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2017年09月15日

EPA外国人看護師と共にヒヤリハットを防ぐために、何ができるか?

この連載では、私がEPA外国人看護師と一緒に働いて感じたことやそのエピソードをお伝えし、より良い協働のために何が必要なのか、読者の皆さんと一緒に考えていければと思います。

【文:小林ゆう(看護師)】

 

外国人看護師と共に働く現場から

Vol.5 EPA外国人看護師と共にヒヤリハットを防ぐために、何ができるか?

 

 

 

日常会話は得意だけど、読み書きは苦手

現在、私が共に働いているフィリピン出身のマリアとホセは、日本語検定を受けているだけあり、日常会話にはさほど支障はありません。

 

しかし、口頭で理解ができても、漢字が読めなかったり書くことが苦手という状況があります。

そのため、ドクターの手書きカルテの解読や、看護記録の記載などには苦労しています。

 

書くことが苦手な彼らにとって「口頭の申し送りを聞きながらメモを取る」ということは至難の業です。

 

すべて平仮名で書くと、あとで読めなくなっていたり、書きとることが間に合わなかったりします。

 

そこで彼らは、すべてアルファベットでメモを取っています。

時々、英語変換していることもあります。

 

たとえば、

「佐藤さんは、14時に、CTの予約があります」

という申し送りがあった場合、彼らのメモには

「SATO CT 14」

と書かれます。

 

彼らのメモを覗くと、何が何だかわからないアルファベットがびっしりと書き込まれているのですが、平仮名で書くよりもわかりやすいのだそうです。

 

しかし実際には、聞き間違い・聞き洩らし・書き漏らしが多々あり、先輩看護師が申し送りの時にフォローしています。

 

看護師の国家試験問題で、外国人受験生用に漢字にはすべて平仮名で振り仮名が付けられるようになった理由も、良く分かります(脚注)

 

 

まさかのヒヤリハット

ある日の申し送りでの出来事。

ホセが夜勤者に申し送りしている最中、ナースコールがあり、フォローで付いていた看護師が少し席を外しました。

 

ホセ「サトウサン、アシタ MRI アリマス、14ジ デス」

ホセから申し送りを聞いた夜勤者は翌日、その旨を日勤者に送りました。

 

しかし、MRIの予約が入っていたのは「佐藤さん」ではなく「斎藤さん」でした。

佐藤さんは、同じ時間にCTの予約が入っていたのです。

 

同時刻の検査。入れ違えて案内したら大変なことです。

 

検査予約ノートには、正確な情報が書かれていたため、夜勤者の再確認で防ぐこともできたはずでした。

未確認のまま日勤者に申し送ったことも、問題でした。

 

検査の前にその日の担当が気づいたため、事なきを得ましたが、これはヒヤリハットです。

 

佐藤さんと斎藤さん

 

この名前を私たちが間違うことはあまりありませんが、漢字ではなくアルファベットで書いているため、混同してしまったようです。

 

「SATO」 「SAITO」

 

アルファベットで書くと、この2つはとても似ています。

このような患者が同じ部屋にいると、彼らの間違いが発生する確率が高くなるように思います。

 

 

現状を踏まえて、「同姓の患者さんは同じ部屋にしない」「似たような姓名の患者さんには注意喚起を行う」という策を講じています。

 

しかし、EPA看護師のために、佐藤さんと斎藤さんまでも分けていたら、部屋がいくつあっても足りなくなってしまいます。

 

 

「内線電話に出ない」という選択

時々、上記のような伝達ミスを起こしそうになっても、フォローの看護師が付くことで、病棟内で彼らは難なく仕事をしているようにみえます。

 

しかし、2人は決して内線電話に出ることはありません。

「出なくて良い」とされているわけではなく、自ら出ようとしないのです。

 

「正確に言葉を聞き取って、誰かに伝えること」に、自信がないのが理由のようです。

 

日勤帯では通常、病棟クラークがナースセンターにいるため、電話対応はマリアやホセがする必要はありません。

 

でも時々、電話が鳴りっぱなしで、走ってナースセンターに戻るとマリアかホセがいたりします。

処置の途中だったりすると、内心「おいおい、電話くらい出てくれよ」とぼやきそうにもなりますが…。

 

 

 

ヒヤリハットを共に防ぐために

「日本語は難しい」。これは、外国人の日本語教育においてよく言われることだと思います。

それを1年程度で取得して、医療の現場で使いこなすことは、並大抵のことではありません。

 

職場に来た当初より上達しているマリア、今もなお勉強中のホセも、ここ最近は日本語の伸び悩みの時期とでも言いましょうか、現状で満足している感じがみられます。

 

そして私たちも、EPA看護師がいることに慣れてくると、どうも伝言や申し送りが早口になりがちなので、気をつけなければなりません。

 

お互い慣れてきたときが、一番危険な時期かもしれません。

 

「日常会話に支障がない程度の能力」では不十分と、彼らが一番よくわかっていることでしょう。

 

そろそろ次のステップとして、内線電話の対応ができることを目標にしたいところです。

 

聞き間違い・言い間違いなどの単純なミスが事故につながることがないよう、スタッフ全員で、EPA看護師のさらなる成長を見守りたいと思います。

 

(脚注)

看護師国家試験では、外国人看護師候補生に対する特例的な措置は平成23年の第100回から始まりました。

第102回からは試験時間の延長やすべての漢字に振り仮名が振られています(厚生労働省 報道発表資料)。

 


【文】小林 ゆう

関東在住。総合病院で勤務する傍ら、看護師ライターとして執筆活動をしている。子育てに奮闘しながらも趣味のライブやダイビングに熱を注ぐ40代。

 

【イラスト】明(みん)

看護師・漫画家。沖縄県出身。大学卒業後、看護師の仕事の傍らマンガを描き始める。異世界の医療をファンタジックに描いたマンガ『LICHT-リヒト』1~3巻(小学館クリエイティブ)が好評発売中。趣味は合気道。

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