せん妄を起こしやすいくすりには何がありますか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄を起こしやすいくすりについて解説します。

 

せん妄を起こしやすいくすりには何がありますか?

 

さまざまな種類のくすりでせん妄発症の報告がなされています.その中で
もとくにせん妄の発症頻度が高いくすりは,ベンゾジアゼピン系薬剤,麻
薬性鎮痛薬,抗コリン作用を有する薬剤です

 

〈目次〉

せん妄の原因がくすりの割合

せん妄を発症した入院患者さんのうち12〜39%がくすり単独の作用によるものとされています1)

 

せん妄を引き起こす可能性があるくすりは表1のように多岐にわたります.

 

表1せん妄を引き起こす可能性がある薬剤1, 2)

せん妄を引き起こす可能性がある薬剤1, 2)

 

せん妄が発症したら投与したくすりを確認

麻薬や向精神薬などの中枢神経に作用するくすり以外にも,さまざまなくすりがせん妄を引き起こす可能性をもっています.せん妄が発症した場合,投与したくすりが原因となっていないかをまず疑いましょう.

 

とくにせん妄の発症頻度が高いと報告されているくすりは,ベンゾジアゼピン系薬剤と麻薬性鎮痛薬,抗コリン作用を有する薬剤です1)

 

薬剤性のせん妄が起こる原因は?

せん妄の発症には,におけるアセチルコリンやドパミン,セロトニン,ノルアドレナリン,GABA(γアミノ酪酸)などの神経伝達物質の不均衡が関与しているといわれています(なぜ抗コリン作用薬でせん妄が生じやすいのか参照).これらの神経伝達物質の活動性に影響を及ぼすことで薬剤性のせん妄が起こります.

 

とくに薬剤性のせん妄の原因となりやすいのは,アセチルコリン作動性神経の活動性の低下とドパミン作動性神経の活動性の亢進です.

 

中枢神経に作用するくすりに注意する

中枢神経に作用し,精神状態や認知機能,睡眠覚醒リズムに影響を及ぼすくすりはせん妄をきたす可能性があります.これらのくすりでは使用開始時や増量時においてもせん妄の症状が現れていないか注意深く観察する必要があります.

 

これらのくすりを長期にわたり連用していた場合,急な服用中止や減量によって離脱性のせん妄を引き起こすこともあります.

 

せん妄の治療に使用するくすりにも要注意

せん妄は上述のように脳における神経伝達物質の不均衡によって起こります.せん妄の治療薬はこれらの不均衡を補正するために用いられますが,逆にせん妄を誘発したり増悪させる可能性があるので注意が必要です.

 

脂溶性が高いくすりに注意する

脂溶性が高いくすりは水溶性のくすりに比べて,血液脳関門を通過しやすく脳に移行しやすいとされています.そのため,脂溶性が高い薬剤は,主たる作用が末梢をターゲットとしていても,せん妄を引き起こすことがあります.

 

水に溶けにくく油に溶けやすい性質のこと

 

memo向精神薬とは

向精神薬とは,中枢神経に作用して,精神機能に影響をもたらす薬剤の総称です.
その乱用の危険性と治療上の有用性により,第1種から3種に分類されています.また,向精神薬はその効用から,「抗精神病薬(メジャートランキライザー)」「抗うつ薬」「気分安定薬」「睡眠薬・抗不安薬(マイナートランキライザー)」「抗認知症薬」などに分類されます.

 


[文献]

  • 1)Alagiakrishnan K et al : An approach to drug induced delirium in the elderly. Postgrad Med J 80(945) : 388-393,2004
  • 2)兼子幸一ほか:精神神経系─行動異常.日本臨牀65(Suppl 8):362-366,2007

 


[Profile]
増田 和司 (ますだ かずし)
前千葉大学医学部附属病院薬剤部

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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