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2018年04月12日

誰だって…|〈マンガ〉モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~【最終回】

患者さんと関われる短い時間。その中で金田さんが教えてくれたことは…。

(▶これまでのお話

 

マンガ・モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~

最終回 誰だって…

思いもよらないこと、それは金田さんが退してくれ所されるということでした。「リハビリのある所をすすめたら、渋々だけど納得たの。」「最後まで渋ってたよねー。ここが気に入っていたみたい。」と話をするケアマネさんと同僚の会話を聞きながら、『あまりにあっけない』と突然の出来事に驚き、私は立ち尽くしてしまいました。

 

退所になった経緯を聞きながら、「でも、次の施設でも同じトラブルを抱えそうな気がします…」と心配すると、ケアマネさんは、「初めて金田さんにお会いしたのは、別の施設だったんだけど、ぽつんとお一人でいらしたの。たった一人で、スタッフが声をかけることもなくね…。」と当時の事を説明しました。「嫌われてたんでしょうね…」とつぶやく同僚にあいづちをうちながら、「ここに来る時も、家族がなかなか本人と会わせなかったのは、会うと入所を断られると恐れてたのね…」と思い出して言いました。

 

「ここのスタッフは皆優しいから、怒鳴られても言い返さない人も多くて、誰かしら声をかけていたじゃない?」「でも次行く所はあまり評判がよくないらしいから、どうなるかしらね…。」という2人の話を聞いて、私は『金田さんは、ここにくる前の施設での対応で自尊心がズタズタになって、ああいった強硬な態度をとったのかも…』と考えながら、その場を離れて、金田さんの部屋へ向かいました。

 

久しぶりに会った金田さんに、「この頃あなた仕事に来ないのね。」と言われたので、「漫画の仕事が忙しくなってしまって、ここももう辞めるかもしれないんです。」と近況を説明しました。すると金田さんは、少し淋しそうに「…そうなの。…頑張ってね……。」と静かに言いました。その姿を見て、私は『モンスターだと思った金田さんも、家族を愛し、尊敬されれば嬉しいし、嫌われれば悲しい、放っておかれれば淋しい。そんな一人の人間であったのだ。』と思わずにいられませんでした。

 

『そのことがわかるとモンスターと私が、同じ地続きの人間なのだということがわかる…。』と感じるのでした。「色々と私も言わせてもらったけど、金田さんは人として大事にしてもらいたかっただけなんですよね。」と声をかけると、金田さんはじっと私を見て、「誰だってそうじゃない?」と言いました。

 

「誰だって人に大事にされたいわよ。そうでしょ?」と私をまっすぐ見つめて言う金田さんの言葉に深く納得するのでした。

 

私と金田さんの交流はこれでおしまいです。金田さんが退所して、その後の施設の空気は一変しました。どのスタッフも活気に満ち、皆生き生きしていると思ってしまうほど、笑顔が多く見られました。

 

スタッフがそうだと当然患者さんたちも穏やかに過ごせるようになり、施設の中は和らいだ空気に。ちょっとやそっとのワガママにも動じず対処できるスキルが身につき…幸か不幸か金田さんの教えは見事に実りあるものとなったのです。でもスタッフの中には、「今でも、金田さんに似た人を見かけると震えがくる…!!」ときっちりトラウマになってる人もいましたが…。ある日、スタッフで金田さんの思い出話になったとき、以前何もしていないのに中年男性という理由で怒鳴られたスタッフが、「でもあの人…」と話し始めました。

 

「頭はハッキリしててさ…でも手と足使えなくてさ…本当にキツかったと思うよ…相当キツいと思う。」と金田さんを気遣って言いました。すると他のスタッフも口々に「そうだね、本当だね。」と言う中、私は、『金田さんに聞かせたいわ…自分を理解してた人を拒否したりして…』と思いましたが、『違う、逆に男性の場合、弱い自分を見抜いてた人には向き合いたくなかったのかも…。』と考え直しますが、考えても分からないのでした。

 

今となっては事の真意はわからないけれど…モンスター患者については、深く考えさせられたと思いました。モンスター患者に対応するには…『まず、理解に努める。どうしてこういうことを言うのか、何を伝えたいのかを考える。それからこちら側ができることとできないことを分けてきっちり伝える。それでも解決できない場合は、上司から言ってもらい、場合によっては退所も…。そして自分が感じたことを相手に伝えることもこれからはしていこう…』と考えて、自分なりの対処法を以前相談にのっていただいた持田さんに報告しに行きました。

 

持田さんは笑顔で「なるほどねー!それで今日は何しに来たの?」と話を聞いてくれます。持田さんには、あれから何かと看護のお悩みを相談させていただき、毎回スルドイ指摘をされるので、「それは広田さんの思い込みだわ。」と打ちのめされるのですが、それはまた、いつかお話しできればいいなと思っています。(END)

(編集部注)

この物語は、事実を基にしたフィクションです。関係者に同意を得たうえで、プライバシー保護に十分配慮して創作しています。

 


【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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コメント一覧(16)

16あゆみ2018年11月16日 08時50分

ざまあ。優しくしてくれてた人もいたのに職員を傷つけ続けてたなんて、人として最低。拒否しても何したらいいかオススメしてくれると思ってる世間は本当に、間違ってる。

15名無しナース2018年10月19日 18時15分

持田さんは、金田さんに理想的な対応できる自信あったのかよ

14MR992018年05月03日 00時33分

連載で、とても大切なことを思い出させて頂きました。(自分も持田さんのような方と話してみたい)
作者様へ。連載お疲れ様でした。そして有難うございました。
後日談楽しみにお待ちしております。

13MR992018年05月03日 00時30分

「この相手は要求を聞き届けはしてくれないが、把握はしてくれている」とお互い分かっている状態に向かうことはできる。それが「あなたと私」がお互い対等で居る、「人と人」として在る、第一歩なのではと・・・。

12MR992018年05月03日 00時28分

確かに実際の現場では理想とする行動実践は難しい。いわゆるモンスターと呼ばれる相手の話を延々聴ける時間も人手の余裕もない。
けれどお互いの持論が違っていても、価値観とその差、を知ることはできるかと。

11彩千夢2018年04月17日 23時59分

人生の先輩で有ることには変わらないのだから尊重して傾聴しているが、危険な行為(御本人もふらつく歩行なのに、他者の♿️を押したり、手を組んで歩く動作)には、申し訳ないが心を鬼にして叱らせて頂いた。

10ちー2018年04月14日 12時52分

まず自分が人を大切にしなきゃいけないよね。
こんなに甘くない!っていうみんなの憤怒から、現場で起こる様々な理不尽に耐えてるんだなって、伝わってきました。

9りこ2018年04月13日 22時33分

たらい回しは自業自得…ほんとにそうなのかな もっと手はないかって考えてしまう

8ハルカ2018年04月13日 20時34分

理想の対応でダメなら強制退所って、それで済むなら何も困らないよ… 追い出す先すらみつからない暴言老人抱えてるところはどうすりゃいいのか

7匿名2018年04月13日 12時12分

広田さんが納得できたのなら、このときはこれで良かったのでは。持田さんは広田さんとだから、ああいう話し方だったのだろうし、別の人と話すなら、もっと違う関わりだったのではないかと思う。

6匿名2018年04月13日 07時01分

そのまま居たら、メンタルやられる人が出たんじゃない?
それでも持田さんは理想論かかげるのかなぁ。

5よしえ2018年04月12日 21時08分

理解に努めるというところまで納得できるけど、
ただ、持田さんは人にずばすば言って本当に作者のことを理解しているのか?と思ってしまう。

果たして傾聴といえるのか?(>.<)

4匿名2018年04月12日 19時37分

円満解決しなくてよかった。現場には結局答えがないし、世論から浴びせられる理想だけが一人歩きしてどうしようもないところにリアルを感じる。

3匿名2018年04月12日 19時07分

退所して距離を置けたから冷静に受け止められた、って部分が大きいと思う。そのまま入所してたらやっぱり辛さが勝ってどこかで潰れるんじゃないかな…

2匿名2018年04月12日 11時11分

なんかヤッパリねの展開。うちのモンスターも退去してくれないかしら?たらい回しは自業自得でしょ?ああはなりたくないね?

1匿名2018年04月12日 09時34分

ウーン

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