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2017年09月25日

「看護師による死亡確認」は有用なのか?|おんびっと坪内の「訪問看護経営道場」

【日経メディカルAナーシング Pick up!】


坪内 紀子(おんびっと)

 

質問
今年6月「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」(案)が公表されて、2017年度中に研修を受けた看護師が医師の代理で死亡確認を行えるようになると知りました。

法人内のクリニックの院長から、「研修を受講してみてはどうか」と打診されたのですが、受講した方がよいのでしょうか。

 

私は新しい物好きなはずなのですが、どうも医療における新しいこと(特に、看護師の特定行為研修など権限移譲に関するものは……)にほとんど興味がわきません。今回は、完全に私の私見になりますがご回答します。

 

まず「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断ガイドライン」(案)がどんな内容なのか、少しご紹介しましょう。

 

この仕組みは、延命治療を希望していない終末期の患者さんが亡くなった時、医師が対面で死後診察を行うのに12時間以上かかるようなケースでは、研修を受けた看護師が代わりに患者の下で死亡確認をできるようになるというものです。

 

看護師が確認した情報は、スマートフォンなどを介して遠方にいる医師に伝え、医師が遠隔で死亡診断するという流れになります(関連記事:いよいよ始まる「看護師による死亡確認」)。

 

すでに、英国では、1990年代から医療や介護の現場で看護師による死亡確認が行われているようです。

 

ただ、今回のガイドライン案の要件を見ていて、いくつか疑問がわいてきました。まず最初に感じた疑問は「12時間も死後診察できない状況ってどれだけあるの?」という点です。


私は都会での生活が長いため、想像がつかずに疑問を持ってしまうのかもしれませんが……。例えばガイドライン案では、離島で患者が亡くなったが、船の便数が限られるため医師がすぐ駆け付けられないケースなどが、遠隔死亡診断の対象者として想定されています。

 

しかし、実際にこのようなケースがこれまでに果たしてどのくらいの頻度であったのでしょう。根拠になる数字は見当たりません。

次に疑問に思ったのが、「そもそも医師の常駐していない離島はどの程度あるのか?」という点です。

 

少し調べてみますと、離島の管轄官庁は国土交通省で、離島には無人離島と有人離島があり、2010年の国勢調査によると有人離島は日本国内に418島(無人離島は数千単位)。その中の高齢者比率は平均34%(中には50%を優に超えている有人離島もある)、医師が常駐していない離島は42%でした(出典:日本離島センター)。

 

ただ、こうした地域でも、12時間来られないケースとなると、かなり限られるのではないでしょうか。 また医師のいない島で人生の終わりを迎えることを希望する方たちは、特段スムーズな死亡診断を期待していない方も多いのではないかと想像します。

 

今回のガイドライン案では、医師が他の医療機関の日当直中ですぐ駆け付けられないケースなども対象者として想定されています。そんな場合も、死期が予見されている受け持ち患者がいるなら、何か緊急時の対応が必要になった場合には他の医師に頼むなど、事前にいろんな手が打てるのではないかと思ってしまいます。

 

研修費用は誰が出すの?

「対象者はほとんどいないのではないか」という点に加えて、手間やコスト面でも課題は多いと感じます。

 

「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断ガイドライン」(案)によると、遠隔での死亡診断にはICTを用いるので、その機材が双方(医師側・看護師側)に必要になります。実際にはスマートフォンやタブレット端末で対応するのでしょう。

 

ただ、先に述べたように、離島などで悪条件が重なり12時間以上死後診察してもらえないケースの実数すら不明な現状の中、1年に何度あるか分からない死亡確認のために訪問看護師が業務の合間をぬって研修を受けて体制を整えておくというのは、実はハードルが高いと感じます。

 

もちろん、医師が看取りに駆け付けられなくて本当に困っている一部の地域や介護施設では必要な取り組みかもしれませんが、広くあまねく整備すべき体制というわけではないかと思います。

 

スマートフォンくらいは私物で持っているにしても、看護師の研修費用、研修中の人件費は誰が保証してくれるのでしょうか。そして医師の代わりに訪問看護師が死亡確認のために訪問しても、収入面でのインセンティブがあるのかどうかは今のところ不明です。残されたご家族に何らかの形で請求されるようなら、それはそれで批判の対象になりかねません。

 

そもそもこの仕組みは、政府の規制改革推進会議が日本看護協会からの要望を受けてできたという経緯を考えてみると、なおさら、どこまで現場のニーズがあるものなのか、疑問を感じてしまいます。

 

訪問看護ステーションの管理者の中にはスタッフ全員に受講させたいとの意向を持っている方もいらっしゃるようですが、私はそうは考えません。

 

訪問看護の利用者のほとんどが今回の要件からずれている印象もありますし、そもそも私のステーションの場合、在宅でお看取りする場合、患者さんの死にまず気付くのは家族であるケースがほとんどです。ご家族から「〇時ごろ亡くなったようです」と電話をいただくことの方が多い私には、その後、一刻も早く訪問して死亡診断する必要性はあまり感じられません。

 

遠隔死亡診断で訪問看護の可能性が広がるという以前に、コスト面や需要についての数字的根拠がない、駆け付けられない12時間を埋めるための医師同士の連携体制構築が依然として進んでいないなど、まだまだ先に行うべき課題は山積しているように思います。

 

看護師はまず、本来の看護活動に特化して然るべきだと思います。質問者様のステーションのスタッフ数や忙しさにもよるとは思いますが、多くの在宅現場では訪問看護師が不足しておりその役割も十分に果たし切れていません。その状況下で新たな権限を次々と広げようとするだけでは、早晩、必要なケアに手が回らなくなってしまうのではないでしょうか。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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  • 1.夜間に十分な睡眠ができるように長時間作用型の睡眠薬を投与する。
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  • 3.夜間は一人で動くと危ないので身体抑制を行ってもよいか、本人とご家族に尋ねる。
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