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2016年10月05日

もう一度、信頼関係を構築する 捜索訓練開始!|災害救助犬への道 

災害救助犬&セラピードッグのおさんぽ日記【5】

髙木美佑希(Takaki Miyuki)
日本レスキュー協会・災害救助犬トレーナー

 

いかに「できる!」と思わせるか? 訓練のポイントは「成功体験」
犬の気持ちは「よく観察すること」で分かるようになる
段階的な訓練で「楽しみ」と「自信」を持たせる

 

 

いかに「できる!」と思わせるか? 訓練のポイントは「成功体験」

捜索訓練は、災害救助犬の訓練の中でも本来の目的を果たすための大変重要な訓練で、訓練士(ハンドラー)の「サーチ」という号令のもと、犬が隠れているヘルパー(訓練の補助者)の匂いをたどり捜索を行います。
訓練士は、「サーチ」と号令をかけた後、犬がにおいを認識した瞬間を確認したり、集中力が欠けていないかなど犬の様子を見守ります。

 

こういった訓練では、犬に成功体験を積ませることが重要です。
そのために、少しずつ犬の「できること」を増やし、訓練士は犬をほめます。そうすることで、犬は訓練を「楽しいこと」と認識し、さらに自信がつくようになります。

 

災害救助犬、レスキュードッグ、日本レスキュー協会

訓練後、満足げな表情のJ(手前)と秋桜(奥)。「ボク、がんばったよ!」
秋桜はもともと災害救助犬として訓練していましたが、癌が見つかり、現在は引退し、療養中です。

 

逆に、もし叱ってしまうと、犬は訓練に対して「楽しくない」「叱られる」と思い、訓練に大きなストレスを感じ、自主的に捜すことをやめてしまいます。時には、常に訓練士の様子を伺いながら捜索するようになってしまうこともあります。
災害現場はどこに要救助者がいるか分かりません。そのような現場では、自主的に捜索できない災害救助犬が出動しても全く通用しないのです。

 

こういったことを防ぐためにも、ハンドラーは計画的に訓練を進める必要があるのですが、この時、私は期待と焦りからJのことをきちんと理解せずに訓練を進めてしまっていました。
「これぐらいできて当たり前」とJに期待をかけすぎて、「褒めること」を疎かにしてしまっていました。その結果、Jは訓練が楽しくなくなり、当初できていたこともだんだんできなくなってきました。
私は訓練を見直し、Jと向き合い、一から捜索訓練をやり直すことにしました。

 

 

犬の気持ちは「よく観察すること」で分かるようになる

服従訓練・捜索訓練ともに壁にぶつかった私は、犬について調べました。
犬の歴史や体の構造、行動学、トレーニング方法などが書かれた本を読み漁るうち、犬に対する見方も変わり、何より「よく観察すること」の大切さに気付きました。

 

Jは今どんな気持ちなのか? 楽しいのか、つらいのか、何かが気になるのか…。犬は言葉を話すことはできませんが、とてもコミュニケーション能力に長けている動物です。意思や心理的状態を相手に伝えるために、しっぽや耳の位置、体と頭の角度、顔の表情等を組み合わせて表現をします。
私は、訓練の時はもちろん、普段でもJをよく観察するようになりました。

 

日本レスキュー協会 災害救助犬 J

何かが気になる様子(左から、ホープ、てん、J)。「あれ、何だろうね?」「何だろうね?」「何かな?」

 

段階的な訓練で「楽しみ」と「自信」を持たせる

そうしているうち、Jが今どんな状態なのか、Jの気持ちが分かるようになり、それと比例して訓練もうまくいくようになってきました。

 

もう一度、Jに訓練が「楽しいもの」だと思ってもらわなくてはなりません。
まずは「吠える」訓練から始めました。
平地やがれき、暗所、高所、雨の中など、どこでも号令で吠えるようにし、そして吠えたら必ずご褒美を与えました。
アグレッシブなJはすぐにこの訓練はクリアできました。

 

次は「捜索」訓練です。
ヘルパーがJの大好きなおもちゃを持って、走って隠れます(これを“run away”と呼んでいます)。Jは、大好きなおもちゃが欲しいから、「早く行きたい!」という気持ちになります。Jの「行きたい!」という気持ちが最高潮になった時に、リードを外すと、Jは一目散にヘルパーのもとに走っていきます。

 

日本レスキュー協会、 災害救助犬、レスキュードッグ

リードを外すと一目散にヘルパーのもとに駆けていくJ。「見つけた~見つけたよ!」

 

最初、ヘルパーには姿が見える場所に隠れてもらいます。当然、Jには見えてるので、すぐにヘルパーのもとにたどり着きます。たどり着いたら、褒めてご褒美を与えます。これも、Jに「訓練は楽しい」と感じてもらうための方法です。
ちなみに、この訓練ではJは嗅覚を使っていません。嗅覚を使った訓練は次のステップになります。

 

Jは平坦な場所でも足場の悪い場所でもJはヘルパーのところに一目散!「見つけたよ!おもちゃくれる?」

 

嗅覚を使う訓練は、“run away”を応用したものになります。
今度は、ヘルパーには目視ですぐに発見できないところに隠れてもらいます。
Jはその前の訓練と同じく、一目散に走っていきますが、目視で見つけられなかった時に初めて自主的に「嗅覚」を使って、ヘルパーの元に行こうとします。そのため、ヘルパーには、Jが少し嗅覚を使えばすぐに発見できるような場所…たとえば足場の悪い瓦礫の中や、高い場所、狭い場所などに隠れてもらいます。
Jは、このrun awayが大好きで、嗅覚を使った捜索も上手にできるようになりました。

 

日本レスキュー協会、災害救助犬、レスキュードッグ

高いところもへっちゃらのJ。「ボク、高いところも平気だよ。ヘルパーさん、どこに隠れてるのかな~」

 

 

【髙木美佑希 たかき・みゆき】

認定NPO法人日本レスキュー協会所属、災害救助犬トレーナー。
大学生時代、災害救助犬に興味を持った。ネット上だけではなく、実際に働いている人と話したり、「現実」をきちんと知りたいと思ったことがきっかけで2014年4月、日本レスキュー協会へ入職。
災害救助犬訓練士を目指し、現在に至る。

 

日本レスキュー協会 Japan rescue
認定NPO法人日本レスキュー協会

災害救助犬(レスキュードッグ)の育成・派遣を中心に世界規模で活動するNGO団体。国際救助機関として、災害時には国内外問わず、広く活動している。
また、災害救助活動のほか、セラピードッグの育成・派遣や捨て犬・捨て猫の保護など動物福祉・愛護活動も行っている。

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