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2018年06月11日

あなたが防ぐ急性増悪《認知症周辺症状》|問題行動の背景を見える化、ケア計画を

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

増谷彩=日経メディカル

 

認知症に伴う行動・心理症状BPSD)の増悪に介護者が対応できなくなり、入院に移行するケースは多い。

 

これを防ぐため、病院の医師や看護師がかかりつけ医らに引き継ぐ「移行期ケア」や、ケア計画をチームで作成・共有できる「BPSDケアプログラム」が効果を上げている。

 


 

在宅医療を受ける患者の多くが有する認知症。国立長寿医療研究センター在宅連携医療部長の三浦久幸氏は、「自宅療養が継続できなくなる要因としてBPSDは大きい」と話す。

 

国立長寿医療研究センターの調査で、訪問看護師が在宅で対応に困ったBPSDの症状として最も多く挙げたのは昼夜逆転と易怒性だった(図1)。

 

いずれも介護者の負担感が大きい症状だ。他にも、徘徊と呼ばれる一人歩きや暴力、弄便などの症状が出現すると、家族による介護は困難を極める。

在宅で対応に困った認知症のBPSDの症状を表す図表

図1 在宅で対応に困った認知症のBPSDの症状(服部英幸編『在宅支援のための認知症BPSD対応ハンドブック』[ライフ・サイエンス社、2016年]より引用)

 

病院看護師らが地域に引き継ぎ

三浦氏は、「BPSDの背景には環境因子が関わっていることが多い」と指摘する。例えば、女性が認知症になった場合、介護をする夫や息子が患者を叱ったり怒るケースがしばしば見られるという。

 

その結果、患者は怖くて何も言えなくなり、BPSDとしてのうつ状態が出現し、認知機能がさらに低下するという悪循環が起こる。

 

三浦氏は、「家族によるケアの内容を含めた環境因子を評価してからでなければ、薬物治療を始めることもできない」と言う。

 

「認知症は薬物治療の前にケア環境などの背景因子に問題がないか評価すべき」と話す国立長寿医療研究センターの三浦久幸氏。

 

この環境因子の評価や整備で力を発揮するのが、日ごろから患者や家族を見ているかかりつけ医だ。しかし、かかりつけ医がBPSDに対処する方法を知らないままでは、一度入院したらそのまま退院できず長期入院になりかねない。

 

そこで国立長寿医療研究センターでは、入院対策として「移行期ケア」を行っている。認知症と診断した患者を地域に逆紹介する際、入院中に患者やその家族と連絡を取っていた同センターの看護師や医師が患者宅にまで出向き、かかりつけ医や訪問看護師のチームへの引き継ぎを実施する。

 

同センターの看護師らは、環境因子のアセスメントを行い、自宅に戻った患者のBPSDの状況を確認しつつ、入院中の患者の様子や、効果が得られたBPSDの対応法などをかかりつけ医チームに伝えている。

 

診療報酬上は「退院後訪問指導料」(580点、退院後1カ月以内に5回まで)を算定でき、3カ月以内には完全にかかりつけ医チームに引き継いでいる。

 

BPSDは「意味のある行動」

BPSDを認知症患者の不可解な問題行動としてではなく、意味のある行動として捉えるべきという考えは、国際的にも広まってきている。

 

認知機能の低下によって見当識や言語機能に障害を来し、極度の焦燥や恐怖、痛み、不快を感じる。その結果、叫んだり、頻回な電話、興奮、幻覚といった行動が現れる──というのが「意味のある行動」としての理解だ。

 

東京都医学総合研究所心の健康プロジェクトでプロジェクトリーダーを務める西田淳志氏は、「BPSDは意味のある行動」と強調する。

 

結果として現れた興奮や幻覚に対して抗精神病薬の投与や拘束などを行うのではなく、背景にある焦燥や恐怖の原因をケアするニーズ分析型アプローチが必要となる。

 

東京都医学総合研究所の西田淳志氏は、「行動の背景にある患者のニーズをくみ取りさえすればケアができるということ。BPSDは、ケアの質とQOLを向上させるチャンスと捉えるべき」と話す。

 

とはいえ、1人の患者に関わる介護者らがバラバラにケアを提供しても、期待する効果が得られているのかは分からない。それどころか、良かれと思って行ったケアが逆効果になっている場合さえある。

 

そこで東京都医学総合研究所は、スウェーデンで施設向けに開発され、国際的に高く評価されているプログラムを参考に、在宅を主な対象とした「BPSDケアプログラム」を開発した。

 

同プログラムでは、ケア改善のための手掛かりを発見するためのサポートをするオンラインシステムを使い、仮説に基づくシンプルなケア計画を策定してチームで一貫したケアを提供する。

 

一定期間が終了したら実施してきたケアを再評価し、効果が得られたケアだけを残して新たなケア計画を策定する──という手順で行う(図2)。

 

「BPSDケアプログラム」のオンラインシステム画面の写真

図2 「BPSDケアプログラム」のオンラインシステム画面(西田氏による)

 

オンラインシステムではまず、行動心理症状をNPI(Neuropsychiatric Inventory)スコアで評価する。「不安と興奮が強いタイプ」といったことが「見える化」されるため、介入の優先度を決めやすい。

 

次に、身体的要因や社会的要因など、最低限の背景要因を入力する。西田氏は、「右耳が聞こえにくいのに右側から話し掛けられるのが不快で怒っている場合もあるため、聴力に問題がないか問う項目もある」と言う。右耳の聴力低下に気付いている介護者と気付いていない介護者がいるので、そうした情報共有の場としても有用だ。

 

実際に、右耳の聴力が低下している患者に対し、介護者全員が左側から話し掛けるようにしただけで興奮が収まったケースもあった。

 

仮説を基にしたケア計画を共有

ステップ2で問題がなければ、ステップ3は、先ほど「見える化」された行動心理症状に介入するためのケア計画を話し合いながら立てていく。この際のポイントは、仮説を立てつつ、シンプルで短い文章にまとめることだ。

 

西田氏は、「本人のニーズを推測して仮説を立て、そこにアプローチするケア計画を立てる。介護者全員が同じ方向を向いてケアをするためにも、ケア計画の文言は分かりやすいことが大事」と話す。

 

その後はチームで一貫したケアを1カ月程度実行する。期間後には再度会議を開催し、NPIスコアを評価してケア計画の効果を確認する。NPIスコアが低下していれば効果があったとして継続、NPIスコアが上昇していれば効果がなかったり逆効果だったとして中止する。続けて新たな仮説を設定しケア計画を策定する。

 

例えば、認知症デイケアに通っていたNPIスコア28点の高齢男性A氏は、毎日昼食後に外出しようとしたり、興奮して暴れるため、通所が困難になりかけていた。同プログラムで、介護者らはまず「外に出たい」という仮説を立てた。スタッフが付き添って外出したが、興奮は収まらず、NPIスコアが悪化。

 

次に集中が必要な作業をお願いしたが、再度失敗した。その後、家族からの情報で自宅では食後に昼寝をしていたことが分かったため、「昼食後はベッドで横になる」というケア計画を立てたところ、外に出たがったり暴れるといったことはなくなり、NPIも10点にまで低下。認知症デイケアにも、安定して通えている。

 

同プログラムは東京都の3自治体で実施され、6カ月後のNPIスコアを比較するRCTが組まれた。その結果、同ケアプログラムを提供した介入群(141人)のNPIスコアの減少幅は、通常のケアを提供した対照群(142人)に比べて有意に大きかった(図3)。

 

西田氏は、「NPIスコアが7点低下すると、BPSDの重症度が『対応が難しいレベル』が『十分対応できるレベル』になり、かつ発生頻度も『毎日』から『週1日』になるくらいの効果がある。ここまで症状が軽減すれば、自宅療養を継続できる可能性がかなり高まる」と効果の意義を話す。

 

「BPSDケアプログラム」の実施により6カ月後の行動心理症状が大きく改善したことを表す図表

図3 「BPSDケアプログラム」の実施により6カ月後の行動心理症状は大きく改善

 

さらに西田氏は、「BPSD対策のために開発されたプログラムだが、結果的にケアの質も向上している。介護者のやりがいにもつながっているようだ」と言う。

 

同プログラムは今後2025年までには東京都の全市区町村で利用できるようになる予定だ。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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