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2015年06月23日

投薬を忘れても「薬は飲ませた」…スタッフと信頼関係を築くヒント

国境なき医師団ナースリレーコラム

ハイチ人ナースの育て方

Vol.2 投薬を忘れたスタッフが「薬を飲ませた」と言い張ったらどうする?

 

【筆者】看護師 京寛美智子

2010年ハイチ大地震後、現地の看護師を指導するミッションに従事。ハイチ人でも日本人でも後輩指導は大変!「ナースを育てる」コツをお伝えするコラムです。


 

患者さんへの確実な投薬は、看護師の大切な役目の一つです。

日本の病棟看護師も、最初に指導することのひとつだと思います。

 

国境なき医師団(MSF)のハイチのコレラ治療センターにおいても、輸液、抗生剤の投与は看護師の仕事でした。
その中で、とくに苦労したのが経口の抗生剤の投薬管理です。

 

現地の投薬管理は、日本でいう「管理」とはほど遠い状態でした。

 

MSFは首都ポルト―プランスに20ヵ所以上の治療センターを設置した

 

投薬…した?してない?どちらを信じる?

最初に驚いたのは、現地の看護師が投薬を忘れてしまうことがあまりに多かったことです。

 

カルテには投薬済みの印がしてあり、看護師は「投薬した」と言うにも関わらず、患者さんに聞くと、「薬は飲んでいない」という答えが返ってくることが何度もありました。

それを看護師に確認すると、「薬は確かに飲ませた」と言い張り、中には、患者さんや家族に対して、「飲ませたでしょ!」と、押しつけるような態度を取る看護師もいました。

 

日本ではありえないことですが、ハイチ人看護師にとっては、投薬を忘れたことを隠さないと仕事を失うという危機感があったのだと思います。また、医療従事者が患者さんより上の立場にあるといったハイチの医療者と患者さんの上下関係があり、看護師の言うことは常に正しいといった、現地の慣習もあったかと思います。

 

看護師を信じて、投薬済みとするか、患者さんの言うことを信じて、薬を再度与えるか、という選択に迫られることが多くありました。

 

ハイチでの「看護の質」は、日本人が考えるそれとはあまりに違う状況だったのです。

 

MSFのテント病院内の様子

MSFのテント病院内の様子

 

震災後の混乱のなか、ハイチの看護師たちの多くは自らも被災し、またコレラの治療に携わるのは初めてでした。私たち海外から来たスタッフは短期間の活動なので奮闘しますが、現地スタッフにとっては、先が見えない中で復興に向かっていかなければなりません。そんな状況では、高い意欲や熱意を保つのは難しかったのかもしれません。

 

カルテの記載をあてにできない。どうする?

コレラ治療センターでは、日本の病院のように、薬剤部から患者さん毎に薬が組まれて届けられる仕組みはなく、各テントに備蓄してある薬を処方に応じて投与します。そのため、投薬管理はカルテの記載に頼るしかありませんでした。

 

でも、看護師がそんな状況では、カルテの記載を信じることはできません。また、看護師と患者さんの投薬をめぐる言い争いは、避けなければいけません。

 

それなら、目で見える状態にするしかない。

 

投薬状況を見える化したら起こったこと

まず、処方された抗生剤を必要な数だけ小分けして、患者さんのベッドサイドに吊るすことにしました。そして、投薬記録をカルテから拡大コピーし、処方された薬と一緒に吊り下げました。これなら、一目で、実際の投薬が分かります。

 

これによって、状況はかなり変化しました。

看護師は投薬の業務を忘れにくくなり、上司や同僚が投薬の有無を確認できるという状況も受け入れられたのです。

 

確実な投薬が行えるということは、本人たちにとってみれば、「きちんと仕事ができる」=「仕事を失うリスクが減る」ということです。

少しの工夫で、こんなにも大きく変わるのかと、正直驚きました。

 

チームのスタッフとともに

チームのスタッフとともに

 

「信用できないから」ではなく、信頼関係を保持して伝えるには

日本でも同じだと思いますが、人を育てる立場にあるとき、育てられる側の気持ちを大切にすることが重要です。

 

「私はあなたたちを信用できないので、対策を考えた」

ではなく、

「この方法は、あなたたちの看護業務を行いやすくしてくれるから行った」

と伝えることで、自尊心を傷つけず、双方の信頼関係に悪影響を及ぼすことが避けられました。

 

 


【筆者】京寛美智子(きょうかん・みちこ)

徳島県出身、看護師。

1998年、東海大学医療技術短期大学卒業。東海大学医学部附属病院での病棟勤務を経て、2005年より国境なき医師団(MSF)の活動に参加。シエラレオネ、スーダン、ナイジェリア、南スーダン、エチオピア、イエメンなど9度の派遣活動に参加。2011年には東日本大震災の緊急対応にも従事。2013年から2014年にはリバプール大学に留学し、国際公衆衛生学修士号を取得した。1976年4月7日生まれ。


 

【協力】国境なき医師団 日本

国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)は、 中立・独立・公平な立場で医療・人道援助活動を行う民間・非営利の国際団体です。MSFの活動は、緊急性の高い医療ニーズに応えることを目的としています。紛争や自然災害の被害者や、貧困などさまざまな理由で保健医療サービスを受けられない人びとなど、その対象は多岐にわたります。

MSFでは、活動地へ派遣するスタッフの募集も通年で行っています。

(看護系の募集職種)正看護師手術室看護師助産師

看護roo!ポイントでも、国境なき医師団に寄付することができます。

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コメント一覧(2)

2匿名2015年06月24日 19時30分

素晴らしい。看護に通ずるものがありますね!

1匿名2015年06月23日 06時26分

なるほど!

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