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2017年08月12日

パリの小児病院が実現!世界で初めて鎌状赤血球症の根本的治療に成功

鎌状赤血球症は、重症になると、3、4週間の間隔で輸血、脾臓の摘出などが必要となり、生涯その症状と闘わなければならないとされている疾患のひとつです。

 

日本においても特定疾患に定められています。しかし2017年3月、パリのネッカー小児病院にて鎌状赤血球症の根本的治療に初めて成功したと発表されました。詳しい内容をBBCニュースの報道からご紹介します。

 

 

鎌状赤血球とは

鎌状赤血球症(Sickle Cell Disease; SCD)は、遺伝性疾患であり、特にアフリカやアジアの一部地域に患者が多いといわれています。染色体異常によって赤血球が鎌状や三日月状に変形し、これに伴って赤血球は正常な機能を発揮できなくなります。主な症状としては、貧血、多血症、倦怠感、頭痛などで、前述した通り、重症になると、3、4週間の間隔で輸血、脾臓の摘出などが必要となります。また、全身の疼痛による慢性的な消耗状態、骨の奇形、発育遅延などの症状も見られます。これまで鎌状赤血球の根本的治療としては、骨髄移植が行われてきました。

 

新しい治療法

今回パリの小児病院で成功した鎌状赤血球症の根本的治療法は、13歳の少年に対して行われた遺伝子治療です。まず「LentiGlobin BB305」という種類のベクター(核酸分子)を用いて、正常なベータグロビンの遺伝子を取り込んだベクターを患者の造血幹細胞と接触させます。これにより、欠損した異常な遺伝子を修正し、その後修正した造血幹細胞を血管経由で患者に戻すという方法が行われました。

 

パリ大学のフィリップ・レボルチェ教授は、BBCのウェブサイトのインタビューに対して「今回の治療を受けた患者は、その後、疼痛をはじめとする鎌状赤血球症の症状は認められず、輸血や入院を全く必要としない状態に至っており、私たちは治療の成果に満足しています」と回答しています。この13歳の少年の以降、ほかの患者に対しても同様の治療が実施されていますが、ほかのケースの治療結果についてはまだ報告はされていません。

 

レボルチェ教授は、今回の治療を「完治」と認識することには慎重になるべきであると加えています。その理由としては、今回が臨床試験の初めてのケースであり、明らかに臨床試験の数が不足しているためです。また、鎌状赤血球症は遺伝性疾患であり、この治療が及ぼす影響についてはまだ調査できていないためです。オックスフォード大学遺伝子医療研究グループのデボラ・ギル博士も「今回の治療の成功は遺伝子治療の大きな進歩を示しますが、治療を受ける患者の人生にまで大きな影響を及ぼすことを忘れてはならない」と言います。

 

今後の課題

現在治療を受けた13歳の少年は15か月間、鎌状赤血球症の症状は見られず、再発の兆候もなく、医療的な処置や治療を全く必要としていないそうです。この少年は、今回の治療を受けるまで、毎月輸血を受けるために入院を必要とし、脾臓も摘出していました。今回の治療法は、鎌状赤血球症の患者にとって大きな希望を抱かせる夢の治療法です。

 

しかし、この治療法を展開していくには大きな課題があります。レボルチェ教授は、この治療法は遺伝子治療であるため、より慎重な評価が必要になること、臨床試験も数多く重ねなければならないこと、そして、アフリカやアジアの一部地域などで患者が多いとされる疾患のため、治療法を提供できるのは最先端の医療技術と施設がある地域に限定されてしまうことなどを挙げています。

 

日本の患者は、アフリカなどの地域と比べると少数であり、軽症であることが多いといわれていますが、患者にとっては苦痛の大きい疾患には違いありません。世界に誇る医療技術を多く展開している日本では、もしかすると早い段階で今回ご紹介した治療法が導入される可能性があるのではないでしょうか。今後の新しい治療法の情報に、ぜひ注目してみてください。

 

(文):A.Brunner

 

(参考):

Teenager's sickle cell reversed with world-first therapy(BBC)

鎌状赤血球症の遺伝子治療で成果(KSM)

13鎌状赤血球症(小児慢性特定疾病情報センター)

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