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2016年04月18日

国内有数の循環器病院が植物工場を作ったワケ

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

循環器専門病院として国内有数の治療実績を持つ榊原記念病院(東京都府中市)。その正面玄関を入った外来受付ロビーの奥には24時間こうこうと明かりを灯した木枠で囲われたガラス張りの1坪ほどの小屋がある(写真)。そこに植えられているのはレタス。つまり外来に小型の野菜工場が設置されているというわけだ。

(山崎 大作=日経バイオテク)

 

外来ロビーに設置された野菜工場(提供:長山氏)

 

無機質になりがちな病院の中で、リハビリテーションを目的にその前を行き来する高齢者を中心に患者に好評だ。植物工場を眺めている患者の心拍変動や脳血流の変化を測定したところ、有意にリラックス感や快適感を得られたという。

もちろん栽培された野菜の味もいい。レタスやセリ、セロリ、カラシナなどを栽培。レタスは35日ほどで収穫できる。「葉は柔らかく、しゃぶしゃぶは野菜だけで十分なほど」とプロジェクトを発案した循環器内科部長の長山雅俊氏は表情を緩める。

 

では、なぜ急性期病院に野菜工場があるのか。長山氏はその理由を、「生野菜が極端に少ない病院食の状況を脱却したかった」と説明する。

病院食は衛生管理が難しかったり、安定的な供給が難しいことから生野菜が極端に少ない。榊原記念病院でも1食にサラダ菜が2枚しかないような状況だという。だが植物工場ならば一定の衛生管理の下、無農薬での栽培が可能になり、病院食としても提供可能になる。

 

長山氏が病院食の問題点を改善したいと考えていた2010年ごろ、屋内に閉鎖環境を作って野菜工場を建設することがブームになりつつあった。移動中の雑誌で野菜工場を目にした長山氏は病院の理事会の承認を取り付け、植物工場の第一人者で千葉大学名誉教授の古在豊樹氏の力を借りながら2012年4月に500万円を掛けて植物工場を設置した。

 

当初は植物工場を手掛けるメーカーが野菜の栽培も行っていたが、今は種まきから全て職員が行うまでに。昨年秋には、院長から院内のレストランで植物工場で作った野菜を提供する許可も降りた。レストランのオペレーションの問題から実際の提供はまだ始まっていないが、提供のめどはついた。

 

先天的な心臓異常を持つ小児の将来の働き場所にも

もっとも、院内では植物工場に対して、「急性期病院の本業を外れて何を行っている」との批判の声もあるという。現在の院内の工場の規模ではレストランで出すのがやっとで、病院食を賄えるほどの生産量はない。電気代などのコストも決して安くはない。特殊な工事が必要になることから、大規模なプラントを作ることに対してゼネコンからも難色を示されているのが実情だ。

 

それでも長山氏は「自分でNPOを立ち上げてでも大規模な野菜工場を作りたい」と言い切る。その思いの先にあるのは、病院食だけではない。

 

外来ロビーに設置された野菜工場2(提供:長山氏)

 

先進的な心臓病治療を手掛けてきた榊原記念病院は、心臓リハビリテーションも1982年からいち早く取り入れてきた。それらの患者は日常生活は問題なく送れても、負荷のある仕事はさせたくない。野菜工場ならば、というわけだ。

さらに問題が深刻なのが小児患者だ。年間1500例の心臓手術を行う榊原記念病院で、小児は約400例。先天的な心臓異常を持つ子どもはダウン症を基礎疾患に持つケースも少なくない。子どもたちが成長して成人になったときの職場も必要になる。

 

越えなければならないハードルは高いことは承知の上で、それでも長山氏の取り組みを見守りたい、と思う。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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