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2018年06月21日

腕の中で患者さんを看取った衝撃。そして再生|がん看護専門看護師インタビュー

「患者さんに死にたいと言われたらどうするかー」。

この難しい問いについて、がん看護専門看護師の武見綾子さんにお伺いしています。

 

専門看護師というと、「めちゃめちゃデキる人」のイメージが強いですが、実はバーンアウトして現場を離れた過去もあるそう。でも、「今が一番看護が楽しい」という武見さんが、その理由も話してくださいました。

聞き手:白石弓夏(看護師)

 

がん看護専門看護師・武見綾子さんインタビュー【後編】

“ケアしてあげなきゃ”はケアじゃない

 

武見さんのプロフィール写真

<武見綾子さんプロフィール>

1991年 川崎市立井田病院 ICU・CCU 入職

1999年 同病院 緩和ケア病棟へ異動

2008年 日本赤十字看護大学 看護学研究科 基礎看護学 修士課程修了

2011年 がん看護専門看護師 取得

2018年6月現在、川崎市立井田病院 外科病棟師長

 

■INDEX

 

 

忘れられない看取り

川崎市立井田病院7階にある「ほっとサロンいだ」の風景

川崎市立井田病院 7階「ほっとサロンいだ」。患者さんがくつろげる場所として好評とのこと。

 

白石:前編では患者さんの「死にたい」への対応について6つのヒントをお話いただきました。

後編では、武見さんご自身の経験もさらに詳しく伺いたいと思います。

長年、終末期の患者さんへのケアに携わる中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

 

武見:多くの患者さんにお会いしましたが、特に衝撃が大きかった看取りがあります。

緩和ケア病棟に勤務して6年目、がん看護専門看護師資格取得のために、修士課程に進学する直前のことです。

 

患者さんは、40代の女性でした。

身寄りがない方で、今夜お看取りかもしれないというときも、連絡するご家族はいません。

それで、夜勤の私がついていることになったんです。

 

その晩、予想通り苦しさが強くなってベッドに寝ていられないほどだったので、椅子に座ってもらいました。

 

医師からは、苦しいときに頓用する薬剤の指示が出ていたので、19時半ごろに一度その薬を使いました。

そのときは楽になり、椅子に座ったまま就寝されました。

 

でも23時頃、また苦しみ出したんです。それで、もう一度その薬を使いました。

そのとき、呼吸が止まったんです。

 

ベッドの患者さんに話しかける武見さんの写真

 

椅子に座ったままだったので、支えてないと倒れてしまいます。

患者さんの意識がどんどん薄れるにつれて、ずっしりとした重さが腕に伝わってきていました。

 

そのまま、私が抱える中でその方は亡くなっていきました。

 

 

「私が殺してしまったかもしれない」という感覚

ナースステーションでPCに記録をする武見さんの写真

 

武見:「私が2回目に使った薬で、息が止まったかもしれない」と思いました。

すごく悩んで、何度も医師や先輩看護師に相談したんです。

でもみんな「いいんだよ、武見さんの判断は正しかった」と私に言いました。

 

誰に相談しても、納得がいかなくて。

みんな励ましてくれるんです。「そんなことないよ。あなたは間違ってないよ」って。

でも、私は「そんなことあるでしょ」ってずっと思ってました。

 

「私が殺してしまったんだ」という思いに取り憑かれるようになりました。

 

今思うと、そのときはバーンアウトしてたんですよね。

答えが得られなくて、自分でも理由がわからないイライラに苛まれて…。

先輩に、わざと答えられないような質問をして困らせたりしてました。

ナースステーションで笑顔でスタッフと会話をする武見さんの写真

 

 

「看護師が与えるものじゃない」という教え

 

武見:そのあと、がん看護専門看護師になるために修士課程に入学しました。

「私が殺してしまったかもしれない」という思いに対する納得できる答えを探したかったのも、理由の一つです。

 

修士課程で学んでよかったなと思った部分は、「ケアとは何か?」を教え込まれたところです。

ケアは「看護師が与えるものじゃない」って徹底的に教えられるんですよね。

相手(患者さん)がいて、相手の反応があるからこそケアが引き出されるんだと知りました。

それはすごく刺激的な経験でした。

 

何かをしてあげることがケアだと、それまでは思っていたんです。

でも授業を通して「相手(患者さん)に求められて、ケアが引き出されるだけなんだ」と思うようになりました。

「やってあげる」なんて簡単なものではないんだなって。

 

それがわかってから「患者さんの悩みは自分のことではない、一緒に考えることはするけど、最終的に決めるのは患者さん」と考えられるようになって、すごく楽になったんです。

 

それだけじゃないんですけど、修士課程の授業を通じて「これで大丈夫だ、もうバーンアウトしない」という思考の枠組みを獲得できたように思います。

 

 

抱えきれないこともある

「私が殺してしまったかもしれない」という思いについても、修士課程の授業で体験を話す機会に恵まれました。

そのとき、ある方が「それはすごく大変なことを経験したんだね」と言ってくれたんです。

 

それまでは、みんな「大丈夫だよ、武見さんの判断は間違ってないよ」と励まし、慰めようとしてくれていました。

その方が初めて「それは、すごく大変な経験だったね」と出来事の大きさを認めてくださったんです。

 

そこで「あぁ、大変なことだったんだ」「自分一人では抱えられないような大きな出来事だったんだ」と認識できるようになりました。

そう認識することによって、何年もかかったけど、肩の荷を下ろすことができました。

 

 

“ケアしてあげなきゃ”はケアじゃない

 

武見:前編でも少し話しましたけど、たとえば「死にたい」という患者さんの言葉に対して、何をするかは私(看護師)が決めることではないと思っています。

「私がやってあげなきゃ」って、そう思った時点で看護師としてのケアじゃなくなるというか…。

うまく言えないですけど、自分の中ではそう思っていて。

 

具体的にどうしたらいいのか、マニュアルが欲しいかもしれないけど、言葉なんてないです。

「死にたい」って言われたときに、そのときの自分ができることをすればいいだけです。

 

そこに呆然と立ち尽くしてもいいし、患者さんが泣いていて自分も泣きたかったら泣いたっていいし。

どうしても無理なとき、「ここにいるべきなのは自分じゃない」と思うときは逃げて助けを求めたっていいです。

 

 

“患者さんの反応”がケアの通知表

 

武見:そうやって何か行動したことによって、患者さんがどう感じたかはちゃんと確認しなきゃいけないです。

 

たとえば、逃げてしまって対応がよくなかったなと思ったら再度声をかけるなど、やり方はあると思います。

 

相手が喜んでくれたり意味があったと感じてくれたらケアだと思います。

“患者さんの反応”がケアの通知表ですね。

 

模範解答はないですが、「自分がやってあげなきゃ」という気持ちは抑え気味にした方がいいです。

「どうにもならない状況」「自分一人では抱えられない状況」もあるとわかっていないと、私のようにバーンアウトしてしまいます。

 

ただ、看護は「何もできない」という状況はないとも思っています。

医師が「もう治療はできません」と言った時でさえ、看護にはやることがあります。

 

患者さんの生活は続いていくわけだから、患者さんが求めたときに力を出せるのが看護です。

そのためのスキルを身につける。そこが魅力で、今一番看護が楽しいです。


満面の笑みで「いま一番看護が楽しい」と語る武見さんの写真

撮影・編集:坂本綾子(看護roo!編集部)

※編集部注:インタビュー中の事例は個人情報保護に十分配慮して記載しています。

 

インタビュー前編

終末期の看護で一番悩む患者さんからの「死にたい」。対応のヒント6つ

 

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