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2015年10月03日

軽症者の救急車利用問題に風穴?看護師と救命救急士の連携がカギ

米カリフォルニア州では、パラメディック(上級救急救命士)とともに看護師が救急車に同乗して現場でケアを行うシステムの構築のために試験運用が始まりました。日本でも問題になっている軽症者の救急車利用問題の解決に向けた取り組みです。

 

4割が緊急性の低い救急搬送要請

「ディズニーランドの街」として知られるカリフォルニア州・アナハイムの消防署が受ける通報は年間3万1000件にものぼります。

そのうち85%が救急搬送の要請。さらにそのなかの35~38%を占めるのが、動物による咬傷、頭痛、腹痛など緊急性や重症度の低いものだそうです。こうした要請にすべて応じていると、ERは24時間患者さんであふれることになってしまいます。

 

 

地元の民間救急搬送サービス会社ケア・アンビュランス・サービスの運営ディレクター、ビル・ウェスティンさんは「救急搬送要請が多すぎて、署から救急車が8~12時間出払った状態になり、その間新しい通報に対応できないこともあります。救急車は、すでに患者さんであふれかえった病院に更に患者さんを搬送しているのです。」

と問題の深刻さを伝えます。

 

救急時に看護師を同行させる試験プロジェクトがスタート

アナハイムは、地元の民間救急搬送サービス会社、医療サービス会社、それに消防署と提携して看護師を起用した救急ケアの仕組みを作り上げました。試験的なプログラムは期間を1年とし、およそ50万ドル(日本円で約5900万円)の資金が投じられました。

 

アナハイムの1年間のプログラムを担当するのは、アナハイム・ファイア・アンド・レスキューズ・コミュニティ・ケア・リスポンス・ユニット(Anaheim Fire & Rescue - Community Care Response Unit CCRU)。看護師、救命士、そして消防署隊員などで構成されます。

 

CCRUは最初の3ヵ月間、アナハイム消防署と共同で通常の救急通報を受けて現地へ向かい、患者さんの症状を評価し、治療やケアの方針を見極める計画を実行しました。

その結果、プログラムを導入した最初の30日間で、通報で救急車を要請した患者さんのうち40%がERへ搬送する必要はないと判断されました。CCRUは将来、単独の部署として通報を受ける可能性が大きいようです。

 

 

実はこのプログラムは、数年前にアリゾナ州のメサで導入されたテストプロジェクトがモデルとなっています。

メサでは、パラメディック(上級救急救命士)とナースプラクティショナー(NP)がチームとして救急搬送要請に対応。NPもパラメディックと一緒に救急車に乗って現場に駆けつけ、その場で必要な緊急処置を行います。

 

プログラムは当初、ERでの待ち時間の短縮やコスト削減を図る狙いで開始されましたが、患者さんにより良いケアを提供する結果となって表れたそうです。

 

メサのプログラムの管理に携わったメサ消防署副署長のスティーブ・ワードさんは「非常に良い調査結果を得ることができています。患者さんへのケアと顧客サービスが向上しました」と全体的な成果を指摘します。

ただ、このプログラムの目的が「救急要請を適切にマネージメントし、救急車をより効率的に運用すること」であることは決して変わりません。

 

医師のいない現場で看護師が救急処置を行う取り組み

一方、アナハイムのプログラムでは、救急救命士歴20年のスコット・フォックスさんと看護師歴15年のビクトリア・モリソンさんがプログラムの展開にあたっています。

 

2人は通報があると救急車に同乗し、現場に向かいます。現場に着くとまず、救急救命士のフォックスさんが患者さんの状態を把握し、緊急性や重症度を判断します。その上で、緊急性は高いけれども必ずしもERを受診するほど重症度が高くないとわかった場合、看護師のモリソンさんがその場で処置を実施。この際、電話で医師に指示を仰ぎます。

 

「時には救急車に乗ったものの、自宅に帰されることに驚く人もいます」とフォックスさんは言います。

迅速な判断とケアを実施するには、救急救命士と看護師の協力はもちろんのこと、2人の豊富な経験と確かな知識や技術の裏づけが必要不可欠です。

 

救急ケアも在宅で行えるのが理想?

このプログラムは、ERの混雑の解消や緊急搬送サービスの効率化に貢献する一方で、患者さんが落ち着いてケアを受けられる環境を提供することにつながっています。

看護師として15年の経験を持つモリソンさんによれば、ERを受診する人は、みんな怯えるものだといいます。だからこそ「看護や薬学など、どんな種類のヘルスケアも最終的に行き着くところは在宅でのケアなはず」と強調します。

 

健康問題は患者さんの日常生活の場で起こりますが、急性期領域の問題は従来、病院でケアすることが当然と考えられてきました。しかし、患者さんの必要とするときに必要なケアを患者さんの生活の場で提供することができることこそ、「患者さんに寄り添った看護」であり、それは本当に素晴らしいことであるとモリソンさんは続けます。

 

日本では、「在宅でのケア」というと急性期ケア領域ではない訪問看護師や保健師、助産師の活躍をイメージされる人が多いと思います。地域や医療領域を超えた連携のあり方で、将来は日本でも急性期ケア領域で熟練した経験を持つ看護師が在宅で活躍する日が来るかもしれません。

 

日本もアナハイムやメサを問題解決のヒントに!

日本の総務消防庁のデータ(平成22年)によると、国内で救急搬送された患者さんの約50%が、入院加療を必要としない軽傷とみなされるそうです。

緊急度や重症度が低い人や、モラルを欠いた人による救急車出動の要請増加に加え、未だに法的な整備やシステムの見直しがされていないのが現状です。しかし、日本でも海外のように救急車の有料化についての議論は始まっています

 

アナハイムやメサの例がこのような問題を解決に導くヒントになる可能性がありそうです。新たな分野での看護師の活躍が、日本の救急医療の抱える問題の改善や、さらなる医療サービスの質の向上の一助となる選択肢となることができるのではないでしょうか。

 

※円は1ドル=118円で計算

 

(文)A.Brunner

(参考)

Cities put nurse practitioners alongside paramedics(USATODAY)

平成22年度 救急業務高度化推進検討会 報告書 第8章 救急搬送の将来推計|総務消防庁(PDF)

Anaheim Fire & Rescue  - Community Care Response Unit (PDF)

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