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2018年01月22日

心筋梗塞の25%は胸痛なしと知ってはいたが…|木川英の「救急クリニック24時」

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

木川 英(川越救急クリニック)

 

新年あけましておめでとうございます。

 

おかげさまでこのブログも4年目に入ることができました。

 

まさかここまで続くとは思ってもみませんでしたので、いつもお読みいただき支えてくださる全ての方に感謝を申し上げます。

 

ところで、少々時間を戻します。

 

私事ですが、年の瀬の12月27日に体の芯から冷えるような感覚に陥り、徐々に増悪してきました。発熱なし、咽頭痛なし、鼻汁なし、咳嗽なし、悪寒のような症状以外何もなし。

 

ムムム、これはと思い、自分自身で鼻に綿棒を突っ込み、インフルエンザキットへ……

 

見事にインフルエンザA型でした(右写真)。

 

インフルエンザ検査キッド(インフルエンザA型反応)の写真

 

院長を含め、色々なスタッフの協力で私の穴を埋めてもらい、年末年始の忙しい最中にお休みをいただきました。改めて、人は一人じゃ生きてゆけないことを学びました。

 

そんな非典型的な症状のインフルエンザ罹患中に考えていたのは、ある寒い日に自身が経験したある苦い症例のことでした。

 

教訓的症例でもあるので、もちろん、個人を特定できないよう時期や場所などは省き、情報量を絞って皆さんにお伝えしようと思います。

 

***

 

とある日に90歳代の女性が昼ごろにだるくなり、嘔吐しました。

 

その後自宅で安静にしていたところ徐々に回復しましたが、吐き気が残っているため、混雑している夜間外来を受診しました。

 

超高齢ですが、今まで健康で持病もなく、定期的に通院している病院もありませんでした。身の回りのこともご自身で何でもできていました。

 

 

木川 おなかは痛いですか?

患者 いいえ。

木川 下痢していますか?

患者 いいえ。

木川 寒気や頭痛はありますか?

患者 いいえ。 

木川 今はご気分が悪いのですか?

患者 ちょっとだけ気持ちが悪いです。

 

 

(既往歴もないし、症状が乏しい…かぜっぽくもないし…)

 

頭頸部、胸部、腹部、四肢の診察を一通りするも有意な所見なし。

 

 

木川 診察させていただいた感じですと今の段階では何とも言えないですが、かぜの症状とも違いますし、症状が改善傾向なので様子を診るのが良さそうです。

患者 はい、そうしてみます。

 

 

患者は帰宅した。

 

その後も慌ただしく、診察をこなし、深夜……。

 

 

救急隊 救急要請です。

木川 はい。

救急隊 CPA(心肺停止)患者です。

木川 詳細は?

救急隊 先ほど、そちらの夜間外来を受診された女性でして、帰宅後は特に問題なく過ごされていたようですが、数時間して嘔吐。その後は休んでいたようですが、深夜に意識消失したようです。我々が着いたときは、心静止でした。心肺蘇生中です。

木川 了解しました。搬送お願いいたします。

 

 

 

搬入後も心静止だったが、数分後「心拍再開しました!」との連絡。

 

心電図は下写真の通り、V1からV6までST上昇。

血糖値400mg/dL以上、肝胆道系酵素上昇、CK1000 U/L、CK-MB150 U/L、トロポニンT陽性の心電図

血糖値400mg/dL以上、肝胆道系酵素上昇、CK1000 U/L、CK-MB150 U/L、トロポニンT陽性。

 

(糖尿病に罹患している心筋梗塞だったのか……)

 

その後、再度心停止、死亡確認となった。

 

「心筋梗塞の25%は胸痛がないまたは非典型的な症状のために認識されないかもしれないと推定される」(Kannel WB, Abbott RD. Incidence and prognosis of unrecognized myocardial infarction. An update on the Framingham study. N Engl J Med. 1984;311:1144-7.

 

30年以上前からいわれてはいますが、いざその場面に直面すると(直面している自覚があるかどうかも問題ですが……)、なかなか動けないことが実感された事案でした。

 

いつこのようなことになるか分からないのが救急外来だと思いますので、年始に思いを新たに引き締める意味でご紹介いたしました。

 

皆様の診療のご参考になれば幸いです。

 

本年もよろしくお願いいたします。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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