心臓血管外科手術後の鎮痛・鎮静管理|術式別の術後の鎮痛・鎮静管理

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、心臓血管外科手術後の鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

心臓血管外科手術後の鎮痛・鎮静管理

1)心臓血管外科手術後の病態

心臓血管外科による開心手術は,胸骨正中切開が一般的です(図1).

 

図1胸骨正中切開手術の切開創

胸骨正中切開手術の切開創

 

①弁膜疾患

動脈弁,僧帽弁,三尖弁の狭窄または閉鎖不全に対し,形成または置換をする手術です.

 

開心手術の場合,人工心肺を使用した手術となり,大きな侵襲を伴います.

 

弁膜疾患は,心筋の肥大による内腔の狭小化を伴い,心機能が低下しています.

 

術前の心機能や手術経過が影響して,術後に呼吸機能が低下している場合は,人工呼吸管理が長期化する場合があります.

 

②冠動脈疾患

冠動脈疾患は,狭窄または閉塞をきたした冠動脈に対して,近くの血管(内胸動脈など)から血流をバイパスする手術です.

 

近年,従来の術式よりも低侵襲である,人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術(OPCAB:off-pump CABG)が広く行われています.

 

③大血管疾患

大血管疾患には,大動脈解離大動脈瘤があります.とくに,上行弓部での大動脈解離は緊急手術(上行弓部置換術,図2)になるケースが多いです.

 

図2上行弓部置換術のシェーマ

上行弓部置換術のシェーマ

 

大血管操作や分離人工心肺の使用により,侵襲が高く,脳血管障害のリスクが高くなります.

 

呼吸状態の悪化により,人工呼吸管理が長期化する場合があります.

 

創部が広範囲に及ぶ場合は,術後鎮痛が重要となります.

 

腹部大動脈瘤に対するYグラフト置換術は開腹操作のため,硬膜外鎮痛法が用いられます.

 

2)鎮痛・鎮静管理の方法

手術直後は,鎮静薬の使用をいったん中止し,麻酔覚醒によって脳血管障害の有無を確認します.

 

鎮痛・鎮静が過剰でも不足でも,循環動態に影響を与えます.

 

疼痛は交感神経の活動を亢進させ,酸素消費量を増加させるため,心臓への負担を高めます.

 

また,とくに不十分な鎮痛で,鎮静薬を過剰投与してしまうと,鎮静効果が得られないばかりか,循環抑制をきたしてしまいます.

 

よって,術式や心機能,患者さんの背景を十分に評価して,薬剤の種類や投与量が検討されます.

 

PADガイドラインでは,鎮痛の重要性とともに静注オピオイドが第一選択とされています.筆者の施設では,フェンタニルを10μg/mL で溶解し,2mL/ 時から開始して調整をします.

 

3)アセスメントの視点

筆者の経験では,心臓血管外科術後は鎮痛管理に対する意識が低い傾向にあると感じます.

 

しかし,疼痛は循環動態や呼吸機能に影響を与えるため,疼痛の訴えがあってから鎮痛の対策を考えるのではなく,アセスメントツールを使用して早期に発見し,鎮痛できることが望ましいと考えます.

 

人工呼吸管理下で鎮静中の患者さんでも,BPSやCPOTを使用して疼痛の有無を客観的にアセスメントします.

 

術式(切開創)をふまえ,日常生活動作の中のどのような場面で疼痛が伴いやすいのかをアセスメントします.

 

薬剤の循環動態への影響については,鎮痛薬や鎮静薬の使用前後で,静脈血酸素飽和度(SvO2)をモニタリングすることにより,酸素消費量の増減をアセスメントできます.

 

4)咳嗽時の疼痛を軽減するコツ

咳嗽時に疼痛を伴う場合,創部保護を行うことで疼痛が緩和します.

 

図3は胸骨正中切開創に対する創部保護の方法です.

 

図3胸骨正中切開時の咳嗽時創部保護

胸骨正中切開時の咳嗽時創部保護

 

創部保護のポイントは,手のひらを両脇に添え,咳嗽のタイミングで両脇を締めることで,胸骨への負担を軽減します.

 


[Profile]
増居 洋介 (ますい ようすけ)
北九州市立医療センター 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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