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2016年08月08日

リハビリが変わる、医療が変わる《prologue》|「病状が落ち着いてから」はもう古い!

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

リハビリテーションは、「病状が落ち着いてから機能訓練室で行うもの」と考えられがち。だが、病院を挙げて急性期治療と同時に始めれば、廃用を防止でき、慢性疾患の生命予後も改善できることが分かってきた。疾患を問わず、どの診療科の医師にも「リハビリの視点」が求められている。

(末田 聡美=日経メディカル)

 

リハビリが変わる、医療が変わる《prologue》

「病状が落ち着いてから」はもう古い!

誤嚥性肺炎で急性期病院に搬送された高齢者。高熱でぐったりしており、呼吸機能も低下し、脱水も著明。そのため担当医は、入院とした上で絶飲食を指示。数日間、安静臥床の状態で輸液し抗菌薬を投与したところ、肺炎の症状は軽快した。だが、入院前は歩けた高齢者は起き上がれなくなった。呼吸機能も改善せず、栄養状態は悪化し食事も飲み込めなくなったため、経管栄養に移行。自宅に帰れず回復期の病院に転院となった──。

 

長崎リハビリテーション病院(長崎市銀屋町)院長の栗原正紀氏は、こうしたケースをよく見聞きするという。「本来は、肺炎治療の開始と同時に排痰・呼吸訓練、栄養管理を行い、可能な限り早期から離床させるべきだ。急性期治療の戦略に、生活や地域社会への復帰を目指すリハビリの視点を入れてほしい」と訴える。

 

急性期は「生活の基盤づくり」

寝たきり老人への対策が本格化した1990年代から、リハビリの重要性は年々高まってきた。特に、2000年に手厚いリハビリを集中的に行う回復期リハビリテーション病棟が制度化されてからは、算定病床が順調に増加。リハビリ専門職の養成施設も急増した。病院で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の数は、2000年に約3万人だったのが2014年には約12万人と4倍近くになっている(厚生労働省「医療施設調査」)。

 

だが医療現場では、「リハビリは、病状が安定してから病院の機能訓練室で行うもの」というイメージがいまだに根強い。

 

リハビリは本来、患者の機能を回復させ、自分らしく社会生活を送れるように支援するもの。特に日常生活動作(ADL)が低下しやすい高齢者では、治療のどのステージでもリハビリは必要だ。「急性期のリハビリは『生活再建の基盤を作る』、回復期は『生活の再建を目指す』、生活期では『社会参加へつなげる』というイメージを持って関わってほしい」と栗原氏は話す。

 

このような考えの下、ここ数年広がってきたのが、急性期医療の現場での早期からのリハビリだ。治療時の安静は、筋萎縮に伴う筋力低下、関節拘縮といった局所的変化だけでなく、全身性の変化として心肺機能や消化器機能、口腔機能、精神活動の低下といった、いわゆる廃用症候群を招く。

 

早期リハへの取り組みが進んでいる脳卒中治療の領域では、「不動・廃用症候群を予防し、早期のADL向上と社会復帰を図るために、できるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)」(「脳卒中治療ガイドライン2015」)とされている。

 

横浜市立大学リハビリテーション科主任教授の中村健氏は、「ICUや救急の現場でも、治療開始直後からリハビリを開始することで、機能改善までの期間が短縮する上、最終的に獲得できる能力が高くなるといったエビデンスが蓄積しつつある。原疾患の治療効果の向上も期待されている」と話す。結果、在院日数の短縮にもつながるという。

 

実際、中村氏が昨年まで在籍していた和歌山県立医科大学病院では、ICU入室直後からICU担当医とリハビリ専門医の連携の下、できる限り早期からの離床を促している。呼吸リハビリや四肢の関節可動域訓練だけではなく、厳重なリスク管理に基づきながら、ギャッチアップ座位、端座位、介助での立位、足踏みといったように離床を進めている(写真1)。

 

写真1 全身熱傷受傷後の患者に対するICUでのリハビリの様子(提供:中村氏)

写真1 全身熱傷受傷後の患者に対するICUでのリハビリの様子

全身熱傷受傷後11日目のリハビリの様子。重力負荷が重要との考えから、呼吸や循環動態が落ち着いていれば、人工呼吸器装着中でも立位を取らせる。介助しているのは理学療法士、作業療法士、看護師。

 

入院患者の大半がサルコペニア

また、急性期医療の現場で最近問題視されているのが、低栄養の放置だ(詳細は『《1》廃用症候群の予防◆早期リハ+栄養管理がカギ』記事にて)。

東京湾岸リハビリテーション病院(千葉県習志野市)院長の近藤国嗣氏が、脳卒中の患者1280人の入院時の四肢筋量指数を調べたところ、男性の約8割、女性の約6割でサルコペニア基準に当てはまる指数低下を認めた。男性では入院時の四肢筋量指数が退院時のADLに影響を与える可能性も示された。近藤氏は「筋肉量低下には低栄養の影響もあるのではないか」と話す。

 

急性期医療の現場で早期からのリハビリを推し進める観点から、2016年診療報酬改定では、リハビリテーション料の各種加算の要件や点数が見直された(図1)。廃用症候群へのリハビリや摂食機能療法の普及も目指し、算定対象は拡大した。

 

図1 リハビリテーションに関する2016年診療報酬改定の概要

図1 リハビリテーションに関する2016年診療報酬改定の概要

 

一方、回復期医療の現場では、機能訓練室でのリハビリだけでなく、入院生活もリハビリの一環と捉えて全職種で関わる病院が増えてきた(詳細は『《2》回復期リハ◆入院生活全てをリハビリに』記事にて)。「入院中にできるだけ多くの訓練量をこなすことで、より高いADL改善が期待できる」(近藤氏)からだ。

 

今回の改定では、回復期リハビリ病棟でのリハビリの質を底上げするため、機能改善などの成果(アウトカム)に基づく評価も導入された(図1)。リハビリによるADL改善度と在棟期間を基に「実績指数」を算出。指数が一定の水準を下回る場合には、疾患別リハビリテーション料の一部が入院料に包括されてしまう。ADL改善度の評価には、FIM(機能的自立度評価法)の運動項目得点を用いる。

 

次の記事からは、急性期から回復期までの医療の在り方を変えつつあるリハビリの現場を見ていこう。

 

 

【リハビリが変わる、医療が変わる】

《prologue》「病状が落ち着いてから」はもう古い!

《1》廃用症候群の予防◆早期リハ+栄養管理がカギ

《2》回復期リハ◆入院生活全てをリハビリに

《3》腎臓リハ◆腎臓病も運動で透析遅らせ予後改善

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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