薬が多すぎて飲み残す・副作用で救急搬送…高齢者の「多剤併用」米国ナースはどう対応?

高齢者に必要以上の薬が処方される、いわゆるポリファーマシー(多剤併用)の問題がクローズアップされています。薬が多すぎて飲みきれず、飲み残した薬が膨大な額に上っているのです。

 

それだけではありません。高齢者は持病が多く複数の医療機関にかかることがあるため、薬の処方が重なったり、飲み合わせが悪くなったりすることがあります。また、高齢者は全身の機能が低下しており、副作用が出やすくなっています。このため、薬の副作用で救急搬送や入院にいたる高齢者は後を絶ちません。

 

薬が多すぎて飲み残す・副作用で救急搬送…高齢者の「多剤併用」米国ナースはどう対応?

 

薬の数と服用回数をできるだけ少なく

米国でも、調査によると、65歳以上のほぼ半数が5種類以上、約1割が10種類以上の薬を服用していました。また、外来の高齢患者の35%が薬の副作用に見舞われ、このうち29%は入院または治療が必要でした。

 

こうした高齢者の多剤併用とその弊害を防ぐために、看護師はどう対応すべきでしょうか。

米国ジョンズ・ホプキンス大学看護学部のキャサリン・ウッドラフ講師(Kathleen Woodruff MS, CRNP)は、原則として、薬の数と服用回数をできるだけ少なくすることを勧めています。

 

多剤併用を減らすための戦略としては、

 

  • ・服薬情報の記録
  • ・適切な服薬指導
  • ・適切な服薬管理

 

を挙げています。

以下、具体的に医療者が意識すべき項目を見ていきましょう。

 

服薬情報

以下の情報を記録しておきます。

 

  • ・高齢者が使用しているサプリメントや市販薬を含むすべての薬とその服用量、服用回数、服用理由
  • ・高齢者に関わるすべての医療者の名前と連絡先
  • ・薬局の名前と連絡先

 

服薬指導

以下の内容を対面で指導します。

 

  • ・それぞれの薬の名前、形状、使う目的、効果
  • ・起こりうる副作用、薬物相互作用
  • ・すぐに受診すべき副作用の症状
  • ・心配や疑問があれば医療者に連絡すること
  • ・薬を指示通りに服用することの大切さ
  • ・利用する薬局を1カ所に絞ることの大切さ

 

薬局を1カ所だけにすれば、薬の量を適正量に抑えられ、副作用や相互作用のリスクを減らせます。

 

服薬管理

  • ・期限切れの薬は適切に廃棄する
  • ・薬の服用スケジュールを、例えば、磨きの後、朝食の後などと決めておき、薬の飲み忘れを防ぐ
  • ピルボックスなどを利用して薬を1日分ずつ整理する

 

さらに米国マサチューセッツ大学看護保健科学部のジャニス・ファウスト助教授(Janice Foust, PhD, RN)らは、高齢者の服薬管理能力のアセスメントと医療チームの連携の重要さも指摘しています。

 

高齢者の服薬管理能力のアセスメント

薬をシートからうまく取り出せるか、吸入器をうまく扱えるか、貼付剤をうまく貼れるかなどの服薬スキル、薬の名前、薬を使う目的、薬の用量、薬の服用方法、副作用などの薬の知識をチェックします。

 

医療チームの連携

高齢者に同じ種類の薬が重ねて処方されていたり、飲み合わせが悪くなっていたりしても、薬の情報が医療者間で共有されていないと適切に対処できません。

薬の数と服用回数を減らし、適切な服薬指導をするには医療チームの連携、情報の共有が不可欠です。また、患者や家族の医療チームへの参加も必要です。

 

【Sourses】

Preventing polypharmacy in older adults(American Nurse Today)

Improving posthospital medication management for chronically ill older adults(American Nurse Today)

飲めずに「残薬」、山積み 高齢者宅、年475億円分か(朝日新聞デジタル)

 


【筆者】中岡ひさ子

看護師。徳島大学卒業後、13年間看護師として勤務。その後海外論文の翻訳に携わり、医学・看護論文の翻訳者、ライターとして活動中。

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