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2016年01月04日

医師不在の離島で患者急変!その時、看護師は|「日本救急看護学会学術集会」より

【日経メディカルAナーシング Pick up】

 

医師が常駐しない離島で、診療所の看護師が島民の急変に安心して対応できるようにするための仕組みを、鹿児島大学病院看護部と三島村が協働で構築した。プロジェクトで中心的役割を果たした一人、同病院の診療看護師(NP)の福元幸志氏が、10月16、17日に佐賀市で開催された第17回日本救急看護学会学術集会のパネルディスカッション「シームレスな救急看護と在宅看護の連携」の中で、その概要について発表した。

(森下 紀代美=医学ライター )

 

鹿児島大病院の福元幸志氏

「島の看護師らが少しでも安心して対応できるよう、チェックリストを作った」と語る鹿児島大病院の福元幸志氏。

 

鹿児島県は離島が多く、離島巡回診療をはじめ、さまざまな場面で看護師が活躍している。福元氏は、離島へき地の看護職への直接技術支援などの地域貢献を目的とした鹿児島大学病院看護部のキャリアパス「地域看護コース」を修了した看護師らと共に、鹿児島県の委託事業「地域における訪問看護職等人材育成支援事業」に参加し、同県三島村で活動を行った。「地域看護コース」は、鹿児島県の抱える医療上の課題解決と共に、医療が病院完結型から地域・自宅完結型医療へと変化してきていることを踏まえ、医療機能の分化・連携の推進、地域ケア体制の整備に看護師が主体的に取り組み、地域への貢献を果たすことを目的としている。 

 

三島村の離島の一つ、黒島の人口は183人(2015年10月1日現在、図)。診療所に常駐する医療者は看護師1人で、医師の往診は月2日のみ。

 

黒島の位置(三島村ホームページより) 

黒島の位置

 

島民への日々の対応の大半は、看護師が担っている。緊急時には、島民から連絡を受けた看護師が、鹿児島赤十字病院(鹿児島市)の医師に報告しつつ、島民で構成される消防団に診療所までの患者搬送を要請し、さらに連絡を受けた医師が各医療機関にドクターヘリを要請し、患者を本島の医療機関に緊急搬送する体制を整えている。医療機関への搬送にはヘリや船で2~4時間かかるため、質の高い心肺蘇生やスムーズな医療機関への連携が求められる。一方で、急変時の対応は看護師個人の臨床実践能力に委ねられる部分も大きいことから、看護師自身、不安を抱えていた。

 

そこで、三島村の看護師らのニーズに応えるため、福元らは、緊急時に適切な対応ができるよう、黒島で蘇生チームを作り、実践的なシミュレーションを計画、実施した。

 

まず、島の現状について消防団や医療関係者、行政担当者で話し合う機会を持った。そして消防団員には、一次救命処置(BLS)および搬送の研修を行い、看護師とヘルパーには、心肺蘇生の質を長時間維持できるよう、BLSのリーダーとして、BLS手技の再確認と心肺蘇生のポイントを伝えた。さらに看護師には、ヘリ搬送の理由で多い急性冠症候群と脳卒中について、病態生理の確認を行い、アクションカードとチェックリストを用意した。

 

表1 緊急患者発生時のアクションカード(提供:福元氏)

緊急患者発生時のアクションカード


アクションカードには、緊急往診時の必要物品のリスト、連絡先、診療所に到着後の準備内容を明記した(表1)。

また、チェックリストには、急性冠症候群と脳卒中の観察すべきポイントを記載した(表2)。これらを行った上で、急変した患者の発見からヘリ要請までの総括的なシミュレーションを実施した。

 

表2 急性冠症候群疑い例のチェックリスト(提供:福元氏)

急性冠症候群疑い例のチェックリスト

経静脈的血栓溶解療法チェックリスト

 

「救命救急や急変時の処置に関し、『何かもれがあるのではないか』という不安や、『対応する機会が少ないために自信がない』という声があり、少しでも安心して対応できるよう、チェックリストを作った」(福元氏)。半年後、実際に心筋梗塞の事例が発生したが、「消防団の活躍もあり、スムーズに対応できたそうなので、総括的なシミュレーションが役に立ったのではないか」と福元氏は語る。 

 

島の看護師にも研修機会を

一方で、新たな課題も明らかになった。医師不在の状況下で対応することの多い離島の看護師には、島民の日々の健康管理を行う中で、状態悪化の危険性を事前に予測し、緊急事態に陥る前に異変を可能な限り早期発見する高度な看護実践能力が求められる。だが、診療所に一人で勤務しており、そうした知識を得るために外部の研修などに参加するのが難しい。

研修機会の確保には、代替看護師の派遣が必要となる。現在、へき地医療拠点病院の支援で年1回1週間の研修は実施されているが、緊急処置を行う場合は、島民を巻き込んだ体制づくりも求められる。

 

これらの課題に対し、福元氏は「NPにできることがある」と話した。

NPは、日本NP教育大学院協議会が認めるNP教育過程を修了し、同協議会が実施するNP資格認定試験に合格した者で、患者の症状・病態について的確な臨床推論ができる能力や、薬物の選択と調整を含めた適切な処置ができる能力などを持つ。福元氏は2013年に大分県立看護科学大学大学院のNPコースを修了した。「NPは、診療所の代替看護師として地域に行くことができ、特定行為研修制度を活用することも可能だ。地域の人材育成支援にも貢献できる」と福元氏は語る。

 

現在、福元氏はNPとして、鹿児島大学病院のICU研修や感染制御チーム(ICT)・栄養サポートチーム(NST)の活動、エコー研修などに参加し、NPとして実践能力の向上を図っている。加えて、地域における人材育成支援に取り組んでおり、「島民参加の離島チームと超急性期病院とが連携を深めながら救える命を守っていきたい。今後もシミュレーション教育の充実やシステム化を進めながら、地域に提供していけたらと思う」と話した。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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