せん妄が発症するとき,脳で何が起こっているのですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄発症時の脳の状態について解説します。

 

せん妄が発症するとき,で何が起こっているのですか?

 

大脳辺縁系が過剰に興奮すると,不安や緊張が高まった状態の過活動型せん妄を呈するようになります.
中脳・視床・皮質系の活動が低下すると,意識が軽度に混濁した状態の低活動型のせん妄を呈するようになります.

 

〈目次〉

脳の生理学的変動

せん妄発症時の身体状況で解説したような生理学的変動が,脳における神経伝達物質の機能やバランスを悪化させ,大脳辺縁系の過剰興奮,もしくは,中脳・視床・皮質系の活動低下を引き起こし,前者は過活動型せん妄を,後者は低活動型せん妄を引き起こします.

 

この両者について,さらにくわしくみていきましょう.

 

大脳辺縁系の過剰興奮

大脳辺縁系が過剰に興奮すると,患者さんは不安や緊張が高まった状態となります.

 

そうすると,レム(REM)睡眠のような「夢を見ている」状態の中で,交感神経刺激症状(心拍数の上昇や緊張など)や,周囲の環境や状況に適応できない不適応行動(いわゆる「問題行動」)が目立つようになり,過活動型せん妄を呈するようになります.

 

中脳・視床・皮質系の活動低下

脳血流の低下,鎮静系薬剤の作用,抗コリン薬の作用などにより,中脳・視床・皮質系の活動が低下すると,意識が軽度に混濁します.

 

そのときの脳波を測定すると,「深い眠り」を示唆するような「徐波」が現れます.これは,「極度に眠気のある」ような,認知機能が低下した状態と同じです.

 

そうすると,意識を覚醒し保持することが困難になり,傾眠状態となったり,注意を集中することができなくなったりし,低活動型のせん妄を呈するようになります.

 

せん妄発症時に「意識」の「中枢」で起きていること

人間の「意識」を司る「中枢」は,中脳から視床に投射している「中枢性コリン神経系」,あるいは「上行性脳幹網様体賦活系」とよばれる神経系です.抗コリン薬は,この系を遮断して機能を低下させてしまいますので,大脳は意識覚醒の水準が保てなくなってしまいます.そのため,傾眠や失見当,注意集中困難などが引き起こされ,意識混濁にいたります.

 

高齢者にせん妄が起きやすい理由

高齢者にせん妄が起きやすい理由の1 つは,加齢の影響でアセチルコリン合成酵素が少なくなっており,もともとのアセチルコリンの産生が減っているからです.

 

そのため,高齢者は若年者と比べると,抗コリン薬によってさらに意識障害を起こしやすくなります.

 


[Profile]
綿貫 成明 (わたぬき しげあき)
国立看護大学校

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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