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2016年08月15日

リハビリが変わる、医療が変わる【1】廃用症候群の予防◆早期リハ+栄養管理がカギ

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

「高齢者は予備能力が低く、数日安静臥床とするだけで廃用症候群を発症し得る」。横浜市立大学リハビリテーション科主任教授の中村健氏はこう強調する。廃用症候群は「生活不活病」とも呼ばれ、安静臥床が続くことで生じる様々な機能低下を指す。入院患者で発症すると治療期間の延長や退院時のADL低下につながる。

(小板橋律子=日経メディカル)

 

リハビリが変わる、医療が変わる

廃用症候群の予防◆早期リハ+栄養管理がカギ

急性期はとかく原因疾患の治療に重点を置きがちだが、疾患が治癒しても廃用症候群を生じれば患者の予後は悪化する。中村氏は、「そもそも廃用症候群は予防すべきもの」とし、そのためにも早期にリハビリを開始することが重要であり、予後の改善にもつながると話す。

 

横浜市立大の中村健氏

「高齢者は数日の安静臥床で廃用症候群を発症し得る。安静は体に悪い」と語る横浜市立大の中村健氏

 

栄養良好な高齢患者は皆無

早期の介入に加え、最近注目を集めているのが、栄養管理の重要性だ。横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科診療講師の若林秀隆氏らが廃用症候群患者の栄養状態を調査した結果、約9割が「低栄養」、残りの患者も「低栄養の恐れあり」で、栄養状態が良好な患者は一人もいなかった。加えて、廃用症候群の患者は、そうでない患者に比べて体格指数(BMI)、ヘモグロビン、アルブミン、総蛋白の値が低く、廃用症候群が重症なほど、アルブミン、総蛋白が低かったという。

 

横浜市立大附属市民総合医療センターの若林秀隆氏

横浜市立大附属市民総合医療センターの若林秀隆氏は、「リハビリの効果を高める上で栄養管理は必須」と言う。

 

さらに、栄養状態と退院時ADLを調べた前向きコホート研究を実施したところ、栄養状態が悪い患者の退院時ADLが低いことも明らかになった。この研究は、65歳以上で廃用症候群を生じた入院患者169人を対象にしたもの。退院時のADL自立度の予測因子の解析では、リハビリ科併診時の血清アルブミン値、簡易栄養状態評価表(MNA-SF)値、悪液質が有意に相関していた。

 

不適切な栄養管理下でリハビリを行った場合、体はエネルギー不足に対応するため、自らの筋肉を分解してエネルギーを得ようとする。「基礎代謝量にも満たないエネルギー量でリハビリをいくら頑張っても、筋肉を付けるどころか逆に筋肉は減ってしまい、患者のADL改善も期待できない」と若林氏は嘆く。低栄養を改善した上でリハビリを実施することが、リハビリの効果を高め、退院時ADLの向上に貢献するという(図2)。

 

図2 リハビリと栄養管理を組み合わせた場合の効果(イメージ図、若林氏による)

図2 リハビリと栄養管理を組み合わせた場合の効果

急性期で落ちた筋肉を回復させるためには、リハビリに加え栄養管理が重要。 

 

ただし、急性期で炎症が強い段階では、生体反応として体内の蛋白は異化に向かい、筋肉量は落ちやすい。エネルギーを多めに投与しても吸収されにくい。そのため若林氏は、急性期のエネルギーは15~30kcal/kg/日を目安とし、炎症が治まった段階(CRP値3mg/dL以下が目安)を見計らって、蛋白同化を促進するため、エネルギー量を必要量(基礎代謝量)の1.5~2倍程度に増やしている。「炎症が治まると蛋白の同化が進みやすくなる。急性期に落ちた筋肉量を取り戻すためにも、炎症が治まった段階でエネルギーと蛋白質は多めに摂取させている」(若林氏)。

 

低栄養+リハビリ=医原性餓死

リハビリ専門医である若林氏が栄養管理に興味を持ったきっかけは、1人の患者の死だった。「脳梗塞で重度の摂食嚥下障害を生じた患者に対して、不適切な栄養管理下で積極的なリハビリを行い、餓死させてしまった」と振り返る。

 

医療が進歩した現在においても、急性期の栄養管理は旧態依然のもので、入院前から栄養状態が悪い高齢患者では大きな問題と若林氏は指摘する。

このような現状を打破しリハビリと栄養管理の両立を広く普及させるため、若林氏は2011年に「日本リハビリテーション栄養研究会」を立ち上げた。同研究会には、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、看護師など多職種が参加し、会員数は現在約5100人。「栄養管理という土台をきちんとした上でリハビリを行うという、当たり前のことが当たり前に行われることを目指している」と力を込める。

 

若林氏は「急性期の栄養管理はいまだにずさんな施設が多い」と指摘するが、廃用症候群への早期介入に取り組む病院は増えつつある。地域に根差した急性期病院として救急患者を多数受け入れる嶋田病院(福岡県小郡市)は、多職種でリハビリや栄養管理による廃用症候群への早期介入を行い成果を挙げている。

 

病院挙げた早期介入で成果

嶋田病院では毎朝、医師、看護師だけでなく薬剤師や管理栄養士、理学療法士などの多職種でカンファレンスを行い、前日の入院患者について検討。理学療法士は、75歳以上の入院患者全員に対して廃用症候群を生じるリスクを検討し、リスクがあると判断した患者へのリハビリ処方を医師に依頼する。リハビリ処方の対象となりやすいのは、脳血管障害や肺炎の患者に加え、胆管炎や胆嚢炎、イレウス、腸炎などの消化器疾患の患者。また、75歳以下でも看護師などが廃用症候群になりやすいと判断した患者は、介入が必要かどうか評価している。

 

医師からリハビリ処方を受けると、リハビリテーション科の理学療法士が中心となり、主治医の了承を得た上で、ベッド上で座位を保つ訓練から開始し、離床訓練、立位訓練、歩行訓練などを進める。このような廃用症候群への早期介入を2010年から開始したところ、リハビリ開始時期が有意に早まり、平均在院日数の短縮にもつながった。(図3)。

 

図3 廃用症候群に対する早期介入の効果(楠氏による)

図3 廃用症候群に対する早期介入の効果

嶋田病院において廃用症候群への早期介入を開始した後の2010年8月1日から9月31日に退院した患者97人を介入群とし、早期介入開始前の前年同時期の入院患者(介入前群、83人)と比較。その結果、入院からリハビリ開始までの日数、平均在院日数が有意に短縮した。

 

また、在宅復帰率も介入後は高い傾向を示した。同病院リハビリテーション科科長で理学療法士の楠正和氏は、「早期介入のため、理学療法士や作業療法士を10人増やし、急性期におけるリハビリを365日提供できる体制を整えた」と話す。

 

嶋田病院の楠正和氏

嶋田病院の楠正和氏は「我々の病院は職種間のつながりが強い。それが患者への早期介入を支えている」と語る。

 

さらに嶋田病院は、言語聴覚士による嚥下機能評価や、管理栄養士による栄養評価も早期から実施する。病棟に配属された管理栄養士が患者ごとに必要なエネルギーや栄養素が取れているかを評価。「医師に対して点滴や食事内容の改善を提案している」と楠氏。患者が廃用症候群を発症すると入院期間は長くなりがちだが、嶋田病院の平均在院日数は11.9日。早期からのリハビリに加え、栄養管理も含めた多職種による総合的な介入が、この数字を支えているようだ。

 

 

【リハビリが変わる、医療が変わる】

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<掲載元>

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