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2017年06月26日

高齢者肺炎にも緩和ケアの概念を|特集◎その肺炎 治す? 治さない?《インタビュー》

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

日本呼吸器学会は4月に「成人肺炎診療ガイドライン2017」を発表。誤嚥を繰り返したり終末期にある高齢者の肺炎に対し、「積極的な治療を差し控える」選択肢を明示した。

ガイドライン作成委員長を務めた河野氏は、「高齢者の肺炎は即治療ではなく、本人の意思やQOLを優先して判断すべきだ」と話す。

 

長崎大学理事・副学長 河野茂氏

 

こうの しげる氏

こうの しげる氏
1950年長崎県生まれ。74年長崎大学医学部卒業後、同大学第二内科入局。80年まで同大学大学院在学。81年米ニューメキシコ州立大学医学部研究講師。佐世保市立総合病院、長崎市立病院成人病センターを経て85年長崎大学附属病院助手、90年講師。96年長崎大学教授、2006年同大学医学部長、09年理事・附属病院病院長。14年から現職。

 

聞き手:本誌編集部長・大滝 隆行

 

── 一般の人だけでなく、医師の中にも「肺炎は治療をすれば治る病気」と考えている人が多いと思うのですが、高齢者の肺炎に限っては違うと?

 

違います。インフルエンザ肺炎やレジオネラ肺炎など急速に重篤化しやすい肺炎もあるので、若年者でも薬で100%治るわけではありませんが戦後、社会が豊かになって国民の栄養状態や衛生状態が改善し、ペニシリンを代表とする抗菌薬が使用され始めたことで、肺炎による死亡率は大幅に減少し、一般に「肺炎は治る病気」と見なされるようになりました。

 

しかし残念なことに、1980年代から肺炎による死亡数は上昇に転じ、2011年には脳血管疾患を抜いて日本人の死因の3位まで増加し、抗菌薬がなかった1900年ごろの死亡数とほとんど変わらなくなってきました。

 

その肺炎死亡者の96%が65歳以上の高齢者です。超高齢社会という社会構造そのものが肺炎による死亡者数増加の主因であると推測できます。高齢者の肺炎は治療をしても治らないことが多い。だから死因の3位になっている。この認識はやっぱり一般の方とギャップがあると思います。

 

ただ、高齢の肺炎でも肺炎に変わりないのだから薬で治るはずだという認識もある意味、事実です。高齢者の肺炎であっても治療に反応しますから。しかし、再び肺炎を起こします。

 

── なるほど。抗菌薬は一旦は効くんですね。ただそれは短期的な効果でしかない。そして肺炎はすぐ再発し、患者は再度病院を受診し治療を受ける。

 

何度も何度も。そのたびに本人は苦しさを我慢しながら病院に行き待合室で待たされ、入院して慣れないベッドに寝かされ点滴をつながれ、食事も取れない。一方、医療者側は患者を肺炎で死なせてはいけないと考え、この抗菌薬で効かなければ違う系統の抗菌薬を、とあらゆる手を尽くして治療を行います。その間、患者はきついだけ、苦しいだけ。そして多くの方が治療のかいなく、病室で亡くなります。

 

従って今回のガイドラインでは、高齢者の院内肺炎や医療・介護関連肺炎で疾患終末期や老衰状態にある、または誤嚥性肺炎を繰り返すリスクがあると判断した場合、患者本人や家族とよく相談した上で、個人の意思やQOLを尊重した患者中心の治療、ケアを行うことを推奨しました。 

 

── 従来の医療・介護関連肺炎診療ガイドラインになかった誤嚥性肺炎のリスク評価を、高齢者肺炎を治療するか否かの判断基準に取り入れたことも重要なポイントだと思うのですが。 

 

写真:諸石 信

 

そうですね。医療・介護制度が異なる海外ではあまり多くないのですが、我が国では施設や自宅で介護を受けている認知症や脳卒中などの基礎疾患を持つ方が誤嚥性肺炎を起こすケースがよく見られます。実際、高齢者の肺炎では加齢に伴って誤嚥性肺炎の割合が極めて高くなるというデータがあります(Teramoto S et al. J Am Geriatr Soc. 2008;56:577-9.)。

 

脳血管障害などを有し嚥下機能が低下した高齢者では誤嚥が反復して起こるため、肺炎が抗菌薬投与で一旦軽快しても再燃・再発を繰り返し、耐性菌感染のリスクも増大します。

 

こうした高齢者の誤嚥性肺炎は現代の医学では根治不可能であり、悪性腫瘍でなくとも終末期の状態に等しい状況が珍しくありません。医学的に重症な肺炎であっても本人への負担が大きい人工呼吸器装着やICU管理、強力な抗菌薬投与は必要でない場合もあります。従って、高齢者肺炎の治療選択では誤嚥の問題を前面に出すべきだということになりました。

 

癌の領域では緩和ケアといわれる医療行為が普及しています。肺炎診療においても、そのような状況にある場合は緩和的なケアを考えてもいいのではないかというのが今回の1つの提案です。

 

ただ、「疾患終末期」とはどの時点からなのか、「繰り返す誤嚥」とはどれくらいの頻度を指すかなど、その辺りの日本人でのエビデンスはまだ出ていません。ですので、今回の提案を現場の先生方に自分なりに解釈してもらい、こういった基準でやってみてはどうだろうかと考えるきっかけになればと思っています。 

 

── エビデンスを一律に当てはめるのではなく状況に応じて判断すべきと。

 

高齢者の肺炎には高齢者特有の様々な病態や問題が加わってきており、やはりエビデンスだけではうまくいかないのが現状です。そこは主治医1人が判断するのではなく、厚生労働省が推奨しているように、医師だけでなく看護師をはじめ多職種のチームで判断するのがよいと思います。1人だけで判断するとなると偏った判断になりかねませんし、振り返って見て、それはまずかったんじゃないのということにもなりかねませんから。

 

例えば、どの時点で「疾患終末期」と判断するか。食事を自分で取れなくなり何度もむせるようになったとか、癌など重大な基礎疾患が悪化し余命が限られた状況にあるとか、患者本人や家族、医療者にそれぞれ考え方があるしょう。

 

日ごろ患者さんを診ていて、最近急に元気がなくなったとか、精神状態も含めてチームで診療・ケアをどうしていくか決めていくということが今後、肺炎に限らずあらゆる高齢者疾患の診療・ケアで重要になってくるだろうと思っています。 

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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