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2018年04月16日

「女性は土俵に上がって心肺蘇生しないで」!?| 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 

先日、何ともいえないニュースが流れました。

 

京都府舞鶴市で開催された大相撲の春巡業で、舞鶴市長の多々見良三氏が挨拶中に土俵上で倒れた件です。

 

土俵の写真

何人かが駆け寄ったもののまごついており、医療資格を持つ女性がいち早く胸骨圧迫を開始しました。さらに加勢する女性たち。

 

そのとき、会場には「女性は土俵から降りてください」というアナウンスが流れたようです。

 

アナウンス後も懸命に心肺蘇生を継続した女性たちは、待機していた警備員や消防職員がAEDを持って駆けつけて心肺蘇生を引き継いだ後、土俵から降ろされたようです。

 

市長はくも膜下出血であったということですが、意識は回復したということで、非常に喜ばしいと思いつつもモヤモヤした気持ちを抱かせる経過となっています。

 

土俵の上は女人禁制

人が倒れている→自分・周囲の安全確保→呼びかけに反応がない→人を集める→救急要請やAEDの準備・さらに人を集める→普通の呼吸をしていなければ胸骨圧迫開始。

 

これがBLS(Basic Life Support:1次救命処置)の流れです。当時の様子を観客が撮影した動画を見ると、女性らの対応はパーフェクトで、言うことありません。

 

でも相撲業界としては物言いしたかったようです。古来、土俵は神が宿る場所で神事も実際に行っていることから女人禁制とされてきました。それを踏襲して、女性は土俵から降りろとなったわけです。

 

なぜ女人禁制なのか、合理的な説明はおそらく誰もできないと思います。多分「慣例」としか言えないのではないでしょうか。

 

血液はケガレ?

日本で神様を崇める、いわゆる神道においては、生物の身体から離れて流出した血液をケガレとみなすことがありました。

 

「エホバの証人」の信者が輸血を避けるのは血液をケガレたものだと思っているからという言説をたまに見かけますが、エホバの証人をはじめ、敬虔(けいけん)なキリスト教徒は流出した血液をむしろ神聖なものと捉えていたのかもしれません。

 

聖書には「あなた方はいかなる肉なるものの血も食べてはならない。あらゆる肉なるものの魂はその血だからである(レビ記17:14)」という記述があります。

 

一方、神道では血液だけでなく、体から分離したものをケガレとみなす考え方があり、排泄物などもケガレと捉えられていました。

 

これが女人禁制につながるのは、月経中や産褥中の女性が流血しているからです。本来は怪我などで流血している男性は神域に入ることも禁じられていました。

 

現在でも土俵上で怪我人が出ると塩が撒かれます。今回も、市長が搬送されたあとに塩が撒かれたそうです。

 

これが女性に対する侮蔑のように映り大衆の怒りを買っていましたが、おそらくこれは女性のケガレを清めるというより、土俵上でけが人や病人が出たことを清める意味だったのでしょう。

 

つまらんアナウンスをする暇があったらこういうことをきちんとアナウンスすればいいのにと思ってしまいます。

 

さておき、流血している人がダメなだけで、女性を全員禁止する理由はどこにもありません。神事というなら、卑弥呼はもちろん、そもそも伊弉冊みたいな女神様はどないなるねんとツッコミどころ満載です。

 

また尿管結石で血尿がでていたり、痔や腸管出血などで血便を伴っていたりする男性は土俵に上がれなくなります。血尿・血便の人の土俵入りを禁止にせず、女性という理由だけ禁止するのは医師の目からみても(超個人的意見ですが)意味不明です。

 

例のアナウンスに対しては八角理事長が公式に謝罪しておりましたが、今後女性が土俵に上がることに対してどのように対応するのかしっかりと公式見解を出さなくては、謝罪が意味をなさないものとなるだろうなと僕は思います。

 

ケガレは大学時代に付け焼き刃のように学んだだけなので偉そうに言えた口ではありませんし、多方向から袋叩きに合いそうなので勝手な意見はこの辺で控えておきます。

 

くも膜下出血に心肺蘇生

ちなみに、今回倒れた市長はくも膜下出血ということでしたが、心停止に至るほどのくも膜下出血で元気に回復なんていうことがあるのか、心肺蘇生を施して悪化しないのかなどと疑問が湧くと思います。

 

端的に答えると、「元気に回復することはあるし、心肺蘇生がむしろ必要な場合がある」ということになります。

 

例えばこちらの文献の症例では初期波形はPEAでしたが独歩退院されています。急激な脳圧亢進から脳循環が途絶え、心停止に至ったのではないかと考察しています。

 

そのほか、くも膜下出血で心停止に至る原因として、交感神経が過緊張状態となりカテコラミンが大量に放出され、心筋障害から致死的不整脈を起こすという機序も考えられています。

 

実際、くも膜下出血なのに心電図では虚血性変化にしか見えないような変化を伴っていたり、心エコーで心筋梗塞時のようなasynergyを伴っていたりするような例をたびたび経験します。

 

最初から頭蓋内出血なのか心臓の問題なのかをはっきりさせることは困難ですから、BLSをしっかり迅速に行うことが重要です。

 

今回土俵に上がっていった女性たちの心肺蘇生がどこまで功を奏したかということは分かりませんが、この精神は必ず社会で引き継いで行かねばなりません。

 

救命の土俵に率先して上がった人を引きずり下ろすようなことは、とても悲しいことだと思います。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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コメント一覧(1)

1匿名2018年04月16日 10時14分

恐ろしい

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