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2016年05月30日

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標定まる―認知機能やADL、使用薬剤などで目標値を設定

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

NEWS◎日本糖尿病学会と日本老年医学会が合同で作成

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標定まる―認知機能やADL、使用薬剤などで目標値を設定

 

日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は5月20日、京都で開催された第59回日本糖尿病学会年次学術集会(右写真)で、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」(図1)を発表した。

(高志昌宏=シニアエディター)

 

2013年に「熊本宣言」として発表した、いわゆる「6・7・8(%)方式」の血糖コントロール目標をベースにしつつ、より具体的に、認知機能やADL、併存疾患などで評価した患者の健康状態と使用薬剤を加味して、きめ細かく目標値を設定したのが特徴だ。 

 

図1 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」(日本糖尿病学会のウェブサイトより) 

「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」(日本糖尿病学会のウェブサイトより)

 

新たに発表された血糖コントロール目標では、まず「患者の特徴・健康状態」として、認知機能、基本的ADL、手段的ADL、併存疾患などを評価し、カテゴリーI~IIIの3段階に分類する。

基本的ADLは着衣、移動、入浴、排泄など、基本的な日常生活動作の自立度を評価する。手段的ADLは基本的ADLよりも高次の活動性に関する評価尺度で、買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理などの自立度をみる。認知機能の障害によって、基本的ADLよりも早期から低下する。

 

評価の結果、カテゴリーI~II、つまり軽度認知症または手段的ADLの低下までの段階であれば、基本的なコントロール目標は、現行の「6・7・8方式」の「合併症予防のための目標」と同じ7.0%未満となる。一方、中等度以上の認知症や基本的ADLの低下、多くの併存疾患・機能障害が認められる場合は、カテゴリーIIIとなり目標値は8.0%未満となる。

現行の「治療強化が困難な際の目標」(8.0%未満)の1つの具体例を示した形だ。

 

ただし各カテゴリーにおいて、インスリンやスルホニル尿素(SU)薬など、その作用機序から重症低血糖が危惧される薬剤を使用している場合は、目標HbA1c値を0.5~1.0%緩和した。高齢者糖尿病ではもともと重症低血糖を来しやすく、繰り返す重症低血糖は認知機能の障害や生命予後の悪化につながる。そこで、重症低血糖を起こしやすい薬剤が投与されている場合は、その回避を重視した目標値とした。なお、カテゴリーIでは年齢により緩和幅が異なり、より余命が長いと考えられる75歳未満では7.5%未満、75歳以上では8.0%未満となる。

 

薬物治療による副作用がなく治療目標を達成しているようなケースでは、目標値よりさらに下を目指すことも許容される。しかし、重症低血糖が危惧される薬剤を使用している場合は、患者が気付かない無自覚性低血糖のリスクも鑑みて、目標値に下限が設定された。

 

 

このコントロール目標を使うには、患者の認知機能やADLの評価法を習得する必要がある。日本老年医学会は今回の発表に合わせて、広く使われているスクリーニング検査法の解説を同学会のウェブサイトに新たに掲出した。さらに、東京都健康長寿医療センター研究所が作った「DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)」をより簡便にした検査法も、近く発表する予定だ。

 

日本糖尿病学会理事長の門脇孝氏(東京大学大学院教授)は「ここ数年に発表された国内外の臨床研究から、高齢者糖尿病では厳格な血糖管理が認知機能や生命予後の悪化につながることが明確になってきた。高齢者に対する一律的な7.0%未満という目標には、大きな懸念が生じている。この認識から、本コントロール目標が策定された。高齢者糖尿病の治療の質の向上のために、日本老年医学会、日本医師会など関係団体と協力して早急な普及を図りたい」と話す。

 

日本老年医学会理事長の楽木宏実氏(大阪大学大学院教授)は「今回の糖尿病と同様に高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病についても、関係学会と共同して高齢者を対象とした診療ガイドラインを現在作成している。高齢者の治療では生命予後も考慮して、患者の状態によって治療目標が変わり得るという考え方を社会にも啓発していきたい」と述べている。

 

 

日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」

日本老年医学会「高齢者診療におけるお役立ちツール」 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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