せん妄はどのようなメカニズムで発症するのですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄の発症メカニズムについて解説します。

 

せん妄はどのようなメカニズムで発症するのですか?

 

準備因子,誘発因子,直接因子が複数重なり合い,の過剰興奮や活動低下を引き起こすことでせん妄は発症します.
過活動型と低活動型で,メカニズムが異なります.

 

〈目次〉

せん妄には過活動型と低活動型がある

せん妄の症状の特徴から,大きく分けると過活動型と低活動型の2つのタイプがあります.

 

過活動型は,動作性の活動量が増加する,患者さん自身で活動の制御ができない,落ち着きがない,徘徊するといった症状がみられ,低活動型は,活動量の減少,動作速度の低下,周囲の認識の低下,発語量の減少,発語速度の低下,無関心,覚醒水準の低下などがみられます(せん妄の分類参照).また,過活動型と低活動型が混ざった混合型というのもあります.

 

過活動型と低活動型でメカニズムは異なる

過活動型と低活動型の2つのタイプにより,発症のメカニズムは異なっています(図1).

 

図1せん妄の発生機序(説)

せん妄の発生機序(説)

 

[一瀬邦弘:せん妄へのアプローチ.せん妄(精神医学レビュー26)(一瀬邦弘編),p.13,ライフ・サイエンス,1998 より引用.吹き出しによる「準備因子」「誘発因子」「直接因子」および「意識の変容」は筆者が加筆した]

 

過活動型せん妄は,主に直接因子や誘発因子によって大脳辺縁系が過剰に興奮することにより引き起こされます.一方,低活動型せん妄は,主に直接因子によって中脳・視床・皮質系の活動が低下することによって引き起こされます.

 

過活動型と低活動型の共通の因子

これらの2 つのタイプを引き起こす直接因子・誘発因子には,共通するものも多くあります.

 

たとえば,直接因子では鎮静系薬剤の用量の減量または中止による離脱の影響や中枢神経に作用する抗コリン性薬剤の影響,誘発因子では入院環境や治療状況,騒音・照明などによる睡眠覚醒リズムの障害などです.

 

さまざまな因子が重なることで混合型が生じる

過活動型と低活動型に共通の因子や,そのほかにもさまざまな直接因子・誘発因子が重複する状況によって,過活動型と低活動型の間で症状が変動することもよくあります.すなわち,混合型せん妄となります.

 

準備因子は辺縁系の過剰興奮を促進する

患者さんがせん妄を発症する前からもともともっている,脳の中枢神経機能の「脆弱性」(つまり準備因子)は,意識の変容の基盤にあり,辺縁系の過剰興奮や中枢・視床・皮質系の活動低下などを促進する可能性があります.

 

せん妄の発生機序の理解を深める

内科疾患の急性増悪や術後・クリティカルケア,または高齢者でせん妄が発症しやすくなる原因として,恒常性を保つ力,回復力・予備力が弱まっていることが挙げられます.そのため,心機能や呼吸機能,腎機能や肝機能の低下により,血流量や血圧酸素分圧濃度,薬剤の血中濃度など,生理学的な変動がわずかであったとしても,その影響を脳が受けやすくなります.

 

脳卒中などによる脳血流の低下,低血糖高血糖などの糖代謝異常,甲状腺ホルモンインスリンなどの内分泌障害などによっても,意識の軽度混濁がもたされます1)

 

不安緊張の亢進が強いと,妄想,幻覚,不穏,錯乱などの神経症状や問題行動が顕著にみられる過活動型のせん妄となります.一方,意識の混濁が強いと,覚醒保持や注意集中の障害,見当識の障害などがみられ,認知機能の低下を伴う低活動型のせん妄となります.

 


[文献]

  • 1)一瀬邦弘ほか:高齢者せん妄の特徴と診断.老年精神医学雑誌17(6):595-604,2006

 


[Profile]
綿貫 成明 (わたぬき しげあき)
国立看護大学校

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

SNSシェア

看護知識トップへ