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2016年12月07日

人員不足で小児診療を停止した英国の病院に賛否両論

日本のみならず世界各地で看護スタッフの人員不足が問題となっています。

 

人員不足が原因で患者さんへのケアの安全確保ができないことを理由に、英国のスタッフォード郡の病院が一部病棟において18歳未満の患者さんの診療を停止することに至ったというニュースを英BBCが伝え、衝撃を与えています。

 

 

18歳未満の小児の診療を停止せざるを得ない理由

スタッフォードの郡病院は、2005年から2008年の間の患者さんの死亡率が、予測されていた水準よりも高い状況であったことを公聴会で公表しています。また、病院のスタッフによる虐待が問題となり、患者さんが転院せざるを得ないケースもあったことを報告。290件もの「根本的な改革」を促す勧告がなされたと、2010~2011年の品質管理の責任者だったロバート・フランシス氏は指摘しています。

 

当時の病院を経営していた組織は解散され、2014年11月に新しい経営組織が設立されました。しかし、翌年2015年7月に新しい経営組織も「ケアの質委員会」(CQC:Care Quality Commission)から「改善が必要」と言い渡されていました。にもかかわらず、経営組織は政府の目標値に達することができず、最高で900万ポンド(約11億8,300万円)の罰金を課せられる可能性があります。現在も経営状態が非常に不安定であることが明らかになっています。

 

病院の判断に対して看護師長兼副最高責任者のリズ・リックス氏は「短期間で小児の診療停止という難しい判断を下すことになりました。この判断は、地域の子育て世代の家族には大きな影響を与え、注目を集める話題となることでしょう。しかし、1日約30人もの小児患者を受け入れる立場としては、安全が確保されていない状況でケアを提供し続けることはできません」と説明しました。

 

スタッフォード病院の判断への反響

18歳未満の小児の診療を停止せざるを得ない状況に追い込まれたスタッフォード病院について内外からさまざまな反響や評価がなされています。病院側のスタッフは、「安全が確保できるとは言い切れないため、やむを得ない」と医療上の責任問題を強調する一方、地域の議員は、「病院の判断に失望」「できる限り早い段階での再開に努めるべき」と反応はさまざまです。

 

病院の支援者の1人であるシェリル・ポーターさんは「病棟が閉鎖される数週間前にも家族が利用しましたが、そのときには病院の対応に問題点はないように見えました」と前置きして、「病院の判断は、子どもたちから適切な診療を受ける機会を奪うことになります。他の病院に小児科診療の機能が移されることがあってはなりません」と述べました。

 

診療停止の対応について

運動組織の北スタフォードシャー・ヘルスウオッチに所属するイアン・サイム氏は「小児科医不足を理由に小児診療を停止することは、正当な行為」であると言います。しかし、この措置により、近隣の他の病院に対して患者さんの需要の波を生み出し、周囲の病院の安定した経営へ影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。サイム氏はこの地域の住民が診療停止に対して不安や恐れを抱くことに共感を示していますが、「患者ケアについて安全確保が第一である」ことを強調します。

 

英国の無料医療制度「国民保険サービス(NHS)」で運営される北英国中部の大学病院のスポークスマンは、スタッフォード病院の小児診療停止は「病院間の信頼や経営に影響はない」との見解を示しています。その理由として、専門的な小児診療はすでに王立ストークス病院が中心となって担っていることを挙げています。

 

地域住民や議員と病院の経営、ケアを提供する立場の意見に隔たりを残し、診療再開の目途も立たないまま、スタッフォード病院の小児診療は現在も停止されています。

 

人員不足の危険性を考える上で

臨床で働く看護師は、医師や看護スタッフの人員不足やそれがもたらす危険性を直に感じているはずです。日本では、ここまで思い切った判断がなされることはまれかもしれませんが、患者さんの安全を確保するためにも人員不足の危険性を訴えていく必要はあるのではないでしょうか。

 

(ポンドは、記事執筆時2016年10月2日のレートにより1ポンド=131円で計算)

 

(文):A.Brunner

(参考):'Unsafe' Stafford hospital A&E closed to children(BBC)
 

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