氏は、「L-ドパ治療による運動合併症の発現リスクを懸念し、早期からL-ドパの使用を避けるケースがあり、患者のADLが下がってしまうことが少なくなかった」と説明する。

 

不眠症などのリスクが少ないMAO-B阻害薬が登場

一方、早期パーキンソン病で運動合併症の発現リスクが高いケースについては、ドパミンアゴニストあるいはモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬を選択することを推奨。

 

新たにMAO-B阻害薬が選択肢に加わった。その背景には2015年12月にYahr重症度ステージでI~IIIにおいてセレギリン(商品名エフピー)の単剤での投与が保険診療で可能になったほか、今年6月に不眠症などのリスクが少ないラサギリンメシル酸塩(アジレクト)が発売されたことがある。

 

ラサギリンメシル酸塩はセレギリンとは異なり、アンフェタミン骨格を持たないため不眠症のリスクを考慮することなく処方できる上、1日1回投与のためアドヒアランス向上が期待できる。

 

また、MIBG心筋シンチグラフィー検査時にセレギリンはMIBGに影響を与えるため、検査2週間ほど前からの休薬を要するが、ラサギリンメシル酸塩は休薬せずに検査を行える。

 

服部氏は「ラサギリンは神経保護作用を持つ可能性があり、早期から使用することは有効だ」と期待を寄せる。

 

早期パーキンソン病治療のアルゴリズムを表す表

図2 早期パーキンソン病治療のアルゴリズム

 

運動合併症を併発する進行期にL-ドパ持続経腸療法の選択も

運動合併症が生じた際の治療についても、アルゴリズムが作成された。

 

L-ドパを1日3回投与しても運動合併症が見られる場合には1日4~5回に増量、またはドパミンアゴニストを開始、増量。効果が弱ければエンタカポン、イストラデフィリン、ゾニサミドなどの併用。さらにはL-ドパの頻回投与およびドパミンアゴニストの増量、変更を行い、最終的には、適応を考慮した上でデバイスによる治療を検討するとしている。

 

デバイス治療とは脳深部刺激療法とL-ドパ持続経腸療法だ。L-ドパ持続経腸療法とはゲル状にしたレボドパ・カルビドパ配合薬を、造設した胃瘻から専用ポンプを用いて直接空腸に持続投与する方法で2016年9月にレボドパ・カルビドパ水和物が発売された(関連記事〈※記事全文をご覧いただくためには「日経メディカル」の会員としてのログインが必要です〉)。

 

「進行期の運動合併症の治療薬の増量や変更に関する明確な指針がなかったため、中には効果が得られないにもかかわらず1日5~6回の薬物投与を継続している例もある」と指摘する順天堂大の服部信孝氏の写真。

 

服部氏によると、これまでは進行期の運動合併症の治療薬の増量や変更に関する明確な指針がなかったため、中には効果が得られないにもかかわらず1日5~6回の薬物投与を継続している例も。

 

そうしたケースでは、服薬の負担ゆえに患者が服用をやめて寝たきりになってしまうこともあった。

 

服部氏自身が診療を行う順天堂大学病院において、L-ドパを増加しても頻回に運動合併症が生じている場合は、デバイス療法を積極的に実施。

 

脳深部刺激療法は月5例、L-ドパ持続経腸療法では月2例のペースで新規導入しているという。

 

<掲載元>

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