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2015年10月10日

元緩和ケア看護師が自ら安楽死を選んだ理由とは

イギリスに住む元看護師のジル・ファラオさん(75歳)は7月21日、スイスの安楽死を行うクリニックで息を引き取りました。彼女は特別重篤な病気を患ってはいませんでしたが、自ら死を選びました。その理由とは一体何だったのでしょうか。

 

 

終末期の患者さんを看てきた看護師の最後のメッセージ

生前のファラオさんは看護師として働くかたわら、高齢者のケアに関する2冊の本を出版、自身のブログでも執筆活動を行っていました。彼女はブログの投稿に「最後の言葉」と題し、この決断に至った自分の思いを以下のように残しています。

 

『私が看護師として働いている間、たくさんの患者さんを見てきました。多くの患者さんが人生をやり遂げたと考え、生きながらえるためにこれ以上病気と闘いたくはないと思っていました。でも、そのことを家族には言えずにいたのです。それは諦めを意味することだから。病気と闘い続けることは良いことかもしれないけれど、彼らが穏やかな死を迎えることを許されるために闘っていると、私は本能的に感じ取ったのです。』

 

「老いて家族の重荷になりたくない」幸せな死とは

25年間連れ添ったパートナーであるジョン・サウスオールさんと子供を2人残してこの世を去ったファラオさん。彼女は20年以上も前から家族や友人にいつか訪れる死について話していました。サウスオールさんはそのことについて、「彼女の決断は老いて家族の重荷になりたくないという希望に基づくものでした」と説明しました。

 

ファラオさんは元々極めて活動的で健康でした。しかし、70歳になったとき重度の帯状疱疹が彼女の生活を一変させます。

趣味のガーデニングや料理ができなくなり、耳鳴りは大きな障害となりました。歩くこともままならず、好きなこともできない。ファラオさんはこの過程で安楽死への決断を徐々に深めていったのでしょう。

 

『私は将来、今以上の助けを必要とするかもしれない。私は人々に今の私の姿を覚えていてほしいのです。これ以上症状が進行して、みんなが私と認識できなくなってしまうのが怖い。私の家族や友人も含め、私の決断を支持してくれることを祈っています。もちろん、世間の人はこの件に関してさまざまな反応をすることでしょう。でも私は私に関わってくれたすべての人が、私が幸せだった、と言ってくれると信じています』

とブログにも綴られています。

 

安楽死は権利か否か?

ファラオさんの予想した通り、彼女の決断については賛否両論の声が上がり紙面をにぎわせました。

 

安楽死に反対する立場をとる団体「ケア・ノット・キリング(Care Not Killing)」の代表は「これは深刻な出来事です。イギリスの高齢者を介護する社会の姿勢と価値感に疑問を投げかけるものだと思います」と誤った死を選択する可能性について危惧を表明。

 

一方、高齢者の合理な自殺を支持する団体「ソサイエティー・フォー・オールド・エイジ・ラショナル・スーサイド(Soars)」のマイケル・アーウィン博士の意見は「終末期をケアしてきた看護師として、多くの苦しむ患者さんを目の当たりにしてきた経験を考えると、彼女が死を選んだのは合理的といえるかもしれません」とファラオさんを支持する内容でした。

 

スイスでは安楽死を補助することが合法とされており、世界中から何百人もの人々が人生を終えに当地にやってくるといいます。スイス政府はこの数字を少なくしていきたいと考えているようですが、減少させることはなかなか困難だそうです。

 

看護師としてさまざまな患者さんのケースを見るなかで、自分のことや人生について考える機会も多いと思います。仮に自分がファラオさんのような状況に直面したとき、どのように考えるでしょうか。

 

(文)Ryo, S.

(参考)

Retired nurse commits suicide to avoid growing old

尊厳死を選択するということは―ある女性の死から考える

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