せん妄の準備因子−直接因子モデル

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄の準備因子−直接因子モデルについて解説します。

 

せん妄の準備因子−直接因子モデル

せん妄の発症は,患者さんがもともともつ脆弱性や予備能などの「準備因子」と,有害性や侵襲度の高い刺激といった「直接因子」がどれだけ患者さんに加わるかによって,ある程度決まることがわかりました.その相互関係を図示したのが図1で,せん妄の準備因子−直接因子モデルといいます.

 

図1せん妄の準備因子−直接因子モデル

せん妄の準備因子−直接因子モデル

 

[Inouye SK:Predisposing and precipitating factors for delirium in hospitalized older patients. Demen Geriatr Cogn Disord
10(5) : 393-400,1999 より引用]

 

たとえば,破線の矢印をつなぐ因子が組み合わさったケースでは,健康で「脆弱性」をほとんどもたない高齢者が,侵襲度の高い手術やICU への入室など「有害性」の高い刺激を受けると,せん妄を発症する可能性を示しています.

 

その一方,実線の矢印をつなぐ因子どうしが組み合わさったケースでは,重度の認知症や重症の疾患など,より重度な「脆弱性」をもつ高齢者が,睡眠薬1錠の内服という有害性が比較的低い「刺激」を受けることで,せん妄を発症する可能性を示しています.

 

これらの因子が多いほどせん妄発症率が高くなります(表1)ので,因子のリスクの程度や因子の数の重なり具合から,せん妄発症リスクをアセスメントすることが大切です.

 

表1せん妄リスクの因子数と発症率の関係

せん妄リスクの因子数と発症率の関係

 

[Inouye SK et al : Precipitating factors for delirium in hospitalized elderly persons. Predictive model and interrelationship with
baseline vulnerability. JAMA 275(11) : 852-857,1996 より引用]

 

準備因子は入院前に患者さんがすでにもっていることが多く,せん妄の発症リスクという視点でアセスメントし予測できるため,予防を努力するための根拠となります.直接因子は入院後に患者さんに新たに加わることが多いので,医師・看護師などが協力して,それらの因子をできるだけ取り除いたり,減らしたりする努力が重要です.

 


[Profile]
綿貫 成明 (わたぬき しげあき)
国立看護大学校

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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