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2017年09月18日

観光客の「ドクターヘリ呼んで」が無茶なワケ| 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 

観光客と救急医療

先日、沖縄県竹富島の診療所に勤める医師が、島の医療に関する興味深いFacebook投稿をしていました。投稿は、観光に訪れた人々が「ドクターヘリを呼べ」といった無理な要求をしてくるようになり、医療スタッフが疲弊しているという状況を訴えるものでした。

 

救急車の適性利用を呼びかけるポスターの画像。

(出典:東京消防庁ウェブサイト「救急車の適正利用のお願い!!」

 

日本全国、どこでも同じレベルの医療が受けられるかというと、そういうわけではないというのが現状です。これは残念なことですが、これから改善していくという態度と、今あるものを大切に使うという態度が必要ではないかと思います。離島の医療はギリギリのところで行われているところも少なくありません。

 

例えば、救急隊に救急搬送されるという、普通に考えれば当然と思われるようなことが担保されない地域もあります。

 

現地で生活されている方は事情をよく理解されており、消防庁のポスターを貼るまでもなく、よほどの事でなければ救急車を呼ぶいうことはないのではないかと思います。そうした理解もあってギリギリ何とかなっているという状況ですから、観光客が来て救急要請の閾値を下げてしまうと、本来医療が提供されるはずの地域住民に対するサービスの機会を奪うことにもなりかねません。

 

もちろん、観光に力を入れるのであれば、観光客の健康も担保できるような仕組みが必要だろうと思いますが、一朝一夕で整備できることではありません。観光に行くのであれば、その土地の医療事情を少し事前に調べておくなど、観光客側が多少の準備をしても良いのではないかと思います。

 

離島のヘリ事情

当院は、初期研修期間に屋久島での臨床を経験することになります。僕もお世話になりました。島では、医療をある程度その場で完結しなくてはなりませんが、無理な時はヘリコプターで鹿児島市内まで搬送する場面もあります。僕も何度か搬送に立ち会いました。

 

ヘリ搬送するときは、屋久島空港まで救急車で搬送して、そのままヘリに同乗。ヘリポートから市内の病院まで再度救急車で搬送して、転院の申し送りをして、船か飛行機で屋久島に戻る――というプロセスを踏みます。

 

午後に搬送になると屋久島に戻れず、そのまま市内に泊まって翌日戻るということもあります。その間、島から医師が1人消えることになります。月に2~3回ヘリ搬送の必要があったように思いますが、医療の維持ってなかなか大変だと実感したものです。

 

ヘリ搬送が減ったワケ

最近は研修医を管理する目的で再度屋久島と関わることになりました。研修内容を把握するために、何をどれだけ経験したかといったことを情報収集するのですが、研修医はあまり島外への搬送を経験していませんでした。

 

これは、2011年に鹿児島市で運用が始まったドクターヘリ制度のおかげです。鹿児島市立病院のフライトドクターを乗せてドクターヘリが飛んで来てくれるので、転院搬送のために付き添わなくて良くなったのだそうです。

 

(ゴールデンウイークや夏休みは、1日1000人を越える観光客が縄文杉登山に訪れるという屋久島。)

 

天候次第にはなりますが、日没前であればドクターヘリに患者さんの転送をお願いすることができるため、島から医師を減らすことなく患者さんに医療が担保されることとなりました(ヘリコプターは日中しか飛べないので、夜間緊急時は自衛隊の協力が不可欠です)。

 

さらに、2014年からはドクターヘリ要請がかぶったり多数傷病者が発生したりしたときにも困らないように、米盛病院(鹿児島市与次郎)のヘリで補完するような体制が整えられました。

 

このように、みなさまのおかげで、屋久島の人々は日々守られているのです。僕の友人や知人の中にもこの鹿児島のヘリ事業に関わっている人がいて、大変ありがたく思っています。個人的には、研修医の管理だけでなく、救急医としても再度島の医療に関わりたいと思っています。研修医と救急当直しようかな。

 

ドクターヘリは貴重な資源

さて、話を戻します。冒頭の竹富島を訪れたある観光客の中に、「お金はあるからヘリを呼べ」的なことを言う人もいた件。最近テレビドラマでも脚光を浴びているドクターヘリは、様々な人の不断の努力で成り立っているものですし、利用制限がかかることもあります。つまり、いつでもお願いできるものではないのです。

 

フライトドクターがおらず、島の医師が同乗しなければならない自衛隊ヘリで搬送ということになれば、それこそ島の医療資源は打撃を受けます。お金では解決できる問題ではありません(恒久的に医師を1人確保できるくらいの寄付金をするということであれば大歓迎でしょうけど……)。

 

賢く旅行して、お互い気持ちよく過ごせる環境を維持することも旅の重要なマナーかと思います。某消費者金融の言葉を借りるなら「マネーよりマナーを」です。旅行前の健康チェックや、渡航先での注意事項チェックなど、旅行者に対する適切なアドバイスをしたい! されたい!! 広めたい!!!という流れがますます加速すればいいなと思います。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら

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