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2018年03月05日

終末期の倫理対応は「疑わしきは生命の利益に」が基本|第45回日本集中治療医学会学術集会

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

三和護=編集委員

 

回復するかもしれない患者の生命維持治療が手控えられる可能性がある限り、生命維持治療の中止は、まず治療を試みて状況が明らかになってから検討すべき――。

 

この「疑わしきは生命の利益に」を基本方針に掲げ、終末期対応に臨んでいる倫理コンサルタントチームECT)が大阪市立総合医療センターで稼働している。

 

同センターの有元秀樹氏が、第45回日本集中治療医学会学術集会(2月21~23日、千葉市)で、ECT活動の現状を報告した。

 

大阪市立総合医療センターの有元秀樹氏

終末期医療においては、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)などの治療方針決定の場面で、意思決定プロセスが課題となっている。

 

このため大阪市立総合医療センターは、終末期の対応に関する「生命維持治療の中止・不開始に関する指針(Allow Natural Death、ANDガイドライン)」を整備。

 

2014年10月から運用を開始し、同時に倫理コンサルテーションチーム(ECT)を発足させ、院内の終末期医療の倫理問題に対応している。

 

同センターがANDガイドラインを定めECTを発足させた理由には、大きく2つある。

 

1つは、医療技術が進歩して高齢者の医療、特に終末期医療の選択肢が増えている点。

 

もう1つは、同意能力がない人への対応は、現場の医師、医療機関に委ねられているのが現状、という認識だった。

 

このため、救急・集中治療における終末期医療に関するガイドラインや、厚生労働省の人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインなどを踏まえ、院内の指針としてANDガイドラインを制定した。

 

これは、患者の自然な死を見守る治療方針を定めたもので、「病状の回復が見込めず、生命維持治療がなければ死が避けられない」と診断された患者に限って、「生命維持治療の不開始、あるいは中止することを許容する対象」と定めている。

 

具体的には終末期医療の治療決定プロセスの条件を以下のように定めている。

 

(1)「病状の回復が見込めず、生命維持治療を永続しなければ死が避けられない」との診断にあたっては、原則として主治医を含む2人以上の医師によって判断する。

 

(2)権限と最終的な責任は主治医にあり、ECTはコンセンサス決定に助言を行う。

 

(3)ただし、主治医の独断で方針決定が行われないよう看護師やMSWなどの医療チームでのコンセンサスが必要である。

 

有元氏は同ガイドラインのポイントを(1)病院と現場の医療者が責任を共有するための指針である、(2)生命維持治療の中止と不開始を倫理的に同質の医療行為として扱う、(3)医療チーム、患者・家族の間で共有すべきコンセンサスの在り方について示している――の3点と指摘する。

 

そのガイドラインで柱に据えたのが「疑わしきは生命の利益に」という基本方針だ。

 

回復するかもしれない患者の生命維持治療が手控えられる可能性がある限り、生命維持治療の中止は、まず治療を試みて状況が明らかになってから検討するほうが、治療を差し控えるよりも望ましい場合もあり得るのではないか、という考えによる。

 

このガイドラインに沿って稼働しているのがECTだ。チームは、緩和ケア、救急部門、精神科などの医師や看護師と、MSW、医事課職員で構成し、院内の主治医、看護スタッフから要請があれば適宜対応している。

 

業務内容は、Jonsen4分割表を用いた倫理的な問題点の同定と分析が中心。その上で、方針決定プロセスを調整し、患者の公平性(権利と尊厳)の検討、ANDガイドラインの適切な運用の支援、医療チームの心理的負担の緩和などを手掛けている。

 

具体的には、(1)当事者の思いや声を確実に聴取する、(2)当事者らが自分たちの価値観を明確化できるように支援する、(3)倫理的に適切な意思決定者を同定し、支援する――などだ。

 

ECTへのコンサルタント件数は2014年の15件から2017年には28件へと増えてきている。この間の実績は85件で、月平均2.2件となっている。

 

内容別では、治療の開始・不開始関連が32%と多く、インフォームドコンセント関連が28%、患者の意思決定能力関連が19%、患者の権利と尊厳関連が14%だった。

 

ECTに生命維持治療の中止について相談があった事例は14例で,実際に中止を行った例も存在している。

 

同センターは、ECT活動の一環として、院内で使用される終末期の説明書と同意書の書式を統一している。

 

同意書である「急変時ケア計画同意書」 (表1)は、2014年から2017年9月までに521件の使用実績があった。人工呼吸器関連の中止に関連して、呼吸器内科での使用実績が109件と多くなっている。

 

急変時ケア計画同意書の項目を表す表

有元氏は、発足から3年余りでコンサルタント件数が月平均2.2件と増え、急変時ケア計画同意書の使用実績も2016年に204件、2017年10月までに196件と着実に増えてきていることから、「ECTは治療方針決定プロセスにおいて、開かれた決定機構として機能している」と結論している。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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コメント一覧(1)

1匿名2018年03月06日 17時51分

80以上の人に回復と言われても…

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