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2015年05月12日

言葉も年齢もわからないスタッフとの絆―国境なき医師団ナースコラム【南スーダン】

Vol.4 言葉年齢もわからない仲間、ニャロワルから学んだこと

【筆者】手術室看護師 土井直恵

2014年、民族紛争の続く南スーダンにて手術室看護師として活動。「紛争地の手術室」から見た日常のコラムです。

 

最も信頼する「手術室クリーナー」ニャロワル―国境なき医師団ナースコラム【南スーダン】

10ヶ月もの間、私の1番近くで1番長い間、ずっと一緒に働いてくれた人がいる。手術室担当のクリーナー、ニャロワルだ。

 

ヌエル族の人々の中には男性女性問わず、顔や身体にスカリフィケーション(皮膚を傷つけて模様を描き、痕を残す身体装飾)を施している人が沢山いるが、彼女の顔全体に描かれたそれを初めて見た時は驚いた。

 

現地には誕生日を祝う習慣やカレンダーがないので、年齢もよく分からなかったが、それも特に珍しい話ではない。

皆、「あの戦争があった年の、雨期の間だった」というような覚え方をする。

何度か見かけた彼女の子どもたちの大きさから推測するに、40歳前後というところだろう。

 

 

ニャロワルから学んだこと

ニャロワルは外科ユニットの増設に合わせて雇われた人だったので、私が着いたときにはまだ1ヶ月そこそこの経験しかなかったが、当初から仕事のやり方はとても丁寧で、決められたプロトコルをきちんと守って動いてくれていた。

そしてとても働き者だった。

 

というよりも、動き回って人を喜ばせることをするのが好きな人で、きれいに掃除をしたら手術室のスタッフが働きやすいだろう、こんな風に動いたら助けになるだろう、というような考え方をする人だった。

 

感謝されることがとても嬉しいというニャロワルの気持ちはとても純粋なものだったが、毎日誰よりも早く来て手術場の掃除を始め、洗濯機のない所でドレープから血液を洗い流す、骨の折れる手作業を愚痴一つ言わずに引き受けてくれた、彼女の姿勢には学ぶところが大きかった。

 

 

トレードマークは「木の棒」

ヌエル語の簡単な単語や挨拶、習慣やダンスなどはほとんど全部ニャロワルに教わった。

お昼休みのあとに手術室に戻ってくると、彼女は決まって木の棒をくわえている。しばらくしてそれが歯ブラシの代わりであることが分かったが、時々適当な大きさのものが見つからなかったのか、馬用のように大きなもののことがあった。

 

ニャロワルの木の棒(通常サイズ)―国境なき医師団ナースコラム【南スーダン】

(※この棒は通常サイズ)

 

切断した足も頭の上に載せて運ぶ

手術で切断した足を所定の場所へ持っていくようにバケツに入れてお願いした時には、そこから包みだけをひょいと取り出して頭の上に乗せ、颯爽と歩いて行ってしまった。

赤ちゃんを中に入れたバスケットや大きな荷物など、何でも頭の上に乗せる習慣があるためだ。

 

 

とっておきの贈り物は、ヤギ

私が2週間のホリデーから戻ってきた時には、手術室の前にヤギが繋がれていた。

何かと尋ねると、大事な娘が戻ってきたから、そのお祝いのしるしの贈り物だという。

残念ながら、現地スタッフからは物を受け取ってはいけないという決まりがあったため、丁寧に辞退して連れて帰ってもらったが、気持ちは本当に嬉しかった。

 

 

言葉がなくても信頼し合える

現地の時間の流れ方や風習は先進国のそれとはまったく異なるものであるため、採用する現地スタッフには、始業時間を守ること、決められた業務を遂行すること、勤務時間内は仕事に集中すること等、本当に基本的なルールをいちから伝えなくてはならないことも多かったが、ニャロワルは大変頼りになる、信頼のおけるスタッフの1人であり、私はどんなにか心強かった。

 

ヌエル語しか話さない彼女と私の間には言葉こそなかったが、とても強い絆があって、人と人はこんな風に出会うこともあるのだと思った。

私の名前が発音できず、代わりにつけてくれた名前、「ニャーマトート!」(小さい女の子の意)と叫んでいた声が懐かしい。

 

(終)

 


【筆者】土井直恵(どい・なおえ)

大阪府出身、看護師。
2008年、兵庫県立大学看護学部卒業。大阪府内の総合病院での手術室勤務をへて、2012年より国境なき医師団(MSF)の活動に参加。2012年にパレスチナ・ガザ地区、2013年にイラクへ派遣。2014年には約10ヵ月間、南スーダンへ派遣された。1984年10月15日生まれ。


 

【協力】国境なき医師団 日本

国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)は、 中立・独立・公平な立場で医療・人道援助活動を行う民間・非営利の国際団体です。MSFの活動は、緊急性の高い医療ニーズに応えることを目的としています。紛争や自然災害の被害者や、貧困などさまざまな理由で保健医療サービスを受けられない人びとなど、その対象は多岐にわたります。

MSFでは、活動地へ派遣するスタッフの募集も通年で行っています。

(看護系の募集職種)手術室看護師正看護師助産師

 

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