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2015年05月23日

認知症の症状緩和に薬はいらない―アメリカの介護施設で実施された抗精神病薬削減プログラム

薬に頼らず、認知症の症状を緩和することに成功した、抗精神病薬削減プログラム「Awakenings(目覚め)」をご紹介します。アメリカ・ミネソタ州の施設で大きな成果を上げた、そのプログラムの取り組みとは、どんなものでしょうか?

 

認知症の症状緩和に薬はいらない-アメリカの介護施設で実施された抗精神病薬削減プログラム

 

介護施設で多用される抗精神病薬

アメリカでも統合失調症や双極性障害(躁うつ病)などへの使用が認められている「抗精神病薬」。認知症の治療においては、焦燥性興奮(不穏症状)を改善する目的で使われることがあります。

 

ところが2005年、アメリカ食品医薬品局は「認知症患者に非定型抗精神病薬を使用した場合、死亡の危険性が高まる」と発表し、さらに2008年には、定型抗精神病薬についても同様の危険性があるとして、医療従事者に注意を促しました。

 

にもかかわらず、今でもアメリカでは約30万ヶ所の介護施設で、抗精神病薬が処方されています。ミネソタ州の「パスストーン老人ホーム」でも、数年前まではひんぱんに使われていました。

 

「私たちは抗精神病薬で患者さんを楽にできるはずだと思っていたし、もちろん、よい治療法だと考えたからこそ、そのような薬を使っていたのです」

 

パスストーンを含め、10数ヶ所の介護施設を運営する「エクメン」の品質保証責任者、シェリー・マテスさんは、抗精神病薬の投与についてこう話します。

 

抗精神病薬を使わない認知症ケアへ

「おそらく抗精神病薬はその昔、治療に急を要するケースで使われ始め、その後も引き続きホーム入居者に対して使われることになったのでしょう」。

 

そう語るのは、パスストーンの精神科医トレーシー・トマックさん。彼女は2009年、同僚とともに、抗精神病薬の使用を減らせるか試してみようと決心し、ミネソタ州・ダルースにある小さな介護施設で、この計画を実行に移しました。

 

すると約半年で、なんと入居者全員の抗精神病薬を中止することができたのです。

エクメンは翌年、その方針を運営する老人ホームすべてに適用し、はじめの1年で97%の削減に成功しました。

 

いきいきとし始めた入居者たち

今ではパスストーンの入居者のうち、抗精神病薬を使用しているのは、5~7%となりました。

エクメンのすべての介護施設における数字がこれほど低いわけではありませんが、同組織が運営するほとんどの老人ホームが国の平均値を下回っています。

 

しかし、劇的な変化を見せたのは、数字だけではありません。

抗精神病薬を中止したあとの入居者たちについて、エクメンのマテスさんはこう語ります。

 

「入居者たちは、人と交流し始めました。それまで全くしゃべらなかった人が、しゃべるようになって。彼らは生き返り、そして目覚めたのです」

 

スタッフはこのプロジェクトを「Awakenings(目覚め)」と呼ぶことに決めました。

 

“目覚めた”入居者の1人、マックは、施設内をぶらぶらと歩きながら、自信を持ってこう言います。

「周りのものがいったい『何』なのか、『どこ』にあるのか、(今は)ちゃんとわかってるよ!」

 

認知症による問題行動の根本理由を考えて対応

「Awakenings」プログラムでは、抗精神病薬の使用を減らす代わりに、どのような方法を用いて入居者の問題行動(焦燥性興奮など)を改善しているのでしょうか。

 

責任者のマリア・レイズさんによると、多くの問題行動は、その理由がわかれば、抑えるか完全に取り除くことができるとのこと。

そのため、エクメンの介護施設の職員は、入居者の好き嫌いやどんな人生を送ってきたかを理解するよう、指導を受けます。食事係も整備員も、職種にかかわらず、入居者の問題行動を見つけたら、その裏にある根本的理由を考えるよう求められます。また、アロマテラピーやアニマルセラピーなどの療法からもヒントを得て、認知症の症状に対応しています。

 

常に入居者が楽しめる工夫を

「何か入居者が楽しめることを常に用意する」というのも、焦燥性興奮を改善するための工夫のひとつ。

 

パスストーンでは、入居者が食堂でおやつを作れるようにしたり、社交ダンスのステップを踏みたくなるようなBGMを用意したりといった、さまざまな配慮が見られます。

食堂にある古いたんすの引き出しに、スタッフが宝物を隠すこともあります。隠されているのは、型の古い帽子、大昔のレシピ本など。

 

「認知症の人は、よく探しものをしています。でも、自分が何を探しているのかをわかっているとは限らないんです」

 

記憶障害ケアユニット長のシェリー・コーニッシュさんは、こう説明します。

この場合、なんだか懐かしいものが見つかれば、本人はそれで満足することも。

 

ほかの施設では抗精神病薬が投与されるケースかもしれませんが、パスストーンが用意しているのはちょっとした「宝物」なのです。

 

抗精神病薬は、その危険性について、日本でも問題視されつつあります。

今回のようなお話をヒントに、時間をかけて各々が、よりよいケアについて考えていくことが必要ですね。

 

(文)MYKO

(参考)
This Nursing Home Calms Troubling Behavior Without Risky Drugs

Information for Healthcare Professionals: Conventional Antipsychotics

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コメント一覧(5)

5みちんこ2015年07月08日 22時42分

投薬が必要な認知症患者は実際ごくわずか。不穏の根本原因をアセスメントして根気強くケアすることで、ほとんどが改善していく。看護の原点にもどることが1番の近道。

4もも2015年05月30日 01時57分

素晴らしい! アメリカから医療ビジネスとして高額な薬を買うばかりでなく、こうした成功例こそ、是非日本で積極的に取り上げて広げてほしい。
みんなの将来のためにも。

3匿名2015年05月23日 23時25分

考えさせられる

2匿名2015年05月23日 21時04分

認知症の高齢者って本当に多い 将来自分もそうなるかと思うと不安

1匿名2015年05月23日 19時05分

認知症の人って心が素直って聞いたことがあります

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