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2017年11月20日

そのインスリンの使い方、大丈夫?|荒井有美の「今さら聞けない薬の話」

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

荒井 有美(北里大学病院医療の質・安全推進室)

 

***

 

今回は、インスリン製剤について取り上げます。

 

◆問題◆

次のうち、正しい記述はどれでしょう? 

【1】インスリンのバイアル製剤は全種類100単位/mLに統一されている

【2】インスリン1単位は1mLである

【3】バイアル型のインスリンには専用シリンジがある

 

 

 

 

◇答え◇

正解は 【1】 と 【3】 です!

 

解説

インスリンには、血糖値を下げる働きがあります。糖尿病の治療だけではなく、病態に応じて血糖値のコントロールが必要な場合にも使用されます。

 

どんな診療科でも使われる薬ですが、インスリンの過量投与により起こる低血糖は、脳を障害し、意識障害や昏睡、最悪の場合は死に至るため特に注意が必要です。

 

インスリンは、使い方を間違えると患者さんに致命的な影響を与えてしまう危険性があるため、特に安全管理に注意を要する「ハイリスク薬」とされています。

 

しかしその一方で、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業第43回報告書(2015年7月~9月)第44回報告書(2015年10月~12月)などでは、インスリンに関連した様々な事故・事例が報告されています。今年の10月16日には、医療安全情報No.131「インスリン単位の誤解(第2報)」が公開されました。

 

今回は、インスリンについて改めて確認していきましょう。

 

1.インスリンは「単位」で表現される

多くの医薬品は、使用量を「mg」や「mL」などで表しますが、インスリンは「単位」で表現します。これは一般的なモノの大きさの基準を示す言葉の「単位」とは別の意味で、英語表記だとUnit(U)と表現されます。

 

インスリンは、1921年にフレデリック・バンティングらによって発見され、医薬品として製造が開始されました。しかし製造当初のインスリンの力価は、ロット(製造会社が決めた量的な単位)や製造会社によってばらつきがあり、一定の血糖降下作用を得るのが難しかったそうです。

 

このため、1923年に世界保健機関(WHO)の前身の国際連盟保険機構で、インスリン1単位は「24時間絶食状態にした、健康な体重約2kgのウサギに、インスリンを注射して、3時間以内に痙攣を起こす血糖値(約45mg/dL)にまで下げ得る最少の量」と定義されました。

 

1925年には、世界初のインスリン国際標準品(1mg=8単位)が調製されました。その後、製造・精製技術が急速に進歩し、1958年には1mg=24単位、1987年にはヒトインスリン1mg=26単位が国際標準と定義されました。しかし、インスリンの成分表示は今も「単位」が世界的に使用されています。

 

現在、市販されているインスリンのバイアル製剤の力価は、100単位/mLに統一されています。つまり1単位は0.01mLです。※ペン型製剤では一部、100単位/mLではない製品もあります。

 

ちなみに「単位」という表示は、インスリンのような生物由来成分の医薬品に多く使われています。インターフェロンや成長ホルモン製剤などは「国際単位(IU:International Unit)」で表示されることもあります。

 

写真1 国際単位(IU)、「単位」の表示の例 (左)イントロンA注射用300(一般名インターフェロンアルファ-2b[遺伝子組換え])は「IU」で表示し、(右)ヘパリンNa注5千単位/5mL「モチダ」(ヘパリンナトリウム)は、「単位」で表示している。 

医師が薬を処方する際に、これらの「単位」を「U」や「IU」と略して記載することがあります。しかし手書きされた「U」と「IU」を、それぞれ「O」と「10」などと見誤る可能性が高いことから、省略せず「単位」と表記するようエラー防止対策が取られている場合もあります。

 

なお生物由来医薬品でも、GLP-1受容体作動薬のビクトーザ(リラグルチド[遺伝子組換え])のように、単位でなく「mg」で表示するものもあります。

 

2.インスリン製剤の種類はたくさん!名称も似ています!

インスリン製剤の剤形には、バイアル製剤、専用のペン型注射器(カートリッジ)にセットして使用するカートリッジ製剤、インスリン薬液と注入器が一体化したプレフィルド・キット製剤などがあります。

 

カートリッジ製剤やプレフィルド・キット製剤は、患者自身が注射できるような工夫がされており、身体状況などによって選択されます。

 

さらに、インスリンの作用時間によって次の5つに大きく分類されます。


(1)超速効型インスリン
(2)持効型溶解インスリン
(3)速効型インスリン
(4)中間型インスリン
(5)混合型インスリン

 

それぞれにたくさんの製品があるため、名称やバイアルの形状が似ていることによる取り違えが問題となりました。そこで厚生労働省は2008年、インスリン製剤の販売名命名の原則を作成し、各製薬会社に守るよう求めました。

 

■バイアル製剤
「ブランド名」+「製剤組成の情報(R、Nなど)」+「注」+「○○単位/mL」

 

■カートリッジ製剤・キット製剤
「ブランド名」+「製剤組成の情報(R、Nなど)+「注」+「容器の情報(カート、キットなど)」

 

2008年3月31日付薬食審査発第0331001号、薬食安発第0331001号より)


さらに製薬会社は、それぞれの製品を色で区別できるようにしています。例えば、ヒューマリン(インスリンヒト[遺伝子組換え])について、速効型「ヒューマリンR注100単位/mL」のラベルの色はオレンジです(写真2左)。一方、中間型「ヒューマリンN注100単位/mL」のラベルは黄緑色になっています(写真2右)。

 

日本糖尿病学会が、インスリン製剤の見本の一覧表を製剤ごと、作用時間別に掲載しているので、参考にしてください(リンク)。

 

 

写真2 ヒューマリン(インスリンヒト[遺伝子組換え])の色の違い (左)速効型の「ヒューマリンR注100単位/mL」、(右)中間型の「ヒューマリンN注100単位/mL」。

 

3.インスリンのバイアル製剤の危険因子

3-1.専用のシリンジがあります!

バイアル製剤を投与する際には、専用のシリンジ(注射器)があることを知っておきましょう。

 

専用シリンジは、目盛りが「mL」でなく「単位」になっている、容量が少ないなど、事故を防ぐための工夫がされています。

 

10月16日に公表された医療安全情報No.131「インスリン単位の誤解(第2報)」でも、専用シリンジを使用しなかったことで、インスリンを過量投与した事例が報告されており、改めて注意喚起されました。

 

専用シリンジを確実に使用するため、私の勤務先では、インスリンのバイアル製剤と専用シリンジを常に同じ場所に置いておく工夫をしています(写真3)。

 

ただし、インスリンのバイアル製剤は冷蔵庫で保管するので、専用シリンジも冷蔵庫で保管可能かどうかは、製造販売元に必ず確認しましょう。

 

また、専用シリンジには、針の太さや最小目盛りが1単位または2単位と、複数の規格が存在する場合があります。この取り違えにも注意しましょう。

 

写真3 バイアル製剤とインスリンバイアル専用のシリンジを同じ場所に置き、保管している。 

 

3-2.インスリンは分割使用が前提。使い切りではありません!

一般に、医薬品は1回で使用する量を目安に製剤化されています。そのため、1バイアルの半分を使用しても大きな問題になることはあまりありません。

 

ところが、インスリンやヘパリンなどは、分割使用することが前提になっています。そのため、1バイアルの半分も使用したら過量投与で大変なことになります。使用時は必ず量を確認しましょう。

 

4.インスリンは皮下注射が基本です

インスリンの投与経路は、皮下注射での投与が基本です。筋肉注射ではありませんから、皮下注射後はもまないようにします。持続皮下インスリン注入ポンプ療法(CSII)が行われることもあります。

 

なお、速効型インスリンは、筋肉注射や静脈注射が唯一可能なインスリン製剤です。高カロリー輸液にインスリンを混合したり、シリンジポンプを用いて持続静注を行うことがあります。ただし、このように例外的な使用ではミスが生じやすいので、いつも以上に気を付けましょう。

 

5.まとめ

インスリンは、ハイリスク薬の代表と言っても過言ではないくらい、多くのインシデントの原因となっており、取り扱いには十分な注意が必要となる薬です。日本医療機能評価機構や医薬品医療機器総合機構(PMDA)などから、多くの注意喚起の文書が発行されています。確認しましょう!

 

■PMDA

No.8「インスリンペン型注入器とその注射針(A型専用注射針)の組み合わせ使用について」2009年2月
No.23「インスリン注射器の取扱い時の注意について」2011年4月
No.37改訂版「インスリン注入器の取扱い時の注意について」2016年9月

 

■日本医療機構評価機構

医療安全情報No.6「インスリン単位の誤解」2007年5月
医療安全情報No.66「インスリン含量の誤認(第2報)」2012年5月
医療安全情報No.131「インスリン単位の誤解(第2報)」2017年10月

 

最後に、インスリン製剤の使用時の注意点をまとめました。ぜひこれらのポイントは覚えておいてください。

 

◇インスリン製剤使用のPOINT◇

 

(1)インスリンの量は「単位」で表します。バイアル製剤は全て、1mL=100単位(U)、1単位=0.01mLです。※ペン型製剤では一部、100単位/mLではない製品もあります。

 

(2)インスリン製剤は作用時間や製剤の種類が様々です。名称が類似しているものあり、指示を受ける際には、ブランド名+組成+剤形で特定しましょう。

 

(3)バイアル製剤はインスリンバイアル専用のシリンジを使いましょう。

 

(4)インスリンの投与経路は皮下注射が基本です。速効型インスリンは静注する場合もありますが、使用には十分気をつけましょう。

 

(5)中間型、混合型のインスリン製剤は、持続化剤の添加により白濁しています。注射の際には、ゆっくりと振って混和し、均一にしてから使用しましょう。

 

(6)検査などで食止め(絶食)をしないか確認しましょう。気付かず定時にインスリンを投与してしまうと、低血糖になる可能性があります。

 

■参考文献
1)山内豊明、荒井有美『医療安全 多職種でつくる患者安全をめざして』(南江堂、2015)
2)杉山良子、寺井美峰子、山元恵子『セーフティ・マネジメント入門』(ライフサポート社、2013)
3)古川裕之、相馬孝博、荒井有美『STOP!メディケーションエラー』(学研、2007)
4)古川裕之「ふるかわ先生の計算脳トレーニング」

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら

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コメント一覧(1)

1匿名2017年11月23日 19時02分

ホント!今さら聞けません!

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