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2016年09月26日

準強制わいせつ容疑の医師「やっておりません」―勾留理由開示公判で弁護士と被疑者の医師が無実の訴え

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勾留理由開示公判で弁護士と被疑者の医師が無実の訴え

弁護人は「(本件のような実例が)許容されれば医師の萎縮を招く」

準強制わいせつ容疑の医師「やっておりません」

手術後で麻酔が残る女性患者に対し、術後診察に訪れた医師がわいせつ行為をしたとして非常勤外科医が逮捕された事件で、2016年9月5日、東京地方裁判所で医師の勾留理由開示公判が行われた。医師とその弁護人は、院内調査の結果の一部などを示しながら、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があると判断することは重大な誤りである」と無実を訴えた(わいせつ容疑で医師逮捕、病院が抗議声明)。

(増谷彩=日経メディカル)

 

 

勾留理由は病院関係者との通謀、罪証隠滅の恐れ

勾留理由開示公判とは、勾留中の被疑者・被告人について、勾留した理由を、裁判官が公開の法廷で明らかにする手続きのこと。公判冒頭、裁判官は医師の容疑を説明した。それによれば、被疑者であるA医師は右乳腺腫瘍摘出手術を受けた後、麻酔が残って抗拒不能である女性患者に対し、着衣をめくって左乳房をなめるなどの行為を2回にわたって行い、うち2度目については自慰行為に及んだというものだった。

 

勾留理由として、「(A医師が手術を行った柳原病院の)関係者と通謀し、罪証隠滅を図る恐れがある。事件の悪質性に照らせば、勾留が必要」と話した。犯罪があったとする根拠としては、「被害者の供述、捜査書類や鑑定結果」を挙げた。ただし、「鑑定結果」の内容については、証拠の開示に当たるため「開示する必要はない」と説明した。

 

この後、A医師は「疑われる事実について、私はやっておりません」とだけ発言した。続いて3人の弁護人が意見を述べた。その中で、手術後の状況などが説明された。

 

1度目の訪室時は医師と看護師2人が同席

手術は被疑者のA医師が右乳腺手術を執刀し、上司に当たるB医師が前立ちを担当した。麻酔の開始時刻は13時35分、終了は14時42分。手術開始は14時、終了は14時32分だった。麻酔薬は、笑気ガスを13時35分に開始し14時25分に終了(2L/分継続、総量60L)、セボフルラン吸入麻酔液15mLを13時35分に開始し14時30分に終了(1L/分→2L→0.6L)、プロポフォール静注1%20mL(200mg)を13時35分に使用、ペンタゾシン5mgを14時に使用、ジクロフェナクNa坐薬50mgを13時39分に使用した。

 

手術終了時刻の14時42分から45分の間、A医師とB医師が術後の患者をベッドに移乗させ、付き添って入院病棟に戻った。患者は14時45分に病室に戻ったとカルテに記載されている。A医師は、その後すぐに手術室に戻り、15時前まで手術記録を書いていた。同時刻、B医師も手術室に戻り、A医師の側で患者の母親に手術の説明などをしていた。第1回目の犯行時刻とされるのは、14時45分から50分の間。そのため弁護人は、「(その時刻、A医師は)病室にほとんどおらず、手術室にいた。A医師がわずかの間、病室にいたときには、B医師や看護師2人が同席していた」と話した。

 

この病室には、14時45分から15分おきに看護師が定時の巡回をしている。その他、患者にボタンを握らせた状態であるナースコールが5分に1回ほど鳴っていたといい、「看護師が頻繁に訪室する環境だった」と説明した。14時45分の時点で、当該患者は閉眼したままだった。ただし、病室で患者が「ふざけんなよ」「ぶっ殺してやるからな」と小さな声で言っているのを看護師は聞いていたと弁護人は言い、「この時、患者には攻撃的な妄想、幻覚が出現していた」と主張した。

 

2度目の犯行時刻は他の患者を訪問

次にA医師が患者の容体確認のため訪室したのは15時頃。このときは、定時のバイタル測定をしている看護師がいた。A医師は、患者の右側からベッドに近づき、着衣をめくり、右胸のガーゼに血がにじんでいないことを確認した。この確認は数秒で、同室の看護師もいる状況だった。この後、A医師は別室の他の患者を訪室した。

 

2度目の犯行時刻は、15時7分から12分の間とされている。しかし、弁護人は「A医師は、別室の他の患者を訪室しており、A医師はこの病室にいなかった」と強調。なお、15時10分にナースコールで看護師が訪室しているが、このときA医師はいなかったという。

 

その後15時14分から15分に掛けて、A医師は当該患者のもとを訪れた。このときは、患者の母親がいた。A医師が「ちょっと診ますから」と母親に声を掛けると、母親はカーテンの外に出て、すぐ側に立って待っていた。A医師は右胸の触診を行い、20秒以内で終了した。患者の母親や、同室の向かい側のベッドにいた薬剤師は異変を感じなかったという。A医師が退室する際、看護師が定時巡回で訪室した。この後、A医師は訪室していない。

 

弁護人は、これらのことを説明した上で、「わいせつ行為は一切なかったこと、また不可能であったこと」を改めて主張した。その中で、ベッドの高さの問題についても触れている。ベッドは上下可動式のもの。手術室からベッドへ移乗したことと、帰室後も頻繁に看護が必要になるため、患者のベッドは手術室から戻ってきたままの高い状態にしてあった。患者のベッドのマットレスまでの高さは、マットレスの座面まで約80cm、ベッド柵は患者左側に2カ所、右頭側に1カ所の合計3カ所設置されていた。床からベッド柵までの高さは約103cmから約110cmあった。ベッドが高い状態のままであり、ベッド柵があったことから、弁護人は「A医師がベッドの脇から患者の左胸にかがみ込み、患者の左胸をしゃぶることは、顔面が左胸に届かず、不可能である」と述べた。また、ベッドが高い状態のままであったことから、A医師の股間はベッドの座面より下にあった。患者はA医師の自慰行為を見たと訴えているが、「患者の視野にA医師の股間が入ることは非常に困難である」とした。

 

「A医師本人の唾液が検出された」は誤報

また弁護人は、「本件について、唾液が検出されたことが『物的証拠』であるかのような報道がある。中には、唾液が本人のものと一致したとの報道さえある。しかし、この報道は誤報と言うほかない。捜査側から、唾液の検出や、その唾液がA医師本人のものであるとの鑑定結果が公式に表明されたことはない」と強調した。

 

ただし、患部の写真撮影時や超音波検査を行った際、B医師とともに胸部を見てマーキング位置を検討した際など、A医師がマスクを着けずに患者の胸部に接近する機会は数回あったため、「A医師の唾液の飛沫が左胸に付着した可能性は否定できない」と言う。唾液の鑑定は、アミラーゼ反応の検出の有無によって行う。弁護人は、「アミラーゼ反応は微量でも検出されるため、陽性反応があったとしても『左胸をなめた』ことと、『左胸に唾液の飛沫が付着した』こととの区別はつかない。従って、アミラーゼ反応があった場合でも、わいせつ行為があったことの立証にはならない」と主張。さらに、アミラーゼ反応だけでは個人は特定されないことから、「唾液中からDNAが検出され、そのDNA型がA医師のものと一致しない限り、その唾液がA医師のものと特定することはできない」と話した。

 

病院関係者との通謀や罪証隠滅の恐れについて、弁護人は「現時点で既に4カ月弱が経過していることから、既に病院関係者の認識は一致している。そのため、証拠隠滅の余地もない」と説明した。

 

以上のことから、弁護人は「妄想の中でひとたび患者が被害を申告すれば医師が逮捕されるという実例が生じ、それが許容されるということになれば、男性医師の萎縮を招き、医師減少、診療差し控えなどで女性関係の医療現場は大変な打撃を受ける。まずは医師、そしてその弊害は患者に及ぶことは必定である」と改めて主張し、「本件に犯罪の嫌疑がないこと、患者の訴えは根拠とならないこと、それを裏付ける証拠がないこと、現職の医師を逮捕することがいかに重大で医療破壊をもたらすかを十二分に受け止め、その上で判断をするよう、強く問うものである」とした。

 

なお弁護人によると、8月29日、身柄拘束が不当だとして裁判官に釈放を求める「勾留決定に対する不服申立(準抗告)」を申し立てたが、同日棄却されたという。 

 

 

※続報:患者への準強制わいせつ罪で外科医を起訴―弁護人は「起訴に対する疑問と怒りが尽きない」

 

<掲載元>

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