胎教

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は胎教について解説します。

 

松永佳子
東邦大学看護学部准教授

 

 

胎教とは

胎教とは、妊婦が精神的な安定や修養に努めて、胎児によい影響を与えようとすることである。

 

胎教の考え方

・胎児の環境は母親そのものであるため、母親はストレスを避け、リラックスする。
・母子相互作用は、胎児期からすでに始まっている。
妊娠生活を楽しく、健康的に過ごそうという気持ちが大切である。

 

 

母親のドキドキが胎児に伝わるメカニズム

母親がドキドキするような事態に遭遇すると、視床下部から内分泌系に指令が出て、交感神経が優位になり頻脈瞳孔散大、血圧上昇などの身体症状が出現する。同時に、神経ホルモンの分泌が促進され、これが血液(胎盤)を介して、胎児の身体の化学作用を変化させてしまう。この神経ホルモンは、とくに胎児の視床下部とそれに支配される内分泌系と自律神経系に影響を及ぼすことになる。

 

胎教の効果

・お産が軽くすむ。
・児が健康に発育する。
・夜泣きが少なくなる。
・性格が明るくなり、安定する。
(※しかし、科学的根拠は実証されてはいない)

 

胎教のポイント

・妊婦自身が気持ちよく受け入れられ、続けられるものがよい。
・できるだけ1つは夫や家族も参加できるものを取り入れる。
→結果として、妊娠生活を楽しく過ごすことにつながる。

 

α波と音楽

Column 医師イラスト

α波(8~13Hz)とは脳波の一種である。脳波は精神状態によって変化するが、α波は睡眠時やリラックスした状態で多くみられる。

 

つまり、胎教によいとされる「α波の出る音楽」などは、「リラックスできる音楽」ということである。α波の出る音楽には、一般的にクラシック音楽が多く取り上げられるが、母親にとって心地よく感じられるものであれば、どのような音楽でもよい。

*脳波:脳波とは大脳皮質の微弱な電気活動を記録したものであり、人の脳波は1~3Hz をデルタ(δ)波、4~7Hz をシータ(θ)波、14~30Hz をベータ(β)波、30Hz 以上をガンマ(γ)波に大きく分けられる。

 

 

目次に戻る

胎児の発育と胎教

4~7週

身長:約1cm
体重:約1g
五感の発達
脊髄神経の80%が形成される。
味覚の原型である味蕾(みらい)が完成する。
③触覚刺激に対する反応がみられるようになる。

胎児の発育

 

8~11週

身長:約7cm
体重:約10g
五感の発達
①触覚は手、上肢、眼瞼(がんけん)、足底にみられる。
この時期に始めたい胎教:腹部のタッチングを行い、子宮の大きさや胎児の存在を感じる。

胎児の発育

 

12~15週

身長:約8~18cm
体重:約120g
五感の発達
①味孔が出現する。
②把握反射がみられる。

 

16~19週

身長:約20~25cm
体重:約250~350g
五感の発達
①眼の基本構造が完成する。
この時期に始めたい胎教:景色を眺め、目にしたものについて胎児に語りかける。

胎児の発育

 

20~23週

身長:約30~34cm
体重:約600~800g
五感の発達
①聴覚機能が発達し、母体の血流音が聞こえる。音の区別もできる。
②レム睡眠とノンレム睡眠が出現する。
この時期に始めたい胎教:音楽を聞く。胎教にはクラシック音楽がよいとされるが、苦手であれば母親の好きな音楽を聞く。

 

24~27週

身長:約36~38cm
体重:約1200g
五感の発達
① 開眼し、腹壁を通して明暗環境を感じる。
② 聴覚が発達し、外の音が聞こえる。
この時期に始めたい胎教: 音楽、語りかけ、絵本の読み聞かせ

胎児の発育

 

28~31週

身長:約40~43cm
体重:約1.5~1.8kg
五感の発達
① 聴神経が内耳と大脳でつながることから、音を聞き分けることができるようになる。
この時期に始めたい胎教キックゲーム

 

32~35週

身長:約45~47cm
体重:約2~2.5kg

 

36~39週

身長:約49~50cm
体重:約2.5~3.1kg
胎児の発育


 

キックゲーム

Column 看護師イラスト

キックゲーム(図1)は、胎児とコミュニケーションをとるためのゲームである。父親になる準備にも活用することができる。母親だけでなく、父親にも胎児に声をかけながら行ってもらってもよい。

 

【方法】

ステップ1
① 胎児がおなかを蹴ってきたら、「キック!」と言いながら蹴られた場所をポンッと軽く叩く。
② 叩いた場所を胎児がもう一度蹴ってきたら、「上手にできたね」とほめてあげる。
③ 胎児が叩いた場所を正確に蹴り返せるようになれば、そのうち2~3秒ほどで蹴り返しができるようになる。

 

ステップ2
① ステップ1と反対側のおなかを、「キック!」と言いながらポンッと軽く叩く。
② 叩いた場所を胎児が蹴ってきたら、別の場所を「キック!」と言いながら軽く叩く。

 

ステップ3
① 「2つ!」と言いながら、おなかをポンポンと2回、軽く叩く。
② しばらくすると、胎児は2回蹴り返して反応するようになる。

 

図1 キックゲーム

キックゲーム

 

 

目次に戻る

生活習慣の改善

喫煙、飲酒、激しい運動、不規則な生活などはしない。
・胎児は母親の気持ちの変化を十分に感じているので、ストレスのある場に身を置かないようにする。

 

 

目次に戻る

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護知識トップへ