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2018年07月23日

「薬で寝たきり」を回避せよ|リポート◎フレイルかな?と思ったら、まず処方薬の見直しを

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

小板橋律子=日経メディカル

 

フレイルとは、加齢によって予備能力が減り、ストレスに対する回復力も低下した状態のこと。いわゆる要介護や寝たきりの”予備軍”だ。

 

フレイル高齢者をいち早く見つけ出して介入し、寝たきりを回避すること。そして、薬剤性フレイルなど、医原性のフレイルを排除する取り組みがプライマリ・ケア医に求められている。

 


 

「薬の影響で寝たきりになってしまい、もう少しで終末期になりそうだった患者がいる」。在宅患者の訪問診療を多く手掛ける新田クリニック(東京都国立市)院長の新田國夫氏は、薬剤性フレイルの存在をそう証言する。

 

例えば、スルピリド(商品名ドグマチール他)による薬剤性パーキンソン症候群で寝たきり状態となり食事摂取もままならなくなった患者。スルピリドの中止を指導しただけで、みるみる回復し1人で散歩できるまで元気になったという。とはいえ、「介入がもう少し遅ければ、誤嚥性肺炎を生じて死亡していてもおかしくなかった」と新田氏は振り返る。

 

 

国の指針が処方見直しを要望

日経メディカルOnlineの医師会員を対象とした調査では、既に多くの医師がフレイル高齢者の処方を見直していた。しかし、医師が処方した薬が原因でフレイルを生じる高齢者はこのように後を絶たないようだ。

 

厚生労働省が今年5月に公表した「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」でも、薬剤起因性老年症候群が生じやすい薬剤を一覧表()で提示。「薬剤との関係が疑わしい症状・所見があれば、処方をチェックし、中止・減量をまず考慮」し、それが難しい場合には「より安全な薬剤への切り替えを検討」するよう求めている。

 

患者の様子が変化したり、これまでになかった症状が出現した場合に、その原因として、まず薬剤を疑う必要性を訴える。

 

薬剤起因性老年症候群と主な原因薬剤を表した表

表 薬剤起因性老年症候群と主な原因薬剤 (出典:「高齢者の医薬品適正使用の指針[総論編]」)

 

この指針を取りまとめた厚労省高齢者医薬品適正使用検討会の座長代理で、東京大学加齢医学教授の秋下雅弘氏は、「高齢者では薬剤に起因する老年症候群として、ふらつき・転倒、記憶障害、食欲低下などが生じやすい。これらは薬剤性のフレイルにつながりやすく、放置すればADLを低下させ、寝たきり状態を誘発する危険がある」と注意を喚起する。

 

「フレイルを疑った際は、薬剤を見直してほしい」と秋下氏は強調する。

 

 

 

75歳になったら処方見直しを

さらに秋下氏は「75歳以上の患者は予備能力が低下しており、かぜで寝込んだだけで体力が大幅に落ちる。フレイルかどうかにかかわらず、75歳になった時点で処方薬を見直してほしい」と語る。

 

日本老年医学会がまとめた「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」でも「75歳以上もしくは75歳未満でもフレイルの場合、あるいは要介護状態の高齢者」での処方見直しを推奨する。

 

その際に参考になるのが、日本老年医学会がこれまでに取りまとめた「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標2016」や「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」だ。

 

これらのガイドラインは、年齢や合併症の有無などで管理目標値を緩めている。秋下氏は、「管理目標値に合わせて処方薬を減らしていき、休薬してもその値を上回らないことが確認できれば、薬物療法の中止もあり得る」とアドバイスする。

 

さらに日本老年医学会は、2017年10月に公開した「高齢者脂質異常症診療ガイドライン2017」で「後期高齢者(75歳以上)の高LDLコレステロール(LDL-C)血症に対する脂質低下治療による一次予防効果は明らかでない」と明言し、注目を集めた。

 

もっともこの記載は「一次予防の場合、75歳以上での治療開始を支持するエビデンスがないという意味」と国立長寿医療研究センターの荒井氏は説明する。

 

「75歳までに処方を開始している患者では、75歳を過ぎても継続して構わない。個人的には、85歳ぐらいまでは処方を継続し、患者の状態を見ながら、85~90歳で中止することが多い」(荒井氏)。なお、二次予防のためのスタチンは、「原則、年齢に関係なく継続している」とも言う。

 

脂質異常症の高齢者においては、治療薬の調整以上に重要なのが、栄養指導の切り替えだ。荒井氏は「75歳以上の患者に対して脂肪やカロリー制限といった厳格な食事制限は慎重であるべき」と強調する。若い頃と同じ過栄養対策を続けていると、栄養不足からフレイルを生じてしまう危険性があるためだ。

 

 

減塩が原因の食欲低下も

高血圧患者に対する減塩指導の見直しも検討したい。高血圧診療で一般的な減塩指導が、高齢者においては食欲低下につながっているケースがあるからだ。

 

秋下氏は「加齢とともに食が細くなり味覚も鈍化するため、味が薄いと食欲が出なくなる」と指摘する。食欲が低下したフレイル高齢者では、「食べてもらうことを優先すべき。そのために必要であれば高血圧患者であっても味を濃くしてあげてほしい」と要望する。

 

名古屋大の葛谷氏も、「食欲低下で入院する高齢者に対して、塩分を増やした食事を提供するだけで食欲が戻ることがよくある」と語る。

 

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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