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2016年11月07日

吸入薬は「デバイスを処方する」意識で選ぶ|吸入療法の失敗はこう防ぐ《2》

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

吸入薬は「デバイスを処方する」意識で選ぶ

なぜ患者は吸入デバイスの使い方を誤るのか。数多くの誤った使い方を発見してきた東濃中央クリニックの大林氏は、「原因は吸入デバイス側にあるのではなく、患者の加齢現象や生活習慣などに起因する」と指摘する。

(加藤 勇治=日経メディカル)

 

東濃中央クリニックの大林裕幸氏

「患者は何ができないかを確認して処方・指導することが大切」と語る東濃中央クリニックの大林裕幸氏。

 

1990年代後半から喘息やCOPDの治療に吸入薬が登場し、局所投与による副作用の軽減と薬剤が患部に直接送達されて高い効果を発揮することから、治療の主役となった。

 

その後、新しい吸入デバイスが続々と登場した。特に増えたのがドライパウダー製剤用の吸入デバイスで、エアゾール製剤に比べれば操作手順はやや複雑になったものの、「操作ができるだけ簡便になるように工夫されている」(大林氏)という。
 

 

大林氏は、「吸入デバイス側の問題で患者が使い方を誤るわけではない」と強調する。もし吸入デバイスの操作について、患者全員が同じところで間違うならば、そこに吸入デバイスの設計の不備があると言えるだろう。

 

しかし実際には、間違ってしまう箇所は患者ごとに異なる。例えば、加齢により患者の指の力が衰えれば、それをかばうように我流の方法で操作をするようになってしまう。視力が低下した患者であれば、細かい操作は見落としがちだ。つまり、「それぞれで異なる、患者側の要因によって誤った使い方をしてしまうようになる」(大林氏)のだ。

 

所見や会話からデバイス選択

吸入薬を処方する際には、こうした患者ごとの事情を配慮することが欠かせない。では、どのように吸入薬を選択すべきなのか。

 

大林氏によると、まずは喘息やCOPDのガイドライン通りに、患者の重症度に応じて必要な薬剤のカテゴリーを決める。吸入ステロイド単剤でよいのか、長時間作用性β2刺激薬や長時間作用性抗コリン薬などの気管支拡張薬との配合剤が必要なのか、などを検討する。

 

ただし、次のステップが内服薬と異なる。内服薬であれば、次に考えることは、幾つかある有効成分の中から患者の病態に適したものを選ぶことだろう。

 

それに対して吸入療法では、患者に適した吸入デバイスは何かを考えることが先決だと大林氏は強調する。「有効成分の効果の違いを考える前に、必要な薬剤を患者が十分に吸入できるようなデバイスを選ぶ視点が必要だ」。

 

そこで大林氏が実践しているのは、診察時に患者の身体機能とともに、会話から患者の性格、生活習慣などを把握することだ(図1)。

 

図1 喘息・COPD患者の吸入薬を選ぶ際の考え方

喘息・COPD患者の吸入薬を選ぶ際の考え方(取材を基に編集部で作成)

 

視力が低下していれば、吸入指導時にいくら吸入薬の残量を示すカウンターを見るように言っても、患者は実行が難しいだろう。そのような患者には、薬剤がなくなったら操作できなくなる仕組みを持った吸入デバイスを選ぶ。

 

聴力が低下している患者には、『カチッ』という音が操作の正確さを担保する吸入デバイスは適さないだろう。関節リウマチを併存した患者であれば、指関節に変形があっても操作しやすい吸入デバイスが有効だ。

 

「医師は診察時に、患者の所見や生活習慣などを必ず把握しているだろう。それを吸入デバイスの選択に応用すればよい」と大林氏は言う。

 

患者が使いこなせるデバイスをピックアップしたら、その中から必要な成分を含む製剤を選ぶという順で吸入薬を選択する。

 

 

医師も操作と手技を把握すべき

前橋赤十字病院の堀江氏は、「実は医師であっても、吸入薬を渡された際、うまく吸入できない場合がある」と明かす。

 

前橋赤十字病院の堀江健夫氏

「医師は自ら使いこなせる吸入デバイスをいくつか持っていることが大切」と語る前橋赤十字病院の堀江健夫氏。

 

堀江氏が医療者を対象とした吸入療法の講習会を実施するとき、吸入薬を手に取ってもらい、実際に操作してもらう時間を作っている。そのとき、誤った使い方をしたりうまく吸入できない医師が少なからずいるという。

 

堀江氏らは、吸入指導を容易にし、患者も理解しやすくすることを目的として、全ての吸入デバイスの一連の操作と手技を7ステップで説明できるように統一した。

(1)デバイスの準備をする、(2)息吐き、(3)吸入、(4)息こらえ(息止め)、(5)息吐き、(6)後片付け、(7)うがい──という7ステップだ。

 

つまり、有効な吸入療法を行うためには、先に息をしっかり吐いておく必要があるし、吸入後は薬剤を気道に沈着させるため息こらえをすることが必要だ。しかし、単に「吸入してください」といった指導をするだけでは、患者はただ吸うだけだと捉えてしまうという。「有効な吸入療法には、むしろ吸入以外のステップが大切だということを伝える必要がある」(堀江氏)。

 

また、吸入という行為そのものも人によって解釈が異なる。「強い吸入が必要」と言っても、患者ごとに強さが違い、人によっては吸入が不十分になってしまう。勢いよく吸わなければと頑張って息を吐いたら薬剤を吹き飛ばしてしまったという患者はとても多い。そのため吸入指導の際には、一連の操作と手技を実演してみせた上で、実際に患者にやらせてみることが大切だと堀江氏は言う。

 

その前提として、「医師は自らが使いこなせる、つまりよく理解している吸入デバイスを確保しておく必要がある」と堀江氏。エアゾール製剤とドライパウダー製剤、吸入ステロイド単剤と気管支拡張薬との配合剤、といった組み合わせで、「3つから4つの吸入デバイスを完全に使いこなせるようにしておくとよい」とアドバイスする。

 

大林氏は「吸入療法は、患者のデバイス操作の良しあしが症状コントロールの成否を決める。医師は『デバイスを処方する』という意識を持つことが重要だ」と語る。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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