せん妄の原因によって症状・経過が異なることがありますか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、原因によるせん妄の症状・経過の違いについて解説します。

 

せん妄の原因によって症状・経過が異なることがありますか?

 

せん妄の多くは可逆的ですが,原因によって不可逆的となるなど予後が異なります.
とくにアルコール離脱せん妄は,発症の時期が特徴的です.

 

〈目次〉

せん妄の症状・経過は基礎疾患や原因となる病態に依存する

せん妄は,基礎疾患やせん妄の原因となる病態に依存して経過します.

 

たとえば,電解質の異常や炎症反応が原因でせん妄を発症している場合,電解質の補正や炎症反応の改善に伴いせん妄も改善します.また,術後せん妄も多くは術後数日以内に改善します.しかし,慢性肝不全による高アンモニア血症,慢性閉塞性肺疾患による低酸素脳症,あるいは悪性腫瘍の終末期など,基礎疾患や病態の改善が見込めない場合,せん妄も長期化したり不可逆的となります.

 

このように,せん妄の原因によって予後予測がある程度可能となり,これに合わせた治療目標の設定が必要です.

 

アルコール離脱せん妄の特徴

アルコール離脱せん妄は,長期大量飲酒をしていた人が入院を契機として断酒した場合,アルコール離脱症状として出現することがあります.最終飲酒から24時間以内を中心に,小離脱徴候とよばれる頻脈や発汗などの自律神経症状,不安,焦燥感などのアルコール離脱症状がみられます.そして,48〜72時間後をピークとして粗大な振戦とともにせん妄が出現します.

 

このように,最終飲酒の時間からアルコール離脱せん妄が出現する時期を予測することができます.

 

アルコール離脱症状を予測するためには

入院時に飲酒の有無を問診しますが,アルコール離脱症状を予測するためには,さらに以下の情報が必要です.

 

すなわち,①最終飲酒時間,②飲酒パターン(機会飲酒,晩酌,連続飲酒など),③飲酒量,④アルコール離脱症状の既往歴です.飲酒量でみると,日本酒3合(ビール1.5Lもしくは焼酎300mLもしくはワイン6杯に相当;女性ではこの2/3量)以上を5年間毎日摂取している場合,断酒により離脱症状が現れる可能性が高まります.

 

また,アルコール離脱の既往もリスクファクターの1つとなります.

 

さらに,酩酊状態での転落や交通外傷,アルコール性膵炎肝炎などアルコールが関連した外傷や疾患が入院の契機となったケースや,朝から飲酒,毎日連続飲酒しているケースでは,アルコール依存症の疑いとともに,入院後離脱症状が現れる可能性が高くなります.

 


[Profile]
宮武 良輔 (みやたけ りょうすけ)
医療法人社団美樹会マリアの丘クリニック

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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