芸能人の相次ぐがん公表で注目度高まる―がん対策に新しい動きが続々

2016/01/23

日本の原因疾患別死亡者数順位で、2014年まで34年連続1位だった疾患、がん。

昨年は、女優の川島なお美さんが胆管がんで急逝、元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんは乳がんであることを公表、手術を行いました。

日本人の国民病とも言われるがんへの対策が次々発表されています。

芸能人の相次ぐがん公表で注目度高まる―がん対策に新しい動きが続々

患者情報を一元化して予防や治療法に役立てる「全国がん登録」

これまで、国内のがん患者の数や生存率、治療の効果などは調査しきれていませんでした。

そこで国立がん研究センターは1月8日から、全国のがん患者の情報を一元的に管理し、がん予防や治療法の向上に役立てる「全国がん登録」の業務を始めました。

「全国がん登録」は今月施行された「がん登録推進法」に基づき、全国すべての病院に対し、がんと診断された人に関する「生年月日」、「がんの種類」「進行度」など26項目の情報を届け出るよう義務付けたものです。

これまで推計するしかなかった患者データがより正確に把握できるようになると期待されています。データの公表は、2018年になる見込みだということです。

がん治療連携拠点病院の治療件数・医師数を一覧表示

また、厚生労働省は新年度、国立がん研究センターのホームページで、全国のがん治療の拠点病院の治療件数や医師数を一覧表示するシステムを導入します。利用者ががんの種類や地域を選び、治療の実績や診療体制を比較できるようにして、病院選びの参考にできる内容になっています。

システムは、厚労省が指定する全国約400のがん診療連携拠点病院が対象になっており、ホームページで胃がんや大腸がんなどがんの種類や、進行度、都道府県を入力すると、条件に合った複数の病院の手術件数や専門医資格を持つ医師数、痛みを和らげる緩和ケアチームの数などがまとめて表示されます。

治療法の進化：重粒子線治療が身近になるかも？

治療方法も進化しています。

千葉市の重粒子線放射線医学総合研究所（放医研）と東芝が、放射線治療の一種である最先端治療、重粒子（炭素イオン）線治療において、超電導磁石を使うことで従来よりも小型化した回転型の照射装置を開発しました。

重粒子線がん治療は、重粒子を病巣に高速かつピンポイントで照射することで、がん腫瘍を死滅させます。正常な周辺組織に当たりにくく、痛みも少なく、切開しなくてよいため体力がない高齢者でも治療でき、治療期間も短くなります。しかし、治療装置が大がかりであるため建設・設置が難しいという難点があり、現在は国内5施設のみで行われています。

新しく開発された小型の照射装置は、360度の角度からがん腫瘍に重粒子線を照射し、治療ができるため、治療台を傾ける必要がなく、脊髄や神経を避けて多方向から照射ができることから、患者の負担軽減につながると期待されています。新年度内に実用化する予定です。