患者家族へのケア・かかわり|鎮痛・鎮静管理時に注意すべき看護ケア

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮痛・鎮静管理における患者家族へのケア・かかわりについて解説します。

 

患者家族へのケア・かかわり

重症患者さんにおけるせん妄は,患者さん本人だけではなく,患者さんの家族にとってもつらい体験となります.一方で,患者さんにとって,家族の存在はとても重要です.

 

そのようなせん妄患者さんの家族へ,どのようなケアやかかわりをもてばよいのでしょうか?

 

1)せん妄患者さんにとっての家族の存在

家族や友人など,慣れ親しんだ人との会話は,せん妄患者さんに安心感をもたらします.

 

せん妄のタイプが低活動型であっても,過活動型であっても,患者さんは精神混乱をきたしていることが多いので,身近な家族や友人の温かい声かけなど,存在自体がとても重要です.

 

施設の方針にもよりますが,できれば面会時間を制限しない方がよいでしょう1).そして,できるだけ頻繁に訪れてもらいましょう.

 

家族の存在は,患者さんの貴重な情報を提供してもらえるなど,医療従事者にとっても重要な役割をもちます.

 

2)家族への説明

家族に対して,せん妄の特徴をよく説明します.たとえば,ICUで人工呼吸管理中の場合,以下のことなどを説明することで,家族の不安を緩和させ,ケアへの参加を促します.

 

・ ICU に入院し,人工呼吸管理を受ける患者の多くは,「せん妄」という一過性の認知障害を引き起こす.
・ この「せん妄」は特別な病気ではなく,人工呼吸管理を受けている患者の多くに生じるものである.
・ しかし,この「せん妄」になると,医療従事者からの説明の理解や記憶があいまいになったり,点滴などの治療に必要な管を誤って抜いてしまったりすることがある.
・ 身体の侵襲が収まれば,精神的に安定することが多い.

 

また,家族には,患者さんに対し,明瞭にゆっくりと話してあげるよう促します.会話の際は自分の名前をしっかりと告げ,患者さんにも名前で呼びかけるようにしてもらいます.

 

3)患者さんの記憶の整理を助ける家族との会話

ICU入室患者さんの多くは,記憶に異常を抱え,ICU退室後,ICUで体験したことの整理を行っている2)と言われています.家族がICU でのできごとを患者さんに話すことは,失った一部の記憶の整理を支援します.

 

家族とICUに在室していたことを1つ1つ話し合う機会を作り,家族による報告を定期的に行ってもらうことは,精神的なストレスから患者さんを解放させる助けになるかもしれません.

 

われわれ医療者は,家族と共に患者さんがICU入室体験を適切に振り返ることができるよう援助していくことが必要です.

 

one pointICUダイアリー

ICUスタッフが患者さんに代わって日記をつけ,回復した後で患者さんに返し,ICU在室中に起こったことを説明する方法もあります.これをICUダイアリーと言います3)

 

CULUMN家族は看護師に代わる観察者になりうる?

ある進行がんの患者さんに対する研究*では,ベッドサイドの看護師や緩和を専門的に行う看護師に比べ,家族の方がせん妄に関する症状を多く想起し,家族が患者さんの行動や抗精神病薬の治療反応性の観察者となりうることを示唆しています.

 

一方で,家族が過剰に患者さんの症状を解釈している可能性や,家族の患者さんに対する不安が患者さんの精神状態を過敏に察知していることなどが影響している可能性もあるとしています.

 

われわれ医療者は,家族以上に,根拠をもって患者さんを定期的に観察し,患者さん・家族に情報提供をすることが重要です.

 

それが,家族との信頼関係にもつながるでしょう.

 

*文献
Bruera E et al:Impact of delirium and recall on the level of distress in patients with advanced cancer and their family caregivers. Cancer 115(9):2004-2012, 2009

 


[引用・参考文献]

 

  • 1)パトリシア・ベナー著,井部俊子監訳:ベナー看護論,新訳版,医学書院,p.56,2010
  • 2)福田友秀ほか:集中治療室入室を経験した患者の記憶と体験の実態と看護支援に関する研究.日クリティカルケア看会誌 9(1):29-38,2013
  • 3)卯野木 健ほか:ICU 退室後の神経精神障害―外傷後ストレス障害と認知機能障害. 日集中医誌 17(2):145-154,2010

 


[Profile]
嶋田 一光 (しまだ いっこう)
日本医科大学付属病院救命救急センター

 

剱持 雄二 (けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU
集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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