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2017年03月06日

日本の常識は通用しないと肝に銘じよ◆リポート◎外国人患者とのトラブルはこう防ぐ(1)

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

訪日中の外国人が診察を受けた後に診療費を支払わずに帰国してしまったり、他人の保険証を使って受診するといった、外国人患者をめぐるトラブルが全国でしばしば報告されるようになってきた。こうしたトラブルを未然に防ぐために、各地で発生しているトラブルの実例と、各医療機関での対策をリポートする。

 

加納 亜子=日経メディカル

 

2015年2月某日、駅の階段から転落し、下肢の複雑骨折を生じた中国人患者が搬送された。すぐに緊急手術を実施し、即時入院となった。日本に滞在しており保険証を持っていると患者は主張していた。A病院のスタッフが繰り返し保険資格の確認を求めたものの、患者は保険証の提示を拒否。支払い能力が確認できないため、病棟看護師は患者の行動に注意を払っていた。

 

退院が近づいたある日、スタッフが目を離したすきに患者は逃走。その時点で、未収金額は検査・治療・入院費合計で170万円に上っていた。

 

未収金を回収するため、来院時に本人が書いた連絡先にスタッフが電話するが、連絡は付かず。次の手として、救急隊に搬送記録を確認したところ、患者の友人の電話番号が2つ登録されていた。

 

警察にこの電話番号を渡し、「入院の必要な患者の安全を確保したい」と連絡を要請。警察が患者友人に連絡したのと機を同じくして患者が来院し、未収金170万円を回収することができた――。

 

外国人患者の増加に伴い求められるトラブル対応

この事例ではなんとか未収金を回収できたが、経済的な事情で処置後や退院時に支払いが滞るケースや、日本の医療制度や診療の流れを知らないゆえのトラブルが相次いでいる。

 

「訪日・在留外国人は右肩上がりで増えている。今後、外国人の受診患者も増加することを前提に、トラブルが起こらないよう事前に対策を講じるべき」と指摘するのは東京大学病院国際診療部副部長の山田秀臣氏だ。東京大学病院では、一昨年に訪れた外国人の初診患者の数は1年間で約2000人。これは初診患者全体の約4%、救急診療では約8%に相当する。

 

東京大学病院の山田秀臣氏

「外国人患者がさらに増える前にスムーズに対応できる仕組み作りが必要」と話す東京大学病院の山田秀臣氏。

 

「外国人診療においては、しばしば未収金が問題になる。日本の医療システムは支払いが滞ることを想定した設計がされていない。外国人患者を受け入れるには、文化の違いを念頭に置き、確実に医療費を回収できる仕組みを作り、スタッフ間で対応方法を共有しておくのが望ましい」とAMDA国際医療情報センター理事長の小林米幸氏(小林国際クリニック[神奈川県大和市]院長)は指摘する。

 

日本の常識は外国人の非常識

そもそも日本人と外国人では、医療機関を受診することについての「常識」が異なる。極端な例では、退院時に診療費を請求すると、「体調が悪いときにはそれを治してほしいと思うからこそ診察や検査、治療に掛かる費用を支払ってもよいと思う。治療費を請求するのなら、治療を受ける前にすべきだ。今は症状がなくて困っていないのに、なぜ支払わなければならないのか」と強弁する外国人患者も。一方で、「無料で診療をしてくれる医療機関を紹介してほしい」と相談を持ち掛けてくる外国人患者も実在するという。 

 

「ある病院で、患者が支払いに関する誓約書に実際とは異なる住所などを記載していたものの、その内容を写真付きの身分証明書と照合していなかったために気付かず、結果として患者と連絡が取れなくなり、未収金が増加してしまったことがある。こうした事例は1つの医療機関だけで起きている問題ではない」。NTT東日本関東病院(東京都品川区)医療連携室外国人向け医療コーディネーターの海老原功氏は、過去の勤務先での失敗を踏まえ、こうコメントする。

 

NTT東日本関東病院の海老原功氏。

「未払いで済んだ体験談は外国人の中で広まりやすい」と話すNTT東日本関東病院の海老原功氏。

 

未収金を含め、文化・習慣の異なる外国人患者とのトラブルを避けるには、主に以下の3つのポイントを押さえた対応が求められる。(1)本人確認の徹底、(2)受付から会計をするまでの診療の流れの説明や診療・治療に掛かる概算費用の提示。そして、これらを的確に行うための(3)通訳の確保だ。上記の具体的な方法を、2回に分けて解説していく。

 

【1】本人確認は顔写真込みの身分証明書で

まず第一に、「外国人患者が来院した場合には在留カードやパスポートなど、顔写真と名前が併記されているものを使って本人確認をし、控えを取っておくことが重要」と主張するのは海老原氏だ(表1)。 

 

表1 確認すべき患者の身分証明

確認すべき患者の身分証明

    提供:海老原氏

 

本人確認をする場合、多くの医療機関は住所や名前などの記載を求め、その後に保険証などの身分証明書の提示を要求する。だが、保険証のように顔写真が含まれていないものを提示された場合、本当に本人のものかどうかの確認はできない。

 

住民登録を済ませている日本人や在留外国人であれば、提示された身分証を元に自治体や勤務先に問い合わせることができるが、特に短期滞在の外国人では来院時に正しい情報を取得できていなければ、処置によるトラブルが起きた場合や支払いが滞った場合に連絡を取ることが難しくなる。また、公的な身分証明書の控えがなければ、大使館などに連絡を取る必要が生じた場合に対応に困ることになる。

 

特に最近は、外国人患者による保険証の使い回しが横行しているという指摘もある。「他人の保険証を使っている患者に、過去の診療録に基づいて診療してしまうと、アレルギー疾患の見落としや薬の取り違え、異型輸血などが起こりかねない。安全面の確保のためにも顔と名前を一致させておくことが大切」と国立国際医療研究センター国際診療部の堀成美氏は強調する。実際に、保険証に記載された年齢と見た目の年齢が明らかに異なる患者が来院したケースや、診療時に生年月日を医師が尋ねたところ、保険証に記載された生年月日を言えなかったケースなどが報告されている。 

 

在留外国人の本人確認には在留カードが有用だ。このカードには、氏名や生年月日、性別や国籍・地域といった情報に加え、在留資格や在留期間が記載されている。これは就労や留学などの目的で合法的に日本に在留する資格があることを示す証明書で、在留外国人はこれを携帯する義務がある(写真1)。それ以外の外国人患者であれば、パスポートで確認するようにしたい。 

 

写真1 在留カード

在留カード

    出典:外務省ウェブサイト

 

確認の際は、「海外で日本人がホテルに宿泊する際の手続きと同じように、持参した在留カードかパスポート、保険証、そして概算額を現金で持っていない場合には支払いを担保するためにクレジットカードのコピーを取っておくとよい」と堀氏。もちろん、本人の許可を取った上でコピーをする。こうした手順を踏むことで、「医療費の支払いを改めて念押しする効果がある」という。

 

また、「患者から国民健康保険証を提示された場合には念のため、保険料の滞納がないかを確認する必要がある」と堀氏。保険料の滞納が続いている患者では、高額療養費などの保険給付が差し止められ、限度額申請ができない場合があるからだ。 

 

本人確認に応じなければ応召義務違反に当たらず?

本人確認の徹底は、国際診療を積極的に実施する医療機関が認定を受ける国際的な医療施設評価認証機関のJCI(Joint Commission International)が、国際医療安全基準の観点から強く求めている事項でもある。

 

「本人確認が適切に行われなければ、患者の取り違えなど医療安全の観点でリスクが生じてしまう。そのため、在留カードやパスポートなどを持参していないと話す患者には、患者と共に訪日している親族や友人などに持参してきてもらうよう求めたり、再度来院する際に持参するよう伝えている」と堀氏は話す。

 

繰り返し本人確認書類の提示を求めても拒否をし続けたり、「お金がないけれど診療をしてほしい」と不払いを明言している患者などでは医師法第19条の応召義務は生じないと判断し、診療を拒否する医療機関も少なくないようだ。

 

ただし、放置することで生命や健康に重大な危険が及ぶ可能性が高い場合や、患者が繰り返し治療を求めたものの医療機関が全く対応しない場合には、医師法における処分の対象になる可能性がある。「慢性的な疾患の治療を断った場合には、写真付きの身分証持参での再来院は快く認めることや、緊急時には救急車を呼んでほしいと伝えるといった対応が求められる」と海老原氏は話している。 
 

 

<掲載元>

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コメント一覧(1)

1匿名2017年03月06日 20時37分

受け入れるのも大変だね

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